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zoom RSS 『ああ玉砕―水木しげる戦記選集』メモ

<<   作成日時 : 2013/06/19 06:42   >>

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『ああ玉砕―水木しげる戦記選集』 >> 図書館で借りたのだけどすごい!!

この本に掲載されている最初の『セントジョージ岬 ―総員玉砕せよ―』は読み切り短編。
水木しげるの戦記物ドキュメンタリーの集大成と言われる長編『総員玉砕せよ!!聖ジョージ岬・哀歌』と同じ題材だが、ラストは違うらしい。こっちも図書館にあるので予約した。

次は『硫黄島の白い旗』
『白い旗』 水木しげる (講談社文庫)というのもあるのだが、同じ作品かどうか不明。
この件に関しては諸説あるらしい。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2687/jinjiotu/jinji17.html など。
水木さんは自分の戦記は90%真実と言っているとか。



『地獄と天国(後編)』の最後の台詞にまいった。

〜〜以下、引用〜〜
ぼくは何よりも
我われとは別の「考え方」をした土人と言う人間が
この地球にいると言うことを知ってびっくりした……

そして
長くボクの心を
捕らえた
………

それは
この地球に
生きるには あの
野生に満ちた土人の
生活こそがマ・ト・モ・
な生活ではなかろうかと言うことだ
文明社会は
病んでいる……

このセリフが使われているシーンで、壁に張り紙がある。そこには
「偉大な土の人、土人」
と書かれている。
184p

〜〜引用ここまで〜〜

すごくいい本だと思うのだが、初出一覧が見つからないのが残念。
この漫画、いつの作品だろうと思って調べた。
http://www18.ocn.ne.jp/~komichi/mizuki/nempyou.html によると1979年
1981年にパパラギの翻訳がでる2年前だ。

この本に掲載されているロングインタビューには以下のような話も
 土人サンとはよくいったものだと水木しげるはいう。本当に土の人、大地の人で、これを現地人なぞと書こうものなら東南アジア的になってまったくだめだともいう。

だけど、水木さん、東南アジアにも先住民族はけっこういるんだよと教えてあげたい気もする。
ともあれ、続きも引用。
すなわち、木や鳥のように本当に自然の人間で、これこそ人間の生活だと認めているのだ。
「土人サンの部落に行くと実に楽しかった。結局、土人サンたちと気が合ったということかな。わたしも向こうに行くと開放されたような気持ちになったし、彼らもどうやら同じだったらしい。・・・」192-3p


しかし、同時にこの本の最後に収録されている「戦争と日本人(『小学六年生』掲載1991年)」では、その「土人サン」たちの酋長が3人も日本軍から殺されたことを、あとになって聞かされるシーンも出てくる。


再びロングインタビューから
「結局、あの戦争(日中戦争から太平洋戦争まで)は日本の領土拡張が狙いで、もともと悪い考えから出発している。与えるんではなく、了解無しに他人の土地を奪うんですから、土人サンたちも何が何だかわからない態だった。小学館の『小学六年生』に書いた『戦争と日本』では、戦争に対するわたしの想いを正直に描いた。(中略) しかし、子どもたちに戦争の真実を話しすぎてもイカンとも思う。人間は誰でも生きたいし、幸福になりたいのだ。それを横から手を出して奪い取ることは、神サンでもしてはいけないこと。国と国、人間と人間、隣近所は仲良くすべきだと描いた」194p


この視点は明確だ。しかし、貸本時代の漫画にはこの視点は明確には描かれていないようにも思える。戦後の歴史の中で醸成されてきた思いかもしれない。


『娘に語る お父さんの戦記』から水木語録
植物や石は平穏に暮らしているのに、なんで人間だけがのたうち回らねばならんのだろう。木や石みたいに人間も、よその国をとったりなんかせずにじっとしていればいいのだ。190p



