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zoom RSS 障害の「ICFモデル」と「条約モデル」(東俊裕さん)

<<   作成日時 : 2016/03/24 03:03   >>

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障害の「ICFモデル」と「条約モデル」(東俊裕さん)

『くまもと わたしたちの福祉』第68号 2016年1月発行から
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以下は熊本学園大学付属社会福祉研究所のサイトにあるPDFをテキスト化して。HTMLのタグ付けしたもの。
http://www3.kumagaku.ac.jp/research/sw/syuppan


テキスト化に際して、文章途中の改行を削除し、段落や節ごとに空白行を挿入。
「本研究所」という部分を「熊本学園大学付属社会福祉研究所」に変更。
注の最後のURLも有効なものに変更。

社会モデルとICFの関係を知りたくて、検索して、もうその目的通りの文章があって、本当に助かりました。東さんに感謝!!最後に少しぼくの感想も書いてます。

自分用の無許可のテキスト化で保存のためのブログ登録なので、読みたい人は必ず上のPDFから読んでください。ミスタッチなどで原文が変わっている可能性もあります。
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障害の「ICFモデル」と「条約モデル

熊本学園大学付属社会福祉研究所 研究員  東 俊裕(障害法学)


1 障害の医学モデルと社会モデル

 障害をどのようにとらえるかについて、医学モデルと社会モデルという対立した見解が存在する。しかし「ICF国際生活機能分類一国際障害分類改定版一」(以下「ICF日本語版」という。)*1では、ICFが「これらの2つの対立するモデルの統合に基づいている」と自らを位置づけたうえで*2、障害者に関する専門家のみならず、障害者自身や家族を含めた様々な方々の「共通言語」として大きな意義があるとしている*3。
 とすれば、障害者権利条約が示す障害の社会モデル(条約モデル)と言われるものも本質的にはこのICFの範疇に統合されるものとして位置づけられるのか、きわめて重要な問題となる。


2 国際障害分類(ICIDH, 1980)

 ところで、医学モデルとして批判を受けてきたWHOの国際障害分類(ICIDH, 1980)について述べている「WHO国際障害分類試案〈仮訳〉」*4では、自然に停止したり、予防又は治療によって大きな影響を受けるような疾病は傷病全体の中では一部分を占めるだけであり、実際にはこの種のカテゴリーには入らない諸疾病の後遺症の重要性がますます増大してきている状況下においては、「病因→病理→発現」という一連の系列としての疾病概念に基づくICD(国際疾病分類)のようなモデルでは人々が保健システムへの接触を求めるに到る諸問題の全領域を反映することはできないという問題意識のもとに策定されたことが説明されている。
 
 そのうえで、疾病そのものとは異なる疾病の諸帰結を測定するものとして「疾病→機能障害(形態異常を含む)→能力障害→社会的不利」という疾病以外の独立した3つの異なる次元の構成要素からなる構造を国際的な障害の分類として提示している。
 
 
3 国際生活機能分類(ICF, 2001)の誕生と特徴

 しかし、疾病の諸帰結として因果列で示される社会的不利に影響を与える要素として社会の有り様の問題は全く考慮されていないことが医学モデルであると批判されてきた。このことを受けて、WHOはこの改訂作業を続け、2001年WHOの総会で承認されたのが「International Classification of Functioning,Disability and Health(ICF)」である。なお、ICF日本語版によると日本語の表記としては、ICFでは前向きな表現をとるべきとして「Disability」に当たる「障害」は省略されたとのことである。

 このICFの特徴は、健康状態を測定する様々な要素として、あらたに背景因子のひとつとして環境因子が取り入れられ、ICIDHに示されるような一方向の因果列的な関係ではなく、それぞれの要素が相互に作用する関係として位置づけられている点にある。

 また、ICIDHにおける構成要素について、負の側面だけでなく積極的側面も射程範囲に収められるよう「疾病」は「健康状態」、「機能障害」は「心身機能・身体構造」、「能力障害」は「活動」、「社会的不利」は「参加」という言葉に置き換えられ、これらに影響を