今日、考えたこと

アクセスカウンタ

zoom RSS 『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』 (想田和弘著・岩波ブックレット)メモ

<<   作成日時 : 2014/02/02 04:56   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

橋下現象の分析や自民党の最悪な憲法草案の分析の多くは既知という感じなのだが、そこから導かれる後半の「日本人が民主主義を捨てたがっているのではないか」という分析が白眉。本当にそうなのかどうかはもう少し検証が必要だろうし、だとしたら、その対抗手段がここに書いてあることだけでは物足りないが、そこはもっとみんなで知恵を出し合うべきところなのだろう。 


https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708850/top.html から以下、部分引用
3.11を経て,なぜ民主主義の根幹を否定するような改憲を掲げる安倍政権を迎えてしまっているのか.
 想田さんは,日本の現状を「無気力・無関心の中で進む『熱狂なきファシズム』」ととらえます.為政者の権力を市民自らがコントロールするはずの民主主義というシステムが形骸化し,為政者の権力を際限なく拡大する方向に,市民自らが突き進んでいるのではないか…….そうした強い問題意識が本書の基底に

目次
はじめに
第1章 言葉が「支配」するもの――橋下支持の「謎」を追う
第2章 安倍政権を支えているのは誰なのか?
第3章 「熱狂なきファシズム」にどう抵抗するか
おわりに



橋下現象の分析で、興味深かったのが、彼のやりかたと彼を支持する人間の心情。「民主主義は感情統治」という認識を持つ橋下と感情を統治されることを求める支持者(統治されることを求めるというぼくのおおざっぱなまとめ方は間違ってるかもしれない)。橋下が論理ではなく、人間が(潜在的にも)もっている感情に呼びかけることに長けていて、そこに反応する人間がいたということなのだろう。

例えば、君が代の口元チェックにつっこんだ毎日の女性記者が論理的には正しいのだが、新聞記者というエリート職業への反感やマスコミへの不信感、あるいはミソジニー(女性嫌悪)感情、あるいは単に誰かをいじめたい気分に駆られていた人々は、彼の論理ではなく「演出する感情」に波長をあわせやすかったというのが想田さんの分析。(19-21p)

しかし、いろんな問題で橋下の人気にも陰りはでてきていて、これが書かれた当時から考えると、彼を支持する人はかなり減少しているだろう。そこには微妙な時代の気分、みたいなものもあるように思う。

橋下の感情統治がうまく機能しなくなったのは何か、というようなところまで、つっこんで分析してくれたら、このブックレット、もっと面白いものになっていたかなぁと思う。ま、ここまででもけっこう面白いんだけど。

この橋下現象を分析した1章の最後に書かれているのが、彼を批判する言説の多くもまた貧困であるということ。その使い古された言葉の数々が若い人たちには届いていないという。確かにそういう側面はあると思う。では、どんな言葉が求められているのか。ここで想田さんは以下のように書く
紋切り型でない、豊かでみずみずしい、新たな言葉を紡いでいかなくてはなりません。守るべき諸価値を、先人の言葉に頼らず、われわれの言葉で編み直していくのです。それは必然的に「人権」や「民主主義」といった、この国ではしばらく当然しされてきた価値をそのものを問い直し、再定義していく作業にもなるでしょう。25p
こんな風に抽象化していわれると、もう頷くしかないのだけど、これ、かなりハードルの高い作業でもあるなぁ。そして、再定義した言葉もまた、検証され続ける必要があるだろうし。


『第2章 安倍政権を支えているのは誰なのか?』では民主主義を維持するために努力が必要だということが提起され、それが放棄されているのではないか、と想田さんは問題を立てる。

ここで思い出すのはヴェーバーの以下
「人間の行為を直接的に支配するものは、利害関心(物質的ならびに観念的な)であって、理念ではない。しかし、「理念」によってつくりだされた「世界像」は、きわめてしばしば転轍機(ターンテーブルのルビ)として軌道を決定し、その軌道の上を利害のダイナミックスが人間の行為を推し進めてきたのである。」


ある意味、考えない方が「楽」というありかたは「自然」なのかもしれないとも思う。そこをどう超えていくことができるのか、転轍機を動かすために何が必要なのか。これへのひとつの解決策はブックレットの3章でも提起されるのだが・・・。

話を戻そう。『安倍政権を支えているのは誰なのか?』という問いに関して、想田さんは以下のような思想的傾向があるのではないかと書く。
「首相(や政治家)は私たち庶民と同じ凡人でよい(それが民主主義だ)」というイデオロギーです。もっと身も蓋もない言い方をするならば、「みんなで無知でいようぜ、楽だから」というメッセージです。つまり彼らにとって、政治家のレベルが低いことは好ましいことであり、むしろそのことを望んでいるのです。


