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zoom RSS 『原発・正力・CIA』メモ

<<   作成日時 : 2012/02/15 20:44   >>

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原発・正力・CIA
有馬哲夫

読もうと思っていて、やっと読んだ感じ。

すごく興味深い話なんだけど、正力批判じゃないとかいうエクスキュースはいらないんじゃないかと思う。
これ、やっぱりどう考えても批判の書だよね。批判されてしかるべきだし。
事実を述べるだけで、判断をしないというスタンスなのかなぁ。

ともあれ、以下、図書館に返すために付箋を剥がしながら書いたメモ

====

最初に興味深かったのは以下の文章だ。
「偶然が重なっただけでは歴史は動かない。起こったことが連鎖し、一定の方向性を持つような流れにならなければならない」36p
この2章の冒頭の文章は以下の「あとがき」の文章につながる。
「正力マイクロ構想」の挫折が、ノーチラス号の完成、アトムズ・フォー・ピース演説、第五福竜丸事件、アメリカの対日心理戦、保守大合同などと次々と化学反応を生み出した。
 筆者が魅せられたのも、この歴史的出来事を生み出す連鎖の複雑さ、面白さだ。読者に伝えたかったのもこれにつきる。特定の組織や人をことさら非難しよう、その秘密を暴きたてようという意図はないし、そのように書いたつもりもない。


読み終わっていまさらながら、「へえ〜」と思う。ぼくもそうだけど、『原発・正力・CIA』のひどさを確認するために読む人間が圧倒的に多いんじゃないかな。


で、あとがきをここまで紹介したので、ついでにこの続きを紹介すると「原発・正力・CIA」の三者はすべて、その存在を「賛美することはできないが、かといって否定することもできない」と書く。ぼくは3つともいらないと思う。存在することは否定できない事実なんだけど、その権力と行使および行使の方法は否定したいな。

原発は、いらないだろう、と、ぼくは単純に思う。
これは、3・11前の本だけど、3・11を経ても著者はそう思っているんだろうか?

正力は原子力を政治カードとして使おうとし、CIAは正力の影響力を使おうとする、それぞれの利害の中で近づいたり離れたりしながら。その過程が米国の資料をもとに解き明かされている。讀賣新聞側はこのように明らかになった過去について、何かコメントしているのだろうか?


本文の記述に戻ろう。1953年12月8日の国連総会におけるアトムズ・フォー・ピース演説が紹介されている(39p)。恥ずかしながら、知らなかったのだが、IAEAの設立も、この演説の中で提起されていたのだった。

日本の原発と原爆をめぐる動きは、ここから動きがとても興味深い。
陰謀史観は嫌いなんだが、本当に陰謀が渦巻いている感じがしないでもない。

その直後、54年の1月1日から讀賣は「ついに太陽をとらえた」という原子力の平和利用をテーマとした大型連載を開始47p。その背景には湯川博士のノーベル賞受賞をきっかけとする原子力ブームもあったが、AFP演説の援護射撃でもあった。

この同じ1月に米・国務省は「原子力発電の経済性」という秘密文書を日本政府に送付 43p。

そして、正力(讀賣新聞)は54年の8月に新宿・伊勢丹で「だれにでもわかる原子力展」を開催。これがすごく興味深いのは、この3月1日に第5福竜丸が被爆し、原水爆禁止署名が開始され、1年弱で3000万というすごい数字の署名を集めている、まさにその同じ時期に展覧会が開催されていることであり、そこには第5福竜丸も展示されていたとのこと(54p何がどのように展示されていたのかは知らないが)。この展覧会がどのような企画でどのような意図で行われたのかについての詳しい記述はこの本にはない。実際、どうだったのか知りたいところだが、この時代の背景を見ると、核兵器はだめだが、平和利用は促進しようという流れは強かったようだ。翌年の第1回の原水禁大会の宣言や母親大会などでの平和利用については肯定的に言及されている。

一方、学者グループは、やはりその同じ年の4月23日に原子力の研究は平和利用に限定するとして、民主・自主・公開の原則を打ち出す(43p)のだが、この間の原発推進の動きを見ていると、原子力村の中の学者は原発推進の金の渦の中で、このあたりの原則さえ、投げ捨てているように思えてならない。

また、同じ年の3月4日(第五福竜丸の被爆の2日後)に「原子力予算」が中曽根らの提案で衆議院本会議で採択されている。44p

同じ3月から4月にかけて、この事件を受けた国会審議では米軍の核兵器持ち込み問題が審議されている。52p

ちなみに、米統治下の沖縄では1951年には核兵器が陸揚げされ、AFP演説の12月には地対地ミサイルが正式配備されている。53p


とのあれ、この時期のヤマト側での原水爆禁止運動の盛り上がりと、それと切断される形というか、もしかすると、それも利用しながら平和利用を推進しようとする動きが活発になってきているというのが、すごく興味深い。同じ時間軸の中で、その両方が動いている、その動きの中に正力とCIAのタイアップがあるのだが、

それが成功したのは単に正力がメディアとして煽ったからというわけでもなさそうだ。日本共産党も、おそらく社会党も、この時期は平和利用に賛成しているはずだ。その後の原水禁運動の分裂の中で、原発問題に対するスタンスは明確に異なっていたものが、この福島事故を受けて、原水協も脱原発を明確に打ち出し、両者の違いは見えなくなっているが。

この本に引用されている正力ファイルには55年の原水禁運動の会議で正力の意を受けた日本テレビの柴田がCIAの主張の線で動いてくれたという記述もある。111p

そして1955年11月から始まった「原子力平和利用博覧会」。実はソ連も同様の博覧会を開催していたという116p。
米国側が目標としていたことは、
米国が平和利用に真剣に取り組んでおり、その先進的技術によって日本を含む日本を含む西側諸国に恩恵をもたらしたいと思っていることを日本人に伝えることであり、それによって反原子力・反米世論を鎮めることができればそれで十分なのだ(118p)
と記述されている。

これは日比谷公園で始まり、広島の平和公園でも行われ、その後3年間にわたって、全国20箇所で開催され、「反米・反原子力の世論を転換していく上で絶大な効果を発揮した」(123p)とのこと。本当に絶大な効果を発揮したのかどうか、それをどのように判定することができるかは微妙だと思う。CIAの報告文書としては、それが成功したと記述したいという力学は働くだろうし・・・。当時の人の意識について、覚えている人もそんなにいないだろうし。

ともあれ、米国側の目論見がそういうことだったというのは書類に残っているので間違いなく、それに正力=讀賣も乗ったということだろう。正力側のそのことを政界で位置を得るために使うという意向はすごく単純でわかりやすいものとして米国側にもとらえられていて、それは間違いなさそうなのだが、政治家であり新聞社の社主が実質的に米国の工作員として動いていたという事実さえも公表する米国の情報公開のシステムを日本の官僚組織も見習うべきだろう。このようにあとでほとんどすべてのことが公開されるというシステムができれば、すごく恥ずかしいこと外国の工作員として動くというようなことへのブレーキにもなりそうな気がする。

そして、正力がこの成功を米国にひけらかし、さまざまなことを要求し、CIAから嫌われていくというのも滑稽な話ではある。123-124p

141pからはディズニーが米国政府の意を受けて作成した『わが友原子力』について書かれている。この本のなかには米国内のどこかのディズニーランドのアトラクションの中にもそのようなものがあったと記述してあった(どこに書いてあるか忘れたけど)。   メモを書き続けていくと、233p〜のエピローグにあった。「潜水艦の旅」というジェネラル・ダイナミクス社と米海軍がスポンサーのアトラクションについて以下のように書かれている。(米海軍がディズニーのアトラクションのスポンサーになっているというのもびっくりだが)
 ・・・来場者が知らず知らずのうちにジェネラル・ダイナミクス社と海軍に対して良好なイメージを抱くように意図して作られていたとも言えるだろう。(略)「潜水艦の旅」は、『わが友原子力』など科学映画の一部や『ディズニーランド』などテレビ番組の一部と同じく冷戦プロパガンダのメディアでもあったのだ。この灰色と赤が黄色に塗り替えられ、単なる探検船になるのは30年近くたった1987年のことだ。



米国の国策とディズニーランドのアトラクションの関係というのもまた興味深い。いまのTDLのアトラクションはどうなのだろう。エレクトリック・パレードにはなんらか隠された意図があるのだろうか。あるいはミッキーやミニーの振る舞いにもなんらかの明確な政治的意図があったりするのだろうか。米国政府の文化戦略とディズニーについて書かれた本もあったはずだ。それをこの本のように米国の公開された資料から跡付けていくというのはすごく面白い。

145pで著者は、この『わが友原子力』もさきほど紹介した博覧会と同様に「日本でも連鎖反応を起こし、それが日本の大衆文化に大きな影響を与えることになる」と断定するのだが、具体的にどのあたりに影響が出ているのかということを、ぼくはこの本で読み取ることに成功していない。

