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zoom RSS 「「人権」の普遍性を掲げるナショナリズムという逆説」!という書評について

<<   作成日時 : 2012/12/16 05:16   >>

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FBで、知り合いが教えてくれた書評。

『ヴェールの政治学』李孝徳訳、みすず書房・3675円/ジョーン・W・スコット〈著〉


本はいつ読めるかわからないけれど、この書評は保存しておこう。

すごくいい書評だと思った。すぐれた本とすぐれた書評のコンビネーション。こんな書評は逆立ちしても書けそうにないけれども、保存して見本にしたいような書評。 それは現代がかかえる問題への鋭い提起であり、いま、私たちが考えなければならない視点でもある。

先日のattacカフェでちょうど話題になった話であり、ぼくが疑問に思った問いとも重なっていた。ぼくは「フランスのムスリム人口の0.01%にも満たない」という数字は知らなかったけれど、たぶん多いとは思えないその着用者がこんなに問題になるのはなぜだろうと思っていた。そのときもだいたいこんなことを教えてくれた人がいたが、ここでかなり納得できた。


みすずの紹介サイトhttp://www.msz.co.jp/news/topics/07689.html もいい。






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「「人権」の普遍性を掲げるナショナリズムという逆説」!


『ヴェールの政治学』李孝徳訳、みすず書房・3675円/ジョーン・W・スコット〈著〉Joan Wallach Scott
 1941年、ニューヨークでユダヤ系の家庭に生まれる。プリンストン高等研究所社会科学部教授(フランス労働史)。英語圏におけるジェンダー歴史学の草分け的存在。著書に『ジェンダーと歴史学』など。

■仏共和制の矛盾映し出した排除
   評・鷲田清一(大谷大学教授・哲学)

2004年、フランス議会は、公立学校において宗教的帰属を「誇示」するアイテムの着用を禁じた法律を可決した。10年には、公共の場で顔を覆い隠す服装を禁止する法律を成立させた。標的とされたのは、ムスリム女性の、前者ではヘッドスカーフ、後者ではブルカである。ブルカを装着している女性が、フランスのムスリム人口の0.01%にも満たないにもかかわらず、である。

人権先進国といわれるフランスが、服装の自由を否定してまで防禦(ぼうぎょ)しようとしたものはいったい何だったのか。なかでもイスラームのヘッドスカーフ(ヴェール)がまず標的になったのはなぜか。

ヴェールは、フランス人の多くにとっては、イスラーム文化の後進性と女性に対する抑圧(家父長制の犠牲)の象徴であり、イスラーム移民の「同化」の挫折の象徴であったが、ムスリムにとってはときに個人のアイデンティティの表明方法であり、ときに集団としての抵抗の防壁でもある。いやムスリムにとってはと言うのは不正確で、とうてい一括(くく)りにはできないほど多義的なものである。

にもかかわらず、ヴェールを一つの象徴として、イスラームを無理やり一つの型へと括ろうとするのは、それが「共和国」の理念、「ライシテ」(政治の脱宗教性)という国是の侵犯と映ったからである。

この問題の根には、すべての個人が同じであると仮定することで成り立つフランス特有の普遍主義、いってみれば「人権」の普遍性を掲げるナショナリズムという逆説がある。著者によればこれもまたまぎれもない一つの信仰なのに、普遍性を謳(うた)うがゆえに、これに従わない人たちの存在を事前に否認し、政治という交渉の場所から排除してしまう。

過剰な投影が錯綜(さくそう)するヴェール問題は、共和制もまた一つの信念体系であることに幕をかける。そこに透けて見えるのは、政治的平等と性的差異の矛盾という共和制の根幹の問題であり、フランス社会の歪(いびつ)なジェンダー体制であり(訳者の言うように、慰安婦問題が日本社会内部のジェンダー問題として論じられることも少ない)、深刻化する内政問題の堆積(たいせき)である。ヴェールはこれらを外部に転倒的に映すスクリーンなのであった。

著者はここから、「同化」という、何かを共有することで成り立つ普遍化(「われわれ」の拡張)ではなく、すべての人に共通なるものこそ「差異」であるという視点を対置する。「普遍」という名の統合は差異を削(そ)ぎ落とし、多文化主義ははてしなき相対主義にはまり込む。そのあいだで排除ではなく交渉を軸とする政治が求められているというのだ。「ヴェール」はもはや彼の国の問題ではない。

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