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zoom RSS 書評というか雑感「徹底検証 ニッポンのODA」

<<   作成日時 : 2009/01/24 05:17   >>

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Yahooのブリーフケースが使えなくなるということで、こっちに保管。
以下の書評というか雑感、ピープルズ・プラン2006年秋号に掲載されているものと同じはず。(だから古い)
追記に書いた本「国家・社会変革・NGO」に関する読書メモはこのブログにいくつもある。
(興味のある方はサイト内検索を)


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書評というか雑感「徹底検証 ニッポンのODA」

「…ODAなんてまやかしだわな」(中略)「世界の金ってのは、南から北へ流れるようにできている。そいつが北の大国…の貿易ルールだ。南は材料を供給しましょう。その代わり私たちはそれを完成品にして(中略)…。キューバのホセ・マルティがその欺瞞を暴露してから、百年ぐらいたつが実態はなにも変わっていないんだから、どうしようもないね。そのシステムに文句をつけると、北半球の国々は、『じゃあ、おたくの国に道路を造りましょう、病院を造りましょう。発電所やダムもいいですね、お金がないのですか? 貸してあげますよ。いいですよ、金利はお安くしておきますから。借金なんてすぐに返せますよ、産業が育てばね』 ところが、話はそんなにうまくはすすまない。(後略)…」

 井上尚登のエンターテイメント小説『C.H.E.(チェ)』(角川文庫)には、こんなやりとりが出てくる。現状のODAについての基本的な理解はこれでいいはず。PP研からの書評依頼は、この小説ではなく、表題の本。この小説のODA理解がもう少し丁寧に書いてある、と言えないこともない。
 二〇〇四年は日本のODAの五十周年だった。それを期にODAについて考えるというこの本、編者の村井さんは章毎に異なる著者に視点の違いはあるとしながら、共通する視点について、以下のように書く。
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援助を受けてきた「普通の人びと」の立場に立って、そのあり方を批判的にとらえ、ODAの哲学・思考の回路を変え、広く世界の人びとから信頼される「公共政策」としてのODAを構築していこうというところ…
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 この視点から、「ニッポンのODA」の歴史と現状、今後の指針にかかわる提案がわかりやすく書かれている。最初に紹介した、「現状のODAの基本的な理解」の具体的な事例がいくつもあり、それがどのように生まれるのかという構造についての記述もある。ただ、政治・政治家とのからみでは、もう少し新しい事例も欲しかった。
 今年の四月に発行された本なので、その二か月後に急に出てきて決定されたODA武器輸出の話に具体的に触れることができなかったのは残念。一章の結語には「…五十年、数々の問題をかかえながら、ODAは歩んできた。そのなかで、軍事との協力には踏み込まずにきた。この最低限の一線だけは踏み越えないのが、援助される人びとの願いでもある」と書かれている。しかし、第四章を読むと、本当にこの一線が越えられていないかどうか微妙。このODA武器輸出に関して、誰がどのように仕組み、どこが落札し利益を得、今後どうなるのかというフォローが必要だ。ODA武器輸出反対の取り組みがとても不十分なことも気になっている。「もっと広範で明確な反対の意思表示を」と自省を込めて思う。
 さて、この本の話に戻る。以下では個人的にとりわけ興味深かった三点について触れる。

 平和的生存権とODAについて

 第四章で越田清和さんはODAの軍事化を指摘した後、これからの「中間的(たとえば十年間)目標」として、「ODAを「平和的生存権」確立のためにのみ使うものへ変えていくこと」を提案する。具体的には以下の五点となる。(この「のみ」を強調して傍点を)
 @「平和を維持」するために、軍備を縮小し、兵器製造・貿易を禁止する。民主主義の徹底のためにODAを使い、「反テロ」や「治安維持」などの軍事行動には使わない。
 A「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」するために、国際的な人権基準の徹底やグローバルな権力構造の民主化を進めていく。とくに、社会権を含む人権とODAのつながりを深める。
 B「ひとしく恐怖と欠乏から免れ」るために、絶対貧困の根絶に向けてODAを使う。アフリカなど最貧国への援助を最優先し、イラク復興などへの多大な資金協力を見直す。
 C「ODA大綱」が重点にあげている「人間の安全保障」や「平和構築」「平和の定着」を「テロとの戦争」に関連させない。
 D平和構築に関するガイドラインを作成し、占領・戦争の一方の当事者とは一線を画し、和平の仲介を前提とした復興支援を行う。