そして、幼稚な維新の会が54議席も集めたことについても、その文脈で語られる。
しかし、レイシストや歴史修正主義者たちも自分が学びたい方向についてのみだが、情報を集め、分析し、政策を理解しようとしているようにもぼくには思える。彼らもまた、少数派なのかもしれないが。というように考えると、想田さんが「絶え間ない勉強と精進を放棄した人々」というように問題をたてるのは少しずれているようにも思えてくる。レイシストや歴史修正主義者たちが方向を誤ることの背景には、勉強不足とは別の理由があるように思えてしまう。

そして、レイシストや歴史修正主義者たちと、それを支持し投票する人々を区別して考える必要もあるかもしれない。

正直、自分の中にも確かに考えるのが面倒とかいうことはある。そして、民主主義には手間ひまがかかる。
そのめんどくささをどう引き受けていくか、という問題意識は共有できる。


『第3章 「熱狂なきファシズム」にどう抵抗するか』で想田さんは「熱狂なきファシズム」の特徴について以下のように説明する。
「真に重要な問題が議論の俎上に載せられぬまま選挙が行われ、大量の主権者が棄権するなか、なんとなく結果が決まってしまう」というものです。言い換えれば、選挙が「私たちの社会はそういう方向に進むべきか、重要な課題を掲げ、意見を摺り合わせ、決定するための機会」として全く機能していない。それでも勝負の結果だけは出るのです。

 結果が出た以上、選挙戦でスルーされた重要課題も、あたかも議論され決着がついた事項であるように、勝者によって粛々と実行されていきます。よって、誰も気づかないうちに、すべてが為政者の望む通りに何となく決まっていく。
 「熱狂なきファシズム」とはこのことです。
 恐ろしい想像ですが、たぶんこれは偶然そうなったわけではない。・・・安倍首相とその取り巻きたちは、おそらくこうなることを明確に狙い、戦略を立て、粛々と実行してきたのだと思います。麻生発言は「失言」などではなく、安倍自民党の本音であり戦略なのです。52-53p


そして、想田さんはこの背景に「消費者民主主義」という病があるのではないかという。
興味のわかない、そそられない政治(家)に参加(投票)する気になれないという話だ。私に興味をもって欲しければ、そっちが変わりなさいというありかた。

で、それにどう抵抗するか、という話になる。
直接的な対処方法として、「ワーワー騒ぐ」とある。
しかし、問題は「ワーワー騒ぐ」人がいないことなので、これは対処法にはならないと思う。
どうすれば、「ワーワー騒ぐ」人が増やせるのか、が語られなければあまりそのことを語ったことにはならないのではないだろうか。

その上で、根本的な対処法として書かれているのが以下
私たちが消費者的病理に陥っていることを認識し、
一人ひとりが民主主義を作り上げていく、あるいは守っていく主体になる覚悟を決めること
それが第一歩だというのだが、このブックレットを読む人はすでにそういう覚悟を持ちつつある人で、その外の人にどう影響力を及ぼすことができるのか、ということが必要だと思うのだが、どうなのだろう。


そして、本文の結語は以下
「熱狂なきファシズム」に抵抗していく究極の手段は、主権者一人ひとりが「不断の努力」をしていくことにほかならないのだと信じています・
それは否定できないのだけれども、「不断の努力」に向かうきっかけが、現代社会にあまりにも見えないという現状にどこから手をつけていくのか、ということが問われなければならないのではないかと思った。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
都知事選挙と民主主義について
FBで他の人の近況に書いたコメントにちょっと加筆してこっちにも残しておこう。 〜〜〜〜 【「雇用特区もTPPもアベノミクスも自分に有利と思っている人達がメジャーなのでしょうか。」というようなところまで・・・そんなレベルで議論できたら、多数派を取れていたことでしょう】とコメントしている人がいて、それへの反論として以下。 〜〜〜 そこが疑問なのです。そもそも、そんなレベルでの議論を人々が望んでいるのかどうか、なぜ、都民は石原を何回も当選させ、前回の選挙では猪瀬を選び、今回は桝添を選んだ... ...続きを見る
今日、考えたこと
2014/02/10 00:02

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

トップ頁の右上に広告が入るようになっちゃいました。それがいやな人はさらに追加してお金を払いなさいとのこと。というわけで、この広告クリックしないでください(なんて、けなげな抵抗)。==============ブログ内ウェブ検索

ブログ内 を検索
『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』 (想田和弘著・岩波ブックレット)メモ 今日、考えたこと/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる