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zoom RSS 『夜の太鼓』(石垣りん著) 読書メモ

<<   作成日時 : 2011/02/16 02:36   >>

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「夜の太鼓」、文庫本を購入して読んでいるはずなのだが、部屋で見つからない。読んだ当時、メモも書いていると思うのだが、残っていない。
読書メーターに読後すぐに書いたメモは以下
〜〜〜
以前、文庫で読んでいたはずだが、図書館で借りてハードカバーで再読。このところ、ずっと社会運動がらみの本ばかり読んでいたなぁと思う。でも、この本も少しだけそういう部分も含んでいる。石垣りんさん、やっぱり素敵だ。
〜〜〜

前にもどこかで書いたのだけれども、すごく長い期間大田区に住んで、大田区で亡くなった石垣りんさん。大田区は彼女をもっと大切すればいいのに、ちょっと粗末にしすぎじゃないかと思う。少なくとも、大田区立男女平等推進センター【エセナおおた】には彼女の仕事の常設展示とかあってもいいはず。


例によって、気になったところを抜き書き &メモ


白い猫

いまとなって
与えられたものを食うな。
いつも油断なく身構え
人の目をうかがい
そのスキをすばやくはかり
奪いとって食う。
お前は身を寄せてこない。
およそ愛らしさなど寸分も持ち合わさず
やせ細り
夜の露地裏で足をなめている。
背中は北アルプスのように尖っている。
月が背中にかかる。
生まれたときからのノラネコ
白い毛並みとという毛並みを汚れるだけ汚し
人間をにくんで。
お前に手など籍(か)すものか。
お前はうつくしい
うつくしいメスだ。



春の日、夢の島へ

・・・「その第五福竜丸が・・・」「見に行きませんか」と誘われても、正直なところ、何で廃船を見に行く必要があろう、というのが私の「感じ方」だった。

 ・・・ただどうしてそんなに船体にこだわるのか。もひとつ理由が呑み込めなかった。怒らないで下さい、私のような感じか方をしている人間が、たぶんひとりだけではないのではないか。

 それならありのままに語って、愚かしければ愚かしさをさらけ出して問うことにしよう。「今、どうして福竜丸なのですか」と。核問題に対する意識のぐんと低いところから、私は逆に近付いて行くことにした。ひとりの友に曳航されるようにして。

・・・

 展示館入口の扉に感じた少しの重たさは、私の気持ちの手応えだったかも知れない。船のへさきと、その下に置かれた碇がひとつ、来館者を迎えるかたちで正面に。

・・・

 九月二三日には乗務員中最年長の久保山愛吉さんが死亡。同じ九月に私は「夜話」という詩を書いている。

ビキニの灰で
漁夫久保山さんが亡くなれば
弔慰金は五百五十万円だ、と
新聞が大見だしをする、
貧乏な国の記者が
貧乏な大衆に向かって書き立てた
あわれな風情が見えるようだ。

そういう私も
五百五十万円家族に残せたら
死んだほうが喜ばれやしないか、と
フラチであわれなことを考える。

小人の国のガリバーのように
紙幣が
人間とは不釣合に大きな顔をして
葬式にまで出てくるのか


以下、適当に要約

翌年、米国政府が慰謝料として日本政府に支払った賠償金の200万ドル(当時は1$360円で7億2千万、当時のこの金額はいまだといくらぐらいだろう)80%がかつお・まぐろ漁協に渡され、業界は受け取った金で都心に「かつお・まぐろ会館」建設。

前後6回の実験で被災した日本の船は683隻、それらの船に乗っていた船員に被害者が出た場合の補償は、考慮されないまま打ち切られたという。22年後に被爆による病苦を申し出た船員もいるのに。

一方、マーシャル群島のミクロネシア民の被害は、アメリカからろくな治療も受けられないまま放置された状態にあるという。

なぜ福竜丸かという問いに、福竜丸が答えてくれたことは、広島長崎の被害は爆弾による直接な破壊であるなら、ビキニの被害は、もっぱら放射能によるもの。どんなに遠くの国が核攻撃を受けても、その被害は計り知れない。お米もお茶も魚も牛乳も…。そんなに危険な物質は、かつて地上になかった。あってもごく微量だった。
==
人間の能力がこしらえた放射能というものが、人間の心の中にある酷薄なものの形象として、姿をあらわしたのではないかとさえ思われてくる。深い罪のかたちとして。

 夢の島に来たとき、船底を逆さにしたような、と見た建物は、二枚の貝殻を模してこしらえられたのだという。私には、合掌する、陽に灼けた人の手に見えて来た。公園には背の高いフサアカシヤの木が、小枝の先に金平糖ほどの黄花をいっぱいつけて、風に揺られていた。
50p
==


