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zoom RSS 「経済成長って 何で必要なんだろう?」読書メモ その1

<<   作成日時 : 2009/08/16 12:18   >>

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「少なくとも日本ではGDPベースでの経済成長は必要ない、縮小する経済の中で、人々が生活に困らないというようなあり方が必要なのではないか」という今まで書いてきた主張に、あまりにもまっこうから対立する本のタイトル。そこに湯浅誠さんまで参加しているというのが興味深く、図書館で借りて読んだ。ただ、湯浅さんについては、必ずしもこの主張に賛同しているわけではなかった。

この本については日経ビジネスオンラインで編者や著者がインタビューでも連載が始まっている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090810/202172/



本のつくりとしては、ニューケインジアンで状況によっては新古典派的な政策も必要だ主張する飯田泰之氏(理論家ではなく実証家の経済学者)と数人のゲストとの対談。

彼は公害問題を例に、有害物質に課税すれば企業は勝手に排出削減をやるんだから、資本主義それ自体を問題にする必要はなく、税率を上げればいいという。つまり資本主義かオルタナティブな経済システムかという体制選択をめぐる大それた問題ではなく、経済的なインセンティブで技術的に解決できる問題だということだ。

そういう問題もないわけではない。そして、資本主義はそういう解決手法を用いながら、これまで生き延びてきた。問題は現在の危機がそのような対処で持続可能性を担保できるかということだ。確かに、いままで左翼は何かあると、もう資本主義では解決できないといい過ぎたし、結果として、左翼が望むような形では問題は解決されず、資本主義は生き延びてきた。今後もそうなのかどうか、というところが問われている。山之内=ヴェーバーのいう世界像の転換が必要なのかどうか、という話でもある。

この本の問題意識にある、「人文系の話に経済学的な言説があまり(にも?)流通していないので、それをちゃんと入れていきたい」というのは了解可能だし、必要なことだと思う。そういう意味で、ぼくのような経済学がわからない人間にもわかる言葉で記述されて、議論が可能になるように設計されているという面では評価できる本だと思う。

しかし、内容については、「経済成長はもう必要ない」という主張(「脱成長派」)の中心的な論点にまったく噛み合っていないように思える。

ここには「エコロジー」や「環境(地球資源)制約」の話と、いわゆる「南」側世界のとの無視できない不均衡の視点がまったく欠落しているということ。あるいは戦争や軍事産業の武器売買の話も出てこない。そのような視点を欠落させて、本当に経済の話ができるのか、と思う。

正確には最初にも紹介したように少しは書いてある。「公害は規制や補助金、あるいは課徴金で対処できる」とか「技術進歩で都会の川はきれいになった」という話だ。「脱成長派」もそれを否定はしない。繰り返しになるが、それだけではもう間に合わなくなっているのではないかということだ。利潤の獲得をエンジンとする資本主義経済は拡大に次ぐ拡大を続けてきた。そのためには、大量生産・大量消費(場合によっては大量の廃棄も)が賞賛され、必要なものを作ることより、欲しいものを生み出すことがよしとされてきた。また、軍事産業も減らすわけにはいかなかった。使えるものもどんどん捨て、新しいものにすることがいいことであり、現在も多くはそのように動いている。

そういうシステムが生まれたときから、それへの疑義はさまざまな形ででてきていたが、もうそのシステムは限界に来ているのではないかというのが「脱成長派」の主張だ。利潤よりも人々の生存を大切にし、地球の持続可能性をふまえた上での経済活動の結果として、GDPで計る経済成長が結果として可能であるなら、その結果としての経済成長まで否定するつもりはない。しかし、ここで主要な論者である飯田泰之氏が語るのは、とにかく経済成長が必要だという話だ。

また最初の対談で岡田靖氏は、「モノは無理やり買わされるわけじゃない」と書くのだが、欲望を無理やり喚起させている面はないだろうか。そんな風にして、膨らまさせているGDPは多いと思う。地球資源の公正で持続可能な配分を考えたら、こんな形を含めた拡大はありえない。だから、いわゆる「先進国」での経済活動の収縮は一定、必然なのではないかと思う。

確かに、去年から今年にかけての経済の収縮は、一番最初に、いちばん弱い立場にある人の生存を危うくした。危うくされるだけでなく、死に追い込まれた人もいた。そんな状態を望んでいるわけではない。経済が収縮しても人々の生存が守られるために、なにが必要なのかということが考えられなければならない。飯田氏はそんなことは無理だと、ほとんど決めてかかっているのだが。彼が主張するように、経済学者が「規範=目的は外から与えられる。その規範の中での最適解を出してあげる」という存在ならば、地球資源・地球環境の公正で持続可能な配分を前提とし、人を殺すための軍事産業を廃止し、欲望を喚起するのではなく、必要に基づく経済のために、GDPで表されるその量が縮小しても(逆に言えば、そのようなことが達成されるのであればGDPは増えてもかまわないが)、人が生活していくのに困らない経済をどう成立させるかという風に考えて欲しいと思う。

序章では、この本をしかけた一人でもある芹沢一也氏が、規制緩和と市場原理の拡大を求める新自由主義的な政策について、対抗する政策理念が明らかになっていないという。それはその通りだと思う。そして、「格差や貧困という問題が浮上して、新自由主義が攻撃されていることが自民党の利益誘導政治を呼び戻してしまっている」というのも一面の真理であり、民主党の政策も、ある面では自民党の利益誘導政治と代わらないかも知れないと思う。だから、という文脈で新自由主義に反対する議論を「新自由主義という亡霊が徘徊しているのだという粗雑な議論」で「カリカチュアされた新自由主義という誤った標的に矢を放ちつづける」と批判するのだが、本当にそうなのだろうか。

確かに新自由主義に反対する議論の中には、粗雑なものもあるだろう。ぼくもときどきそれをやっていると思うので、そこは自戒しなければならないかも知れない。だが、「規制緩和と市場原理の拡大」という新自由主義的な政策がもたらした問題は世界各地で噴出している。例えば、世界各地で行われた水道の私営(民営)化が何をもたらしたのか、図書館などの公的サービスを民間企業に管理させることで、確かにコストは落とせたが、その結果、フルタイムで働いても年収200万円というような官製ワーキングプアを作り出している問題をどう考えるのか。例えば図書館について、ぼくも年収1千万の公務員によって運営されていることが、望ましいとは思わないし、地域の住民のボランタリーな参加なども組織されるべきで、硬直化した官の組織にはそういうことがなかなかできにくいという面は理解するが、この文脈では新自由主義批判自体が批判されているように感じ、そのことには大きな違和感を覚える。

ある意味、そういう違和感を呼ぶことがこの本の目的なのだろうから、そういう意味では成功していると言えるかもしれない。

どうしてもパイを大きくしなければ、問題は解決しないというところにもっていきたいようなのだが、例えば、労働時間をフランスやドイツ並みにすれば、失業がどれくらい緩和するか、そういう計算を実証家の経済学者にして欲しいと思う。


そして、この「経済成長」翼賛をいまいうことの意味を考える。世界の主流は、今でも「経済成長」を軸にして動いている。少なくとも日本では、ほぼ無前提に「経済成長が必要だ」という声が渦巻いている。例えば、国会議員に経済成長は必要かどうかというアンケートをしてみればいい。答えは明白だ。そういう現状の中での、この主張。ぼくたちの「経済成長もうはいらない」という声がそれなりに大きくなってきたことを喜んでいいのかどうか。

長くなったので、その2に続けられたら続く。

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