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zoom RSS 『静かな大地』(花崎さんのほう)から

<<   作成日時 : 2009/06/12 01:26   >>

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5月に花崎皋平さんの『静かな大地』と池澤夏樹の『静かな大地』を図書館で借りた。

この2冊が同じタイトルであるのは偶然ではない。
池澤さんの本に花さんから使わせてもらったというような謝辞が掲載されていた。

で、この5月も、ゆっくり本を読む時間はとれず、花崎さんの本のほうだけ斜め読みして、返すことになった。

いま、ちょっとだけ検索したら
池澤さんの本についての丁寧な感想があった。
http://yamaoji.hp.infoseek.co.jp/b_ikezawa_daichi.html

そこに書かれていたこと
「入植した日本人≠ニ、アイヌの人たちの微妙な関係が、この小説の底を流れる通奏低音」

花崎さんの本に関しては、この微妙な関係は「通奏低音」というより主題に近いかも知れない。

以下のURLにも抜書きがあります。
http://plaza.rakuten.co.jp/malusjourney/diary/200902200000/

ここに特徴的な部分が抜書きしてあるので、どんな本か知りたい人は上記のものを読んだほうがいいです。

で、ぼくはこの本の直接的な本題からは少し外れた部分を少し抜書き。

この花崎さんの本の中の「民族」についてのくだり。

====

 民族集団の実際のあり方は、社会の生産と生活の様式によって左右され、一律ではない。(略)
 ・・・。そして、個人にとってしがらみとなる不合理な習俗や規範を民族的結合の名において強制することは次第に不可能になる。
 しかし他方、過去の**(読めない漢字)を脱した何物にも拘束されない個人とは、同時に、自分の生まれ育ってきた土壌からも遊離した根なし草となることでもある。そのアイデンティティの危機が、ふたたびルーツを探り、自分が帰属すべき集団への志向を産みだしている。それが現代の民族意識なのではないか。この民族意識は、他の諸個人においてもおなじような帰属志向を――理性的に考えれば――認めざるをえず、ひいては諸民族の平等と共存にもとづく人類社会のあり方を求める見地へといくつくであろう。その意味で、これからの民族意識は、個人の自覚をバネにしたものでなければならない。それと同時に、近代西欧の個人の自覚が拠りどころとした自由、平等、友愛といった普遍的理念の方も、人類諸社会それぞれに持つ特殊な諸価値、諸理念と出会って、みずからの存立基盤の特殊性を反省し、さらに普遍的な理念へと転換されなければならない。
 このように、個人と民族と類的共同体としての世界とを、思想と実践の両面で結びつける意識的な努力こそ、これからの人類社会と人類文化とをひとつの総体として内容づけ、活性化させる働きになるだろう。
 そうでない民族主義は、内へ向けては個人の自立と批判をつぶし、外に向かっては人類社会の民族的分裂と敵対をあおり、自民族の特殊利害のために他民族を抑圧し、その行為の錦の御旗として、自民族の歴史・文化・宗教などを絶対化する全体主義へと、とえまなく堕落していくであろう。その傾向は、過去の遺物ではなく、今日でも、くりかえし再生産され、眼前に展開している。

====


花崎さんは「アイデンティティの危機が、ふたたびルーツを探り、自分が帰属すべき集団への志向を産みだしている。それが現代の民族意識なのではないか」「民族意識は、個人の自覚をバネにしたものでなければならない」と書く。

確かにマイノリティや先住民の「民族意識」はこういう性格を持ちえるだろう。じゃあ、ぼくの「民族意識」はどうなのか、と考えてみる。どうもしっくりこない。自分がいまどういう地点に立っているのか、何をしたらいいのか、ということを考えることがあっても、「その自分とはいったい何者なのか」というようなことは、あまり考えないからかもしれない。

「その自分とはいったい何者なのか」という問いについて、その問いが問われる具体的な場面を抜きに語ることは難しい。自分が置かれている状況(時間や地点やさまざまな関係性)に密接にリンクし、それと切り離さない形でのその問いは、ときに有効なことがありえると思うが、一般的・抽象的に「自分とはいったい何者なのか」ということを問うことはあまり意味がないのではないかと思う。

こんなことを考えさせられたのは、いま、読んでいて、なかなか読み終わらないのが西川長夫さんの以下のすごく長いタイトルの(中身はそんなに長くない)文章の影響かも知れない。
===
差異とアイデンティティのための闘争の先に見えてくるもの
――タゴールの反ナショナリズム論とイリイチの「ヴァナキュラーな価値」を手がかりに
===
これが掲載されているのは「生存学研究センター報告4」
http://www.arsvi.com/b2000/0810av.htm
上記のURLにあるように送料さえ払えば、送ってもらえるようだ。
===

この前半ではタゴールが徹底して、Nationを否定していたことが紹介される。タゴールには「No Nation」が理想なのだ。

これについては、どこかでゆっくり紹介したい。


そう、花崎さんに戻るのだが、彼はここで「個人と民族と類的共同体としての世界とを、思想と実践の両面で結びつける意識的な努力こそ、これからの人類社会と人類文化とをひとつの総体として内容づけ、活性化させる働きになるだろう」と書くのだが、個人と類的共同体としての世界との間に「民族」という項目を置くことが、本当に有効なのかどうか。もちろん、花崎さんはこの先で民族主義の危険を語ることを忘れないし、そこは合意できるのだが。

花崎さんがここで語っているような条件の下で、肯定的な民族主義というものが、本当に成立しうるのか。それとも森巣博がカンサンジュンとの対談で語っているように
http://tu-ta.at.webry.info/200710/article_6.html 参照
===
民族は一般概念としては成立しえないのだが、例外もまた存在する・・・。それは、非対称的権力の構図の中で、民族というスティグマを付けられ、西欧近代の「進歩」の時間軸から取り残された者とされ、一方的に抑圧され収奪された(そして現在もされつづけている)少数民たち、および「在日××民族」という名で排除され差別されつづけてきた人々は、当然のように民族概念を正のベクトルを持つ力として立ち上げうるし、また、立ち上げるべきだと・・・。 すなわち、日本と呼ばれる領域内に「日本民族」は存在しえないけれど、「アイヌ民族」、「沖縄民族」、「在日××民族」は成立しうるし、また、現に成立しています。
===
こんな風に言ったほうが、確かにしっくりくるところはあるような気がする。こんな風にアカデミズムから遠く離れた問題の立て方がぼくは好きだ。





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内 容 ニックネーム/日時
民族問題にかぎらず
マジョリティは

マイナリティを
意識せずとも

生きてゆけますけれど

マイナリティは
マイナリティであることを

生きている限り
つねに意識しています。

マジョリティが
マジョリティであることを

意識せずとも
生きてゆける社会は

マイナリティを
みえない形にまで

排除している社会です。
cana
2009/06/13 09:41
canaさん、ときどきコメントありがとうございます。
最近、Kanaさんという人からもコメントをもらって、ちょっとびっくりでした。

さて、
===
マジョリティが
マジョリティであることを

意識せずとも
生きてゆける社会は

マイナリティを
みえない形にまで

排除している社会です。
===

マジョリティであることを意識するのはそれなりの困難が伴う作業でもあるのですが、除外されている人がいることをできるだけ忘れないようにしたいとは思うのです。
ヘテロで、男で、いわゆる「健常者」で、正規従業員でかつ、中間管理職までやっている人間として。
(管理職とかいいながら、50歳で年収500万っていうのも微妙なんですが(笑)
tu-ta
2009/06/14 07:40

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