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zoom RSS 『この世界の片隅に』(こうの史代) メモ

<<   作成日時 : 2010/03/06 08:43   >>

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この漫画、知人の激賞を聞いて、読もうと思って大田区の図書館でまず探した。すると、『この世界の片隅で』という山代巴さんが編集した1965年の岩波新書がでてきた。山代さんの本は数人の人が、戦後、被爆者が生きてきたことのルポルタージュ。

この本の読書メモは
http://tu-ta.at.webry.info/201002/article_14.html
に書いた。

そして、この2冊の本のタイトルの類似について、こうの史代ファンクラブの掲示板
http://6404.teacup.com/kouno/bbs
で質問したら、以下のような答えがnatunohi69さんから返ってきた。そこから該当部分抜粋
===
『夕凪の街 桜の国』の巻末、<おもな参考資料>として17項目があげられている内の最初の1項目が大田洋子の『夕凪の街と人と』『屍の街』です。
そして2項目めが山代巴ほか編の『原爆に生きて』です。

みなさんご承知のように『夕凪の街 桜の国』というタイトルは、大田洋子へのある種のリスペクトからつけられたタイトルですので、『この世界の片隅に』というタイトルも、やはり山代巴へのリスペクトからつけられたタイトルだと容易に想像がつきます。
詳しいことを書いている読者のブログもありますのでご参考までに。
http://we23randoku.blog77.fc2.com/blog-entry-1145.html
===
どうも、こうのさん自身はこのタイトルについて、何も語っていないのかも知れない。

上記で参考に挙げられているのは《乱読大魔王の『We』周辺記事》
『We』の編集と校正、その他『We』を出してるフェミックスの仕事をしている乱読ぴょん(冠野 文)さんが書いている。


ともあれ、ぼくは最初に書いたように知人が激賞しているのを頼りに大田区の図書館にリクエストし、ぜひ、この本は大田区以外の図書館から借りるのではなく、購入してくださいと頼んだ。「その意見,伝えます」との返事だったが、準備された本を見たら、購入されていた。で、読み終えて、購入してもらってよかったと思う。なんか少しいいことをした気分(笑)。



で、この漫画へのぼくの感想だが、読み終わった直後には
===
何か物足りなさが残る。この物足りなさはなんだろう。それは広島が直接語られていないからではない。原爆投下前の広島とそれを前後する呉の日常の話でいいのだが、何かが抜け落ちているようなきがしてならない。うまく言語化できないのだけど。
===
という感想を書いている。しかし、読み返すとだんだん味が出てくる。自分の手元に置こうかどうか、迷う。本の置き場もなくなりつつあるし、図書館には確保したし。


以下、ツイッターでつぶやいた再読したさいの抜書きを中心に補足して採録
====

「世界の片隅に」敗戦を告げる天皇のラジオ放送を聴いて、主人公は怒る。

「最後のひとりまで戦うんじゃなかったんかね?…まだ左手も両足も残っとるのに!!」

トンボが飛ぶ絵に、この国から正義が飛び去っていく という文字が入る。

太極旗がひるがえるカットの下で、
「暴力で従えとったいう事か」「じゃけえ暴力に屈するという事かね」
「それがこの国の正体かね」
「うちも知らんまま死にたかったなぁ…」
とつぶやいた後に慟哭する。

 太極旗のイメージに関千枝子さんの二年西組の記述を思い出す。彼女は敗戦の日に聞いた朝鮮の人々の笑い声が最大のショックでこの時の疑問とショックが原点だったと書く。関千枝子さんはそこからさまざまなことを気づかされ、被爆者の靖国への合祀への反対にいたる。

また、この漫画のあとがきで、こうの史代さんはこんな風に書く。
====

「この世界の片隅に」あとがきから 
==
 わたしは死んだことがないので、死が最悪の不幸かどうかわかりません。他者になった事もないから、すべての命の尊さだの素晴らしさだのも、厳密にはわからないままかも知れません。
 この作品では、戦時の生活がだらだら続く様子を描く事にしました。そしてまず、そこだって幾つも転がっていた筈の「誰か」の「生」の悲しみやきらめきを知ろうとしました。
 (略) わたしに繋がる人々が呉で何を願い、失い、敗戦を迎え、その23年後にわたしと出会ったのかは、その幾人かが亡くなってしまった今となっては確かめようがありません。(略)ただ出会えたかれらの朗らかで穏やかな「生」の「記憶」を拠り所に、描き続けました。
 正直、描き終えられるとは思えませんでした。
 幾つもの導いてくれる魂に出会えた事。(略)のうのうと利き手で漫画を描ける平和。そして今、ここまで見届けてくれる貴方が居るという事。
 すべては奇跡であると思います。
 有難うございました。

2009年2月 花粉の朝に
==

「すべての命の尊さだの素晴らしさだのも、厳密にはわからない」とこうのさんは書く。確かに、いのちには「尊い」とか「素晴らしい」とかの凡庸な言葉で語りつくせない広がりがある。そして、この漫画がそのことを雄弁にというよりも、とつとつと語りかけてくれる。そして、そのことは、そのいのちの素敵さを語っている(という風に凡庸な言葉でぼくも形容するしかないんだけど)


P.S.
これを読みながら、山代編の『世界の片隅で』で紹介されていた長田新さんの「原爆エレジー」という言葉を思い出す。「それが意味するのは原爆をただ単に受動的に悲劇としてのみ捉え、敗北主義的な人間喪失の世界を描く作品群のこと」と説明されている。被爆の物語を「原爆エレジー」とそうでないものにわかつものは何だろうと思う。もしかしたら、それは読み手の側との関係性なのではないか。

そして、ぼくはこのこうの史代さんの新しい原爆文学とも呼べるのではないかと思える作品は「原爆をただ単に受動的に悲劇としてのみ捉え、敗北主義的な人間喪失の世界を描く作品」という水準を別の視点から軽々と飛び越えているようにも思える。


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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
spitzibaraさんのブログを拝見して、大田区の図書館で「だめもと」で検索したところ、この漫画があったのには驚きました。貴殿のリクエストだったのですね。大田区民の一人として感謝です。
yaguchi
2013/07/23 09:35

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