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zoom RSS 「アラブの春」の正体(重信メイ著)メモ

<<   作成日時 : 2013/04/13 19:32   >>

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タイトルがどうかなぁと思う。「***の正体」っていうのがもう、何かおどろおどろしい感じだし、自分だけは知っているというような上から目線を感じる。
中身はそれなりに面白いのだが。

そして、ぼくにこの著者名を見ると、どうしても彼女の母を想起してしまう。その刻印は彼女にとっても重いものがあるかもしれないが、想起してしまうのだから、それは否定のしようがない。

それから、同じ話の繰り返しも多すぎるように感じる。

そして、「欧米とメディアに踊らされた民主化革命」というサブタイトルも、ちょっと読む気を低下させる。本文を読めば必ずしもそれだけじゃないということがちゃんと書いてあるのだけど。

たとえば、「はじめに」ではこんな風に。
「アラブの春」が民衆運動に希望の光を与えてくれたことは間違いありません。ごく普通の人々が立ち上がったときに、政治が大きく変わる可能性を世界に発信できました


読み終わった段階で読書メーターに残したメモ
情報リテラシーをどうつけるかという本だということもできるだろう。重信さんによるアラブ社会についての、欧米のみならずアルジャジーラの報道の歪みの指摘は重要。しかし、リテラシーという意味では重信さんの情報もまた吟味する必要があるのだろう




〜〜〜〜〜〜
40pで著者はサミュエル・ハンティントンの「変革期社会の政治秩序」を援用して革命が起こる条件として「追いつめられて失うものがなくなったとき」というのだが、これはモラルエコノミーなどに書かれているようにそうではないと思う。あまりにも単純化しすぎといわざるをえないだろう。同様の話は218pにもでてくる。ぼくはハンティントンと言えば、「文明の衝突」くらいしか知らず、そこでの印象評価でいえば、彼を援用するものどうかと思うのだが、これを書いた頃の彼はもう少しましだったのだろうか。


モラルエコノミーについで、オリジナルを読んでしっているわけではなく、先日読んだ小熊さんの「社会を変えるには」での知見。その読書メモから再録
モラルエコノミー 458ー9p
 人間は困ったから立ち上がるというわけではなく、モラルエコノミーを侵されたと感じたときに立ち上がる。(この場合のエコノミーは経済よりも広い意味)
そのモラルエコノミーが発動するのはどういうときか、が問題なのだが、小熊さんはその秩序は時代や社会によって異なると書いているが、それを規定するものは何か、どのようにそれを把握するかということは書いてない。問題を提起するときにモラルエコノミーを意識すればいいのだろうが、それが何かをつかむのは非常に困難だ。


人が立ち上がるかどうかは、いくつかの条件の相関関係が規定するのだと思う。
1、あまりにひどい不正が行われているかどうか
2、立ち上がったときの弾圧はどの程度か
3、失うものがあるかどうか
4、モラルエコノミーに関する変数

それらの関係の中で立ち上がるかどうかが決まるのではないか。


55pでは「ムバラクはスケープゴートにすぎなかったということがわかってきっました」と断言するのだが、結果からすれば、そういえるかもしれないが、それは最初から意図されたものではないはず。にもかかわらず、このようにいってしまうことはどうなのだろう。

72pでは以下のように書かれている。
ハマスも権力を握ったとたんに、イスラエルとの闘いを一方的に停戦し、ガザ地区の住民のイスラム化に夢中になってしまい・・・。・・・。国際社会は民主的に選ばれたハマス政権を認めず、イスラエルはガザ地区を完全封鎖することによって、ハマスの統治能力を妨げたのです。
 そうした状況を見ているからこそ、エジプトやシリアのムスリム同胞団はイスラエルと友好的な関係を維持することに腐心しているのです。

まず、ハマスはほんとうに「イスラエルとの闘いを一方的に停戦し」たといえるのだろうか。生き残るために必要な宣言だった可能性はないのだろうか?

