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zoom RSS 社会運動の観点から読む「ミレニアム1〜3」

<<   作成日時 : 2010/04/23 04:24   >>

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大田区の図書館で予約して、忘れた頃にやってきたミレニアム1の上。面白くて、すぐに引き込まれてしまった。

その後の巻は順調に借りることができて、ほぼ一気に読んだ。

本の重要な要素になるエピソードを列挙すると、児童虐待、家庭内暴力、ジェンダー、セクシャルマイノリティへの差別、タックスフリーを使った税金逃れ、精神医療における収容主義批判、アスペルガー、人身取引による強制売春、移住労働者の権利、排外主義批判、反極右、反ネオナチ、公安警察内部の歪んだ国家観、国家犯罪、などなど。

1の下巻の解説には
===
・・・近現代社会に対する批判や怒り、現代の社会や経済が抱える矛盾や問題に対する告発は――直感として言うならば――三部作を通じて初めて大きな歴史体系として浮かび上がってくるような気がしてならない。
===
とある。2部3部を読む前の感想だろうが、3部まで読んでも歴史体系っていう感じない。でも面白い。

しかし、この小説を一貫して流れているのは新自由主義というか現代の資本主義が抱える問題へのまっとうな批判。

タックスフリーに利益を隠す多国籍企業や排外主義への批判や、セックスマイノリティへの差別への怒りがストレートに表現される。

また、閉鎖的な精神医療のありかたへの批判や障害問題へも視野もある。

(なるべく、謎解きの部分は記載しないようにしますが、以下には多少、ネタバレ的なものを含みます。)

リスペットについてパルムグレンはいう。
「・・・おそらく一種のアスペルガー症候群か何かだろう。アスペルガー症候群と診断された患者の臨床記録を読んでみると、リスペットとぴったり一致する点がいくつもある。もっとも、まったく一致しない点もたくさなるんだが」2下346p
本のなかでは、このように書かれていている。確かにそんな感じだ。全3巻6冊を読み終えても、本当はどうなのだろうという感じは残る。

重要な登場人物であるグルベリに関する以下のような記述もある。
====
・・・急ぎ足ですれ違っていくスカート姿のムスリム女性ふたりをじっと目で追った。スカーフ姿の女性に含むところはない。髪を隠したいのであれば隠せばいい。だがそれをストックホルムのど真ん中でやられると、違和感を覚えずにはいられなかった。3上139p
====
これはグルベリがどのような人物かをあらわす記述で、(ぼくの想像では)間違いなく彼の否定的な評価を特徴付ける記述なのだが、ムスリムの女性がスカーフを選ぶことが、欧州で政治的な焦点になっていることを知らないと、ただ読み過ごしてしまう部分だろう。

また、以下のようなエピソードも記載されている。

(差別を扇動する表現と表現の自由について、法務長官の表現の自由を優先する姿勢が疑問視されるようになった)というようなことが紹介された後に以下のように書かれている。
===
その大きな契機となったのは、言論の自由や反人種差別などのために活動するNGO<人権のためのスウェーデン・ヘルシンキ委員会>の・・・事務局長が、長年にわたる法務長官のイニシアチブ欠如を指摘する報告書を出したことだ。この報告書は、現在の状況では人種的憎悪を煽る人物を起訴して有罪にすることはほとんど不可能である、と結論づけたのである。3上377-378p
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しかし、スウェーデンでは「ほ・と・ん・ど・」不可能というレベルかも知れないが、日本では「全・く・」不可能で、東京都知事のあからさまな外国人差別が大手を振ってまかり通っている。とはいうものの、人種差別表現に対する国家による規制という問題は微妙な部分も少なくないように思う。どこからかが差別なのかを明確にしなければ、差別禁止の濫用による表現の自由への介入の危険がまったくないとは言えないだろう。ただ、石原のような公人への規制行使は明確に必要だと思うが。


また、世界のまともな国のほとんどには、独立の憲法裁判所が何らかの形で設置され、権力機関が民主主義を侵害しないよう監視する働きをしているのに、スウェーデンでは不十分だというような記述がある(3上378p)。しかし、日本には権力機関が憲法のどおりに民主主義を侵害していないかとか、人権を侵害していないかということを専門に問う独立した司法機関はないと言える。