読み終わってからしばらくして、このメモを書いているので本の流れはほとんど忘れているのだが、次に付箋がついているのはCIA児玉ファイル。河野太郎祖父の政治資金を児玉誉士夫が先物取引を使って得ている方法が描かれている。151p
当時の金額で9000万円の利益というのが、現在の価値に置き換えるといくらくらいになるのかわからないが、これだけの利益をえるという背景にはインサイダー取引的な要素もあったのだろう。また、次のページには児玉が隠匿していた旧日本軍の軍需物資を用いて、多大な利益をあげている姿が書かれている。このような歴史の汚点を公式の歴史に残していくことが必要なのだと思う。こんな風に国民の財産を私物化し、自民党の政治資金に流している連中が日本の右翼ナショナリストだというのも象徴的な話だと思う。

177〜185pには「ソ連から動力炉を入手していいのか」という節がある。正力が一方で米国のエージェントとして動きながら、ときに米国と対立もしながら、自らの位置を確立するために動いていく姿が描かれている。正力がどこまで本気で、このブラフのようなソ連からの導入計画を考えていたのか不明だが、少なくとも米国CIAは正力ならやりかねないと考えていたようで、結局、その圧力の中で正力は米国への要求を通していく。

ひどい話なのだが米国に対するこのような政治力というのは、現状の主流の政治家にはほとんど見られない。正力のそういう度量については、惹かれる部分がないわけではないなぁ。


216-217pにかけて、正力が民間主導で原子力を入れようとした経緯が書かれている。ここに、いまの福島事故をめぐる混乱の端緒を見ることもできる。この段階で原子力発電が引き起こす甚大な被害の想定がなされており、それを誰が負担するかという話がでてきている。現実にはここで<河野=官僚=慎重な導入派>が拙速な<電力会社=正力派>に勝ったとしても、今に至る事態はそんなには変わらなかったかもしれないとも思う。今の政府の原発再稼動に向けた反省のない拙速なやりかたを見ていると、本当にしょうがないと思う。

ただ、ここで正力が勝利して、民間主体・利益優先の路線がひかれたことが今回の福島原発事故の遠因になっているとはいえるだろう。そして、その事故賠償について電力会社を助けるスキームもここから始まっている。 讀賣新聞はそのことに自覚的である必要があるのではないか。

「TDLへの道」という節で先述のディズニー映画『わが友原子力』は1958年の正月に日本テレビで放映され大成功だったとのこと(218p)。やっぱりここでも、その大成功の根拠は示されていない。何を根拠にそのような評価がなされるのだろうか?

ともあれ、ここから日本テレビとディズニーの密接な関係が生じ、1983年のTDL開園に至ったという経過が簡単に紹介されている。

また、著者は1960年7月の原潜からのミサイル発射実験の成功前の段階で、「すでにアメリカは正力との共同キャンペーンで日本の原水禁・反米運動を鎮静化させることに成功していた」(235p)と書くのだが、この6月、日本社会での反安保闘争という反米闘争は頂点だったのではないか。ここでいう「共同キャンペーン」はどの時点での何を指しているのだろう?


「あとがき」の最後のほうで著者は「政府やスポンサーや圧力団体がメディアに働きかけるのは、どこの国でもあたりまえのことだ。一国の外交部門や情報機関ともなれば、少しでも自国に有利な世論を作る出すよう対象国のメディアを操作しようと全力を尽くすのは当然だ」と書くのだが、果たして、正力のこのような振る舞いは当然のこととして免罪されるものなのかどうか?自らの利権と権勢のために権力を振るい、あるときは米国の情報機関の意のままに動くというようなことをメディアはオーナーが許されるとしたら、なんでもありじゃないか。確かに米国は工作しようとするだろう。しかし、それに乗らないというのはメディアの人間として当然のことではないか。そこから便宜供与を受け、自らの会社をそれに使うというようなことがあっていいわけがない。







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【原発は本流ではなかった】原発・正力・CIA
ノーチラス号の進水から始まった連鎖は、第五福竜丸事件を経て、日本への原子力導入、ディズニーの科学映画『わが友原子力』の放映、そして東京ディズニーランド建設へと続いていく。その連鎖の一方の主役が正力であり、もう一方の主役がCIAを代表とするアメリカの情報機関、そしてアメリカ政府であった。(10ページより) ...続きを見る
ぱふぅ家のサイバー小物
2012/03/03 22:19

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