 これについてNGOだけでなくJICAなどのODA関係者を含めた議論ができる場所が設定できたら面白そう。この五点、まだラフな叩き台という面は否定できない。例えば「絶対貧困の根絶に向けて」とか「アフリカなど最貧国への援助」がどのようにあるべきなのかなどの課題は残っている。しかし、こんな形でODAを組み替えたら、日本の「開発援助」がどうなるか、想像すると少し楽しい。そもそも「開発援助(DA)」という名称自体が再検討に値する。問題はこの案を精緻にしていくことより、この提案をどう具体化していくかということだ。実現に向けて何が必要なのかということをいっしょに考えていきたい。

自己否定する存在であるということ

 それを考える上でも、重要だと思えるのは、越田さんがODAとNGOの関係を考察している第五章の結語にある以下の視点。
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 …、ODAとNGOの連携・パートナーシップに関する議論では、この「自己否定する存在としてのNGOとODA」について話されたことはない。ODAとNGOをなくす、つまり世界に広がる富と貧困の遍在と収奪の構造をなくすという方向性を前提に、そのために何をなすべきかという議論はなかったのである。
 この問題について徹底して考えることが必要になっている、と私は考える。ODAをなくすために何が出来るか考えることは、日本という「富める国」に住む個人として援助の世界をどう考えるかということでもある。国家による援助としてのODAを前提とせず、世界規模での不平等をなくすために何ができるか。「世界の富めるものに、過剰消費の習慣が恥であり、俗悪であること、しかも自分たちが他者を犠牲にして消費にふけるという二重の俗悪行為を犯していること」に気づくために何をなすべきか。それが、いま私たちに求められているのである。
==
 その通りだと思う。そして、必要なことは「援助として何かをする」ということよりも、新旧の植民地主義が撒き散らしてきた害悪を減らす、なくす、あるいは償うことではないか。「快」を増やすのではなく、「苦」を減らす方向で視座を逆転すべきという市井三郎さんの思想を援用する横山正樹さんの平和学からの提起(『平和学の現在』第4章、法律文化社)は、ODAを考えていくうえでも重要な視点になるはず。

贈与よりも「借款」?

 もう一点触れたかったのは「贈与よりも借款の方が対等な関係を育てるという意味では望ましい」という、中村尚司さんの主張。無利子とか、事業についての貸し手の責任とか、いくつかの条件がつけられてはいるが、海外援助や債務の問題を考えるうえで刺激的な示唆だ。従来のNGOの主張をくつがえすこの提起、いまだに第三世界の人びとを苦しめている債務問題とあわせて検討されるべきだろう。人間の日常生活に置き換えて考えると贈与よりも借款のほうが対等な関係を育てるというのはその通りだと思うし、日常生活に置き換えて考えるという手法は嫌いではない。
 しかし、植民地主義がもたらした負債を償うための資金であれば、それを贈与とは呼ばない。そのあたりのことを含めてどう考えるのかということは課題として残る。
 
 以上、三点について感じたことを駆け足で記述したが、この本全体は、現状の中でODAを議論する際には欠かせない前提的な話や、その具体例がわかりやすく紹介されている。そして、いくつかの検討すべき論点が提出されている。これからODAについて勉強したいという人のみならず、グローバリゼーション関連の社会運動にかかわる人も抑えておきたい本だと思う。

追記:これを書き終えたあとに以下の本の出版予告があった。『国家・社会変革・NGO――政治への視線/NGO運動はどこへ向かうべきか』新評論十二月発売予定【越田清和・中野憲志・藤岡美恵子=共編】
ここで書いたことと重なる部分はありそう。


===転載ここまで===





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