この本の最後に綿引勝美さんが【水木しげるのもう一つの山脈 「戦記まんが」の魅力】という文章を書いていて、そこで兎月書房の社長から「少年戦記」の責任編集を担当させられた水木しげるという話とその巻頭の文章を紹介してる。ここには私の感覚などとは全く異なる、水木さんの日本人と日本という国家への思いと不戦の誓いが込められている。このアンバランス加減が水木さんを形成しているような気もする。水木さんの中ではそれがアンバランスではないのだろうが。以下、水木さんの文章。発行年は書かれていないが、兎月社という貸本屋系の出版社があった時代の話だ。
「この少年戦記は主として太平洋戦争の戦記を紹介するものです。これによって諸君は戦争というものがどんなものかを知られるでしょう。日本人は戦争にまけてから自分達の住んでいる『日本』を忘れかけています。日本は強く、そして良く闘ったのです。戦争は二度とすべきではないと誰もが考えています。そういう平和な戦争のない日本は一体誰が作るのです。アメリカでもソ連でもありません。我々日本人が作るのです。
 もう少し『日本人』というものに自信をもちましょう」 405-6p

とはいうものの、この「日本は強く、そして良く闘ったのです」という価値観はこのあとで明確に転換している。

そして、1969年が水木さんの戦争まんがの転換点だと綿引さんは書く。ここで紹介した水木さんの「良く闘ったのです」という評価はその転換点以降の作品では、そのようには描かれていないのではないかとも思えるが、ここは微妙なところでもあるだろう。
ともあれ、その転換点はその年、ビッグコミックに発表した『にがい朝食』だったという。そして、以下のように書かれている。
水木が戦場で体験した悲劇の入り口を描いたものだったが、その戦争への怒りを実録戦記として1970年に描いた『敗走記』への導入として、記念碑ともなる作品だったと記憶する。

とはいうものの、名前の掲載されていな「あとがき」(407p)の著者(綿引さんだと思われる)は貸本屋時代から水木の戦争まんがは異色であり、そこにはヒーローが登場せず、敗者を徹底して描いているとし、自らの戦争体験を書こうとしなかった貸本屋時代の作品にも「水木独自の眼があったと今さらながらに感動した」という。

このように書かれているのだが、この本に掲載されている「駆逐艦魂」や「海の男」にはヒーローはちゃんと描かれていると思う。それらは死にゆく主人公ではあるが、間違いなくヒーローとして描かれている。それに対して、その後の作品では、「本当の戦争まんがは水木サンにしか書けません」と本人が言っていたという彼にしか書けない、目の前で、理不尽な命令もあって人がどんどん死んでいく悲惨な、本当に悲惨だとしかいいようがない戦争の姿が描かれている。

「良く闘ったのです」という価値観が明確に否定されているのは前述の『戦争と日本』という子ども向けの雑誌に書いたまんがだ。

そこではねずみ男に侵略戦争について語らせている。
朝鮮半島や中国や東南アジアにかけた迷惑の大きさに国民は驚いた、それらの隣近所とは、仲良くすべき、だとした上でねずみ男は以下のように語る。
言うなれば、「おれは強いからおまえたちの住んでいる家もおれの自由にするんだ」……と、

かってに隣の家に、土足であばれこんだようなものです。

日本刀をかざして、いきなり押し入られた家は迷惑ですネ。

戦前の日本には、隣近所と仲良くする、という考えはなかったようです。
おれは強いから「支配」するのだ、という考え方だったようですネ。

そのころは中国人を「チャンコロ」と言い、

朝鮮半島の人を「チョーセン」とよんで、

馬鹿にしていましたネ。

当時の教育は、小学校の頃から、

『教育勅語』とか『修身』と言う学科できたえられたのです。

中学に入ると『軍事教練』と言うのがあり
(略)
”教練”という名で奇妙な心にさせられた。



このセリフのあと、教練のシーンになり配属された軍人が以下のようにどなるシーンが描かれる。

「大和魂をもったやつが人間で、後は虫けらだー―っ。」


これって、あの排外主義デモの奴らにそっくりじゃないかと思う。


このまんがのラストで、水木は自分を登場させ語る。
日本が朝鮮半島を統治していたころの、非人道的な行為、

また、中国で行われた1千万人以上の殺りく。

そうしたことを、正直に反省するのが、

世界に通用する日本人というものだ。

人間はだれしも生きたいし、幸福になりたいのだ。

それを横から手を出して、禁ずるようなことは、

たとえ神さまでも、してはいけないことだ。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ここで紹介している「子どもたちに戦争の真実を話しすぎてもイカンとも思う」という水木さん。ここは微妙な部分、というつっこみを書くのを忘れてました
tu-ta
2013/06/22 13:17

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