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zoom RSS イリッチと ドゥーデンの「ゲヌス」=「ジェンダー」について

<<   作成日時 : 2007/09/17 05:24   >>

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古い読書メモシリーズは続く。


以下、古いメモを少し補足(捕捉した部分で「です・ます
」と「だ・である」が混在している。)

===
「ジェンダー」とは何か
イバン・イリイチ=構成・序


「ゲヌス」と新しい身体史からみた
民俗学の対象
バーバラ・ドゥーデン
==
学芸総合誌・季刊
環 (KAN) 【歴史・環境・文明】 Vol.12
特集:「近代化の中のジェンダー」
2003年1月刊 収録
==

(知ってる人には言うまでもないのですが、このドゥーデンはイリッチのパートナーです。ぼくはつい最近まで知りませんでした。)


この妙録に、こんなコピーがついています。

「ジェンダー研究のただ中で誤解されてきた「ジェンダー」概念を問い質す!」

このイリッチの序文とドゥーデンの論文からなる
==
「ジェンダー」とは何か
==
という記事の編集部によるリード文に以下のように書いてある。
==
彼は、およそ20年前、近代化、産業化におけるモノ・セックス化の問題を問う『ジェンダー』を刊行した。「ジェンダー」が社会科学の研究対象になるのは、イリイチのこの著書をきっかけとするが、その後、盛んになった「ジェンダー研究」において「ジェンダー」という言葉は、イリイチが意図した意味とは全く正反対の意味で理解されることになる。
==


イリッチがこの論文の序文を藤原書店の社長宛ての私信として書いてる。(これが彼の絶筆だったらしい。)

ここで、イリッチは日本語では「ジェンダー」という言葉が彼の意図で受け入れられるようになったと書いているが、これは誤解だろう。
 そして、世界中で「ジェンダー」がイリッチの意図のようには広がらなかったことを、この序文でこんな風に書いている。
==
あなたが私の本を出版した直後、「ジェンダー」という語は社会科学への登場を果たしました。しかし、我々が考えたのとは正反対の意味です。いわゆる「ジェンダー・スタディーズ」が雪崩のように大学にあふれかえったのですが、それらのどれひとつとして、私の議論の中心をなしていた認識上・存在上の釣り合いという問題を扱っていない。それらのすべてが、ジェンダーを(私が呼ぶとことの)セックスの社会的側面に還元しています。このことは、『環』へのあなたの寄稿依頼を果たす最上の道はなにかと考えていたバーバラ・ドゥーデンと私との話し合いの出発点となったことでした。
==




=以下、ドゥーデン論文からの引用=

私たちが「ゲヌス」ということで理解しているのは、イバン・イリイチが一九八二年に出版された同名の本(邦訳『ジェンダー』、独訳『ゲヌス』)で言っている実存的な特殊性のことです。当時では、この「ゲヌス」ということばは英語の辞書でもドイツ語の辞書でも文法的な術語としてのみ理解されていました。
それにたいして、私たちはこの「ゲヌス」を、女性と男性との間の乱対称的かつ存在構成的な相補性を言い表すためのことばとして用いたのです。

==

いまではもう知らない人のいない「ジェンダー」という
言葉ですが、イリッチたちが、こんな風に肯定的に「ジェンダー」という言葉を使い始めた頃は、文法的な術後でしかなかったという事実はちょっと驚きです。

言葉が、たった20年でこんな風に世界中に広がるんですね。

もっと前に、いま使われている社会的性差というような使い方で「ジェンダー」という言葉を使い始めた人がいるという話も聞いたことがありますが。。


さて、このイリッチのジェンダー概念、
上野千鶴子さんが「女は世界を救えるか」で批判し、
江原由美子さんは「女性解放という思想」で批判し、
また萩原弘子さんが「解放の迷路」で批判しています。

ドゥーデンのこの文章は、それらの批判に充分に答えているとは思えないのですが、この文章の結語はやはり、それなりに魅力のあるものになっています。(途中難しいところを飛ばして読んだ感想です。)

====
私自身、自分の研究を始めた頃には、…、女性たちの努力や苦労、そして彼女たちの骨折り仕事を、分業や生産、再生産や消費、あるいは役割付与という概念をもとに研究しようとしていました。イリイチがそうした私の試みを批判したのは1970年代も終わり頃でした。イリイチに言わせると、現代社会科学が用いるこうした概念は、日常の仕事という布地から男性的皺も女性的皺も伸ばしてしまうようなアイロンのようなものだというのです。当時、私は激怒しました。けれども戦いのようなかたちで始まったことは、まもなく共通の営みに変わっていきました。私たちはこうした概念やその他の概念も含めて、歴史学の根本概念のキーワードについて、その有効性を再検討し始めたのです。そのことで、「分業」やそして「再生産」といった述語が、つまり分析道具としてのこうした概念がいかに具体的な行為を捉えそこなっているかということが明らかになってきました。社会科学のこうした専門用語は、女性の身体を労働力にすりかえてしまうのです。 127p
====
私たちの共同研究がめざしていたのは、そして今日なおもめざしているのは、「二性」を「相互性」ないしは「関わり」として考え、差異や不平等という近代的な概念の固定化から解放してやることでした。つまり、そのような劣等性から解放してやることでした。  134p
===
 伝統的な事物世界と産業的な事物世界という異なったかたちで体験される世界について考えることで、私は、今日女性であることについて新しい理解をするようになりました。私たちが1990年頃始まった新しい歴史的な境界にあること、つまり技術的な時代から視覚的時代への移行期にあることは、多くの女性研究者たちが取り組んでいるテーマです。(中略)。けれども、私たちが「セックス」ということで考えていることが、フーコーを上回る徹底さで理解されないかぎり、つまり「関わりの歴史」のなかで構築的な釣り合いの喪失という局面から理解されない限り、デジタル化がますます進む世界にあって、女性としての私たちのあり方についてなにかを言うことも、なにかを概念化することもできないままに終わることになります。(以下略) 135p
===


比較的に、ぼくでもわかりそうな部分だけ抜書きしたのだけれども、それでもわからない部分は多い。(「技術的な時代から視覚的時代への移行期にあること」って何を指しているんでしょう。知っていたら誰か教えて)

ともあれ、時代がこのように推移して「ジェンダー」という言葉が社会的性差というような意味で定着した現在、イリッチやドゥーデンの「ジェンダー」には「ゲヌス」という言葉をあてがっていたほうが誤解は少ないかもしれない。

 そして、ジェンダーという概念自体がこのような形でしか広がらなかったことには、歴史的な状況に規定された必然性があったのではないかとぼくは思う(直観的に)。
 「直観的に」と書いたのは理論的には展開できないからなんだけれども、現代という時代の中で女性が置かれている状況を説明するために社会的性差=ジェンダーという概念がとても有効だったからというのは間違いないだろう。まず、そのことが明確にされる必要があった。男女が近代以前に肯定的な相補性を持っていたかどうか、ぼくはいま答える術を持たないが、そのことが言及される前に、現状で女性が置かれている不当な位置への異議申し立てがされつつあるという歴史的な状況が、ジェンダー概念を現在のような解釈のもとで広げる背景にあったのだろう。

 そんな単純なことにイリッチやドゥーデンが気付いていないわけはないと思うのだけれども、そのことに言及されていないのはなぜかというのが、とても気になるところではある。



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