そして、この「そうした状況を見ているからこそ」というのが意味不明。また、「エジプトやシリアのムスリム同胞団はイスラエルと友好的な関係を維持することに腐心」というのも、どこまでそんな風にいえるのか、何を根拠に言えるのかがわからない。

ハマスも同胞団の一部であるなら、なぜ、その他の同胞団はハマスの窮状を看過できるのだろうか。


ただ、以下の2章の結論は納得できるものだ
 イスラム社会に特有の封建的遺産のシステムを利用し自分たち一族や仲間のためにだけ使おうとする権力者たちと、彼らを批判し、古き良きイスラム社会をもう一度実現させようとする人たち、そして彼らとは別に、リベラルな考え方を取り入れて、社会を民主的にしていこうと考える人たち。こうした考え方が入り交じっているのがいまのアラブ社会の姿なのです。




リビア内戦を伝えるメディアの変更に関する重信さんの記述は、その通りだと思う。それは、以下のように書かれている。
 メディアが伝えるカダフィ政権の姿が歪められていたことは間違いありませんが、その一方で、カダフィ政権もかつて表明していたような理想国家がつくれなかったことも事実です。国民の意思を尊重した社会主義的政策というにはカダフィは専横が過ぎました。(以下、具体例が続く)



そして、興味深いのがアルジャジーラが変質したという話。これが、この本のなかのさまざまな場所に書かれている。カタールの政治的移行にそった形での報道になってしまっているという話(114p)や、報道姿勢に抗議して職員が大量に辞職した話(どこに書いてあったかわからなくなった)。カタールの利害がダガフィの失脚を求めたのだという。ガダフィに失脚して欲しいというカタールの意向が、リビアの内戦を革命のように報道した理由だという。

そして、第三章の結語では以下のように書かれている。
「アラブの春」とひとくくりにされていますが、そのすべてが「革命」だったわけではありません。リビアの例はその象徴的なものだったと思います。116p



その後のリビアは国が分裂状態だという。シリアもかなり似たような形になりそうだ。

第4章ではあまり報道されないアラビア半島の国々の「アラブの春」について書かれている。これが報道されないことの背景にもまた、政治が動いている。

アリジャジーラがサウジアラビアを批判できないという話は第5章145pにある。
サウジの今も残る奴隷制度の話もある。154p
それが欧米ではあまり問題にされないことも。156p

第6章はシリアの話。
シリアについて、著者は以下のように書く。
 ほかのアラブ諸国と比べると、経済格差は小さく、貧困層にはお米や砂糖など現物支給で支援するなど福祉は充実・・・、エジプト、チェニジアのように支配勢力に腐敗はありますが、政治的には反イスラエル、パレスチナ支持を明確に・・・。腐敗をのぞけばある程度満足できる国だった・・・。「発言の自由」はかなり制限されていましたが、ほかのアラブ諸国も似たような状態・・。
 では、なぜ、あるときからシリア情勢が不安定になっていったのでしょうか。タイミングを考えればその理由が見えてきます。
 ・・ガダフィ政権が倒されてから、メディアが突然、シリアに目を向け始めたのです。・・・181p

そして、その世界のメディアの注目によって、国内の反政府勢力が活発化。それが不安定になった理由だというのが著者の言いたいことなのだろうが、なぜ、このタイミングだったのかはわからない。

210pからは再び、アルジャジーラの話がでてくる。以下のように書かれている。
アルジャジーラはあたかもアラブ民衆の側に立って、「革命」を支持するような報道をしています。たしかにチェニジア、エジプトでの革命ではまさにその通りのことをやっていましたが、先述したようにリビアでの内戦以降はかなり強引な反政府報道に傾いてきました。211p


そして、6章のこのあとがよくわからない記述になっている。213pの途中でアルジャジーラの話が突然、トルコの話に変わる。この脈絡がわからない。このトルコの肯定的評価については、なかなか興味深いのだけれども。


これって、見出しのつけ方とか、同じ話の繰り返しについても、編集サイドの問題があるのではないかと思う。

227pでは「ソーシャルメディアは国家権力が個人情報を収集するツールになる危険」という指摘をしている。確かに、ぼくの何を考えているかというような個人情報はダダ漏れ状態だ。しかし、同時に複数の他者にメッセージを思いとともに伝えるために有効なメディアであることも間違いない。このバランスをどう考えたらいいのか。

FBなどの「ソーシャルメディアによる個人情報の吸い上げは、国家による個人情報収集の民営化」という指摘に社会運動はどう答えることができるだろうか。

その思想の取締りのような事態について、ソーシャルメディアを使うか使わないかではなく、別の方法の反撃があるはず。

このような旧態然としたソーシャルメディア批判とかを見ると、著者の向こう側にその母親の影を感じてしまうのはうがったみかたかもしれないけれども。


というわけで、読書メモを閉じるのだが、報道されないアラブの状況に関する話はとても興味深い。もう少しちゃんとした編集がされていれば、もっといい本になったのではないかと思う。



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