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<<   作成日時 : 2005/07/12 03:05   >>

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CBR(*1)のMLでの投稿へのレスポンスを書いたので紹介


CBRに関するMLで以下のような投稿があった。

それは、
「リハビリテーション国際協力入門」を読んで、率直に感じたこととして、疑似体験批判(*2)や医療モデル批判について、最初はそのとおりだと思ったが、
==
専門家によるリハビリテーション(医学モデル)に重きを置いた障害への対応によって得られるメリットもあるのではないか、あるいは疑似体験によって見えてくる差別的態度などの社会の障壁もあるのではないか、という疑問を持った
==
他にもいろいろ書いてあって、最後に意見を求めたい
というようなものだった。(ぼくの印象によるまとめ)

とても真摯で率直な感じの若い学生さんからの投稿だった。
ぼくは、とりわけ上に紹介した部分に反応して以下のように書いた。

===
「障害平等研修(DET)と日本における障害理解教育の比較研究」ぜひ、取り組んでください。とても興味深いテーマだと思います。

久野さんや松波さんの先行研究などの検討も含めて、ぜひ、テーマを仕上げて、ここ(CBR-ML)で報告していただけたらと思います。

その上で、**さんの問題提起ですが、ぼくの理解からすると少し、誤解があるようなので、そのことに少し触れておきたいと思います。(ぼくの理解が間違っていたらごめんなさい)

> 専門家によるリハビリテーション(医学モデル)に重きを
> 置いた障害への対応によって得られるメリットもある

まず、社会モデルはリハビリテーションを悪としているわけではないということです。

リハビリテーションが実際に生活しやすさにつながるものであるのであれば、それを選択する障害者が多数なのはいうまでもありません。社会モデルが提起しているのは、それを選択するのが間違いだということではないと思うのです。

社会モデルが提起している問題は、歴史的に障害者問題が医療や福祉の問題としてしか、語られてこなかったこと、
障害(インペアメント)は克服すべきものとしてしか語られてこなかったということ、
そして、いまでも、障害者問題といえば、メインストリームは医療モデルであるということ
です。

つまり、平たく、そしてちょっと極端にいえば、「社会は健常者にあわせて作られているのだから、障害者はリハビリの努力でその世界に参入しなければならない」というようなことが、本当につい最近まで大手を振っていたし、いまでも本音の部分ではそのように考える人が少なくないということです。

その前提の上で、医療モデルではなく、社会モデルをという障害学が誕生して、まだ四半世紀も経ていません。

英国と米国で生まれた障害学ですが、その誕生の前史に、厳然と存在するのが障害者の当事者運動だったとぼくは考えています。自分たちが望むのは医療や福祉ではないという運動が日本を含めて、70年代に同時に産声をあげました。
そういう運動を背景にして障害学が生まれたことをぼくは忘れてはいけないと考えますし、それは障害学の誇るべき歴史というふうにも言えるのではないかと思います。その障害学の始まりを基礎づけたのは、ぼくは社会モデルだったと考えています。

この歴史的、かつ現在的な前提を無視して、「主張が偏っている」というのは、ちょっと、ぼくの認識とは異なります。

また、障害学を学ぼうとするものの、立ち位置の問題に言及する倉本智明さんの主張にぼくは深く共鳴します。
彼は以下のように主張します。
===
誰でもが障害学の担い手になりうるという意味ではありません。自分がいまどこに立っているかについて自覚できない者、しようとしない者には障害学はできない。してもらっては困ります。
(中略)健常者の方が障害学にどんどん参入されることを、私は歓迎したいと思います。(略)自分の立ち位置に無自覚な者、自分を棚上げにしてなにかを語ろうとする者に障害学はできない、これが私の立場です。
===
障害学カフェNo.7から部分引用
http://www.akashi.co.jp/menue/rensai/cafe_07.htm

これは障害学やCBRを学ぼうとするひとだけではなく、南北問題や先住民の問題を学ぼうとする人にも同様にあてはまることだと考えています。

===

その上で、疑似体験についてなのですが、

2年前、ぼくは、たぶん日本で最高水準の疑似体験のプログラムに参加しました。東京大学先端技術研究所での「まちづくり大学」とかいうシリーズの講座のひとつで、先端研に所属する福島智さんの研究室との共催だったか、全面協力で行われたものでした。

2日間のプログラムで、
そこでは、事前に疑似体験についての論文が配られ、それへの説明があり、それぞれの小さなグループには障害者運動のリーダー的な存在である当事者や研究者、また先端研の研究者も参加し、事後のグループセッションはプロのファシリテーターとアシスタントがつくというようなプログラムでした。

参加者もまちづくりを仕事にしている人が多かったように思います。

そういう環境の中では、さすがに障害者はかわいそうとかいう声はなかったのですが、それでも町のバリアの問題について、何が問題なのかということに、どれだけ肉薄できたかというと、やはり疑問が残るものだと、ぼくは思いました。

ましてや、各地で行われている疑似体験、ほんとうにいいかげんなものが多いと、ぼくは思います。ぼく自身、かなりいいかげんな疑似体験を主催したこともあります。(冷や汗)

というようなことを含めて、疑似体験すべてが無意味だとぼくは考えないのですが、あまりにも安直なものが、その多数だということはいえるように思います。

疑似体験については障害学のMLでいくつか意見がかわされたこともありますので、MLに加入して膨大な過去ログのなかから探すという方法もあるかもしれません。


とりあえず、思いついたことをつらつらと書かせてもらいました。
比較研究の参考にしていただけたら、幸いです。

===ぼくの返信はここまで===


(*1) CBR
地域に根ざした(コミュニティ・ベースド)リハビリテーション。これが何かということに興味がある人は自分で調べてください。この業界で西ネグロス州はCBRで有名。この間、障害者をめぐる国際協力といえば、CBRといっても過言ではないほど。従来の施設中心のリハビリテーションというアプローチ批判として考えられなければならないことをたくさん主張していると思うが(例えば、シューマッハの適正技術などの考え方にも近い)、この間の持ち上げられ方には違和感がぬぐえない。
つまり、障害者といえばリハビリテーションという、まさに医療モデルが受け入れられやすいという土壌の上に成立しているようにしか思えないからだ。


(*2) 疑似体験批判

アイマスクを使ったり、車いすに乗ることを体験す疑似体験のプログラムは各地でかなり行われている。それは「障害者はかわいそうで、大変そう」という感想に終わったり、その先に行ったとしても、かわいそうだから、大変そうだからバリアフリーにしてあげようというレベルから出ることは難しいし、そのような批判はいくつか出されている。その体験がいまの社会は「、障害者に対する構造的暴力だ」というようなところに結び付けられることはほとんどない。


今日のブログここまで




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障害者疑似体験と障害平等研修
いまでも無批判に行われることの多い障害者疑似体験。この疑似体験の問題について久野さんは「障害平等研修」を紹介するホームページの中で以下のように指摘している。 == なぜ疑似体験がいけないのか  最大の理由は、疑似体験では個人の身体機能不全のみが強調され、障害の本質である差別や排他的な社会の構造といった最も理解が必要である点が軽視され、差別や権利の問題としての障害理解を遠ざけてしまう可能性がある点である。もう一つは、多くの障害者が自立した生活を送っているにもかかわらず、擬似体験では「で... ...続きを見る
今日、考えたこと
2005/12/29 06:02
再び「車いす体験」に関わることになって
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今日、考えたこと
2013/05/20 06:37

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