話は飛ぶんだけど、3上の「訳者あとがき」によると、移住労働者支援の文脈で出てくるクルド・バクシなる人物は実在とのこと。ミレニアムの著者のラーソンが編集長を務めていた『EXPO』はバクシの「反極右」をかかげる出版物の一部として発行されていたとのこと。(3上491p)

他に、この「訳者あとがき」で興味深いのは旧ユーゴ移民の話。スウェーデンには多いのだけれども、彼らに対する差別が存在するのは否定しようのない事実だと明記されている。その上で、スウェーデンの犯罪小説では彼らが「ステレオタイプ化され、マフィアのメンバーかチンピラとして描かれることが多い」にもかかわらず、この小説では、重要な登場人物の一人をあえてそうではない姿で描いている、という。こんな話は紹介してもらわないとわからない話だ。

同時に清掃労働者として働くクルド移民というように典型的な設定もあるのだが、その場合も彼の来歴を詳しく語ることで、ひとりの個人として浮かび上がらせることで「紋切り型のイメージを打破してみせた」としている。彼にとどまらず、すべての登場人物について、ラーソンが詳細な設定を丁寧に書いているのは、「固定概念やステレオタイプに基づく差別と戦おうとした」「気概の表れであるかもしれない」と訳者は指摘している。(3上492p)

また、この訳者あとがきには、書きかけの4部と相続のトラブルのことが記載されている。ラーソンが完成させる4部はもう読めないのだが。


3の下に付箋をつけた部分をちょっと紹介
これはほんとに何気ないエピソードなのだが、
主人公ミカエルを公安警察に案内されるシーン。公安警察で人種犯罪などを取り締まる憲法保障課の課長(エドクリント)と女性の刑事(モニカ)のやりとりで、課長はいう
===
「まずコーヒーを飲もうか、……モニカ」
「ええ、いただきます」とモニカ・・・は言った。
 ミカエルは、憲法保障課の課長が立ち上がる前に一瞬迷ったのに気づいた。エドクリントは自分でコーヒーポットを取りに行き、すでにカップが出されている会議用テーブルに置いた。おそらく彼はモニカがコーヒーをいれることを期待していたのだろう。エドクリントが苦笑いしているのを見て、ミカエルは気持ちがなごんだ。・・・(3下87p)
===

===
警察をやめて民間の警備会社に入った女性と彼女を依頼する女性との会話
「どうして警察を辞めたの?」・・・
「その前にどうして警察官になったか聞いてくれません?」
「いいわよ、どうして・・・?」
「17のとき親友の女の子が男3人に襲われて、車の中でレイプされたんです。警察官になったのは、警察はこういう犯罪を防ぐためにあるという純粋素朴なイメージを持っていたから」
「なるほど……」
「ところが私は何ひとつ防げなかった。現場に到着するのはいつだって、犯罪がすべて終わったあと。警察隊のマイクロバスの中で同僚たちが交わすくだらない会話にも我慢がならなかった。そのうえ、捜査すらされない犯罪があることもわかってきた。今度の出来事も・・・」(3下111p)
===



最後の解説に短くわかりやすくこの小説の特徴が書かれている。
==
要するに『ミレニアム』三部作には、ミステリのジャンルすべてが注ぎ込まれているのである。本格ミステリ、ハードボイルド、ノワール、警察小説、サイコ・スリラー、スパイ小説、そしてリーガル・スリラー・・・。しかもそのレベルは極めて高く、ひとつひとつが意外性と迫力に富んでいるから驚く。
 しかも、国家を食いものにする資本主義の矛盾、ジャーナリズムの正当性、女性への暴力、人身売買、強制売春といった社会的テーマを正面から捉えつつ、物語の興奮をたっぷり味わうことができるから、なおのこと読み応えがある。・・・(3下472p)
==


ともあれ、何度も書くがすごく面白かった。

読んだ直後のメモは
http://book.akahoshitakuya.com/u/35394/log_list
にもある。




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