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zoom RSS 『再生の精神』

<<   作成日時 : 2009/07/19 06:27   >>

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『再生の精神』(The Spirit of Regeneration)という本の話を花崎皋平さんが明治学院大学国際平和研究所で発行している『南を考える』9(2007年3月)の「生命的世界のさまざまな姿」というタイトルの文章の中で紹介している。

この文章、全体も面白いのだが、とりあえずここだけ紹介。


「世界的な規模で近代の自然科学的生命観を超える生命観の共有が進みつつあるひとつの例」だというペルーの農村で活動するグループの記録。


彼らの歴史は以下のように紹介されている。
===
・・。1968年・・。世界的に同時の民衆運動の高揚があったその時代に、ペルーの首都の大学に初めて先住民農民出身の若者が学生として入った。そして卒業し、農業技術者として自分の生まれた村、あるいは農村地域に農業発展のための技術者として戻っていった。ところが、その人たちが学んだことを農村で実行してみてもうまくいかない。それはなぜだろう。どうしてうまくいかないんだろうと考えに考えた。その頃メキシコなどではイヴァン・イリイチや、ブラジルではパウロ・フレイレといった、すぐれた思想家が広く影響を及ぼしつつあった。その影響があったとされるが、実は西欧の科学技術のやり方、対象から距離をとって、主体と客体の関係をつくり対象を分析し、その対象に関する知識を情報として取り入れて、それを使って対象を変革する、もっと生産性を上げる。このやり方がだめなのだと彼らは気がついた。
 (フレイレの紹介略)
 悩みぬいた末、彼らは大学をやめる。そして、技術者として知識や技術を教え込むのではなく、総体としてのアンデス世界から学ぶということに態度を変えた。アンデス世界では、すべて人、パーソンなのである。森も木も川も空気も、花も動物も、みんなパーソン(人)になっている。また会話のうちに生きるというあり方こそがアンデスの世界のあり方だし、アンデス世界だけではなくて、生命についての基本的な考え方ではないかという主張を始めたのである。そして「いのち」は流れであると。
===


多くの先住民が生活しているアンデス農民世界、そのキーワードは
知恵 Wisdom
愛 love
養育 nurturance
互恵 mutual assistance
会話 conversation
共生 co-existence
ダンス dance

(どうでもいいような話かもしれないけれども、なぜWisdomだけが大文字なのかはわからない)

その、アンデス農民の世界が以下のように紹介されている。
===
アンデス世界をあるがままに受け入れ、世界を愛し、愛される関係に安らいでいる。基本的な世界と人間の関係は、人間が育てているだけではなくて世界に育てられる。それは抱き合ったり愛撫したりという直接性の世界。その中では主体と客体の区別は存在せず、目的と手段の乖離もなく、そうした抽象は何もない。西欧の技術は知識を前提としている。知識は主体が対象から距離をとり、対立し、対象のあるがままの姿を分解して情報化する。アンデス世界では、知識ではなく知恵によって世界と関係する。知識は知ることを通じて相手に働きかけて相手を変化させることを目指すが、知恵は行為することから生まれ、知恵はお互いに調子を合わせる(チューニングする)、同調しながらお互いが理解し、お互いが変るなら変っていく。それが感じ取って愛することにつながる。
===

こんな話を読むと、じゃあコンフリクトはどうするのかと思ってしまうのだが、時間をかけることが、なんとかなるようにも思う。


この文章では、この『再生の精神』について、それ以上の説明はほとんどない(確か季刊ピーピルズ・プランの花崎さんの連載にもこの話はもう少し詳しく紹介されていたはずで、おそらく今後、この連載も含む書籍で紹介されることになるだろう。)


この後、福岡伸一の『もう牛を食べても安心か』から、シェーン・ハイマーという人の「動的均衡」論を紹介し、現代自然科学の中にもそういう考え方がでているという。


ともかく、この話もローカルに価値を見出しているという意味で、『ラダック・懐かしい未来』のヘレナさんの主張にも重なる。サブシステンス志向ということもできるかもしれない。

この本、読んでみたい気もするが、外国語だと一人では読めそうにないなぁ。

ともかく、花崎さんはこれを「近代の自然科学的生命観を超える生命観の共有」の例と紹介しているが、それは近代を動かしている原理そのものに対するパラダイムチェンジの話にもつながるのだろう。

「発展・開発」「利潤の最大化」「工業化」「大規模化」などを基本原理、あるいはエンジンとして進んできた近代がたちいかなくなりつつある。それに変わる新しいパラダイムが明確な形で共有されているとは思えないが、この話もパラダイムチェンジのために、さまざまな場所で現れているもののひとつだと言えるだろう。山之内靖さん流に言えば、新しい「世界像」。

このパラダイムチェンジが世界中の小さな地域のなかで始まっている。しかし、壊れつつあるとは言え、グローバル資本主義の力は世界に覆いかぶさり続けている。その貪欲さを生きながらえさせ、世界を飲み込もうとする力と、それに対抗する民衆運動。

ローカルで小さい点としての抵抗を可視化することが必要なのだと思う。
この世界像をめぐる争いの中で、ローカルで小さいことは否定的なことではない。そこにこそ未来が築かれなければならない。それがリゾーム状につながることで、現在、支配的な「発展・開発」「利潤の最大化」「工業化」「大規模化」などを基本原理、あるいはエンジンとして進んできた近代を内側から切り崩していくことを可能にしたいと思う。

彼我の力関係はまだまだ圧倒的に不利だと言わざるをえないのだが、新しい芽がいくつも生まれ始めているようにも思う。


この漸進的な変化のスピードはぼくを不安にもする。田中優さんが言っているような温暖化のポジティブ・フィードバックが始まるのかどうか、ぼくにはわからないが、わからないから無視するのではなく、よくわからないけど、そうさせない努力が必要なのだと思う。

そのような破滅に向かうポジティブ・フィードバックではなく、生存のためのポジティブ・フィードバックを作れたらいいと感じるが、そんなことが可能かどうか、それもぼくにはわからない。

ぼくに大きなことはできそうにないけれども、近代を支えてきた価値観を組み替えようとする運動を進めていくことのなかにも、生存の価値を見出して行けたら、それはそれでいいんじゃないかとも思うんだけど、どうなんだろう。






この『南を考える』の花崎さんの文章に触発されて、そんなことを考えた。
この後半は平易な言葉で簡潔にピープルネス・サブシステンス・スピリチュアリティという近年の花崎思想のキーワードが解説されている。気分が乗れば、これも紹介したい




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