===
春は来るのではない、生きてこちらが春に到達するのだという感じ方は、残念ながら年のせいかもしれません。81p
===


===
 お米は一粒も粗末にしてはならないと、学校で教えられ、家庭でしつけられて育った。戦前派の共通点です。
 戦後、日本人がお米を食べなくなり、若い人が平気でご飯を残す。農家は稲の減反を強いられるし、お米なんてありがたいものでもなんでもない――。そんな極端な変わり方をして、それではお米について何も教育されなかったのか、と考えるとき私は、やっぱりされてるなァ、と感心してしまいます。
 頭にはたたき込まれなかったけれど、習慣として、口にたたき込まれてしまったもうひとつの別の教育、そのことの根深さ。
 戦前戦後、どちらも、国の方針に従って人間が形成されるという点では同じだと思う。米粒も私もほんとうにちっちゃくて心配。
===
このあたりの感性が石垣さんだなぁと思う。すごく素敵で好きなところ。


===
見世物小屋の前で
 私が子供のころ、…氏神さまのお祭りなどにはいくつものテントが張られ、見世物小屋が並んだ。…
 …ほんのいっとき、スルスルとテントの一部が開いて、中の興行をチラリと…
 …フォークランド…、戦闘の推移、両国の報道を、私は見物人の立場で、それもテントの外側に立って、木戸銭なしでチラリとのぞき見た、と思った。
 無惨な人間の殺し合い、自国に都合のよい戦果の発表、いったん火蓋が切られると、どんな理不尽がまかり通るか。すべて、太平洋戦争で骨身にしみて経験していることばかりだった。もうこりごりの戦争である。
 紛争は73日間で終わり、女性首相の勝者としての晴れやかな笑顔がニュースにあらわれたが、それは見ていて心が寒くなるような笑顔だった。
 戦争は本当に片付いたのだろうか。大きな戦争の種が、地球上のどこかに用意され、進行していて、「紛争」というかたちで、チラリと一部をのぞかせたのでなければいいが。
 見世物小屋の外で、お小遣いを握りしめて立ちつくしていた子供のように、私には見きわめのつかない世界の情勢に目を見張るばかりである。いのちひとつを握りしめて。
86-7p
===



結界
 ・・・
 そのときまで私は結界という言葉を知りませんでしたが、花園の入口に組まれた細竹の通せん坊は、小指の先でも取りのぞくことができるものでしたから、ああ何という美しい約束事だろう、これが結界というものなのか。私は力ずくではない禁制の、それゆえにきびしい掟を見せてもらったのだと思いました。・・・121p

===
…太平洋戦争が…終わると…それまでは与えられた仕事を果たすだけだった職場が、もっと自由に活動してよい場所に変わりました。食糧も他の物資も極端に不足していましたが、組合員は演劇、絵画、文芸等のサークルをつくり、自分たちの手で機関紙を発行することをはじめました。
 私のそれまでのわずかな習練が急場の間に合うかたちで、詩を書く機会に恵まれたのでした。新聞の女性特集号に発表した「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」。終戦記念日に戦死者追悼号を出すからと言われて書いた「弔詞」。焼け残った一枚の着物を着て、文化祭で朗読した「よろこびの日に」、明朝の壁新聞に張り出すからとたのまれて書いた「挨拶」等
157p
===

東海テレビの1日の番組終了を知らせる局のサイン=クロージング


おやすみなさい

夜が満ちてきました
潮のように
ひとりひとりは空に浮かんだ
地上の小さな島です。

(中略)

財産も地位も衣装も 持ち込めない
深い闇の中で
みんなどんなに優しく、熱く、激しく
生きてきたことでしょう。

裸の島に 深い夜が訪れています。
目をつむりましょう。
明日がくるまで。

おやすみなさい。

===

これ、いまでも使われているんだろうか?


〜〜〜
戦前、女性は…昇進の道はありませんでした。最近は…男性と同等の職責を求められる女性も年々増えていると聞き、今昔の感に打たれます。男女差の撤廃はあたりまえのことで、双方に結構だと思います。ただ経済社会が値を付ける、花屋の花ばかりを志したくない。野の花もまた精いっぱい咲くことの出来る世の中でありたいと祈ります。169p
〜〜〜

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コメント(1件)

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こんにちは。石垣りんさんが大田区に縁がある方とは知りませんでした。最もお名前のみを存じ上げているだけなのですが。
こさと
2011/02/27 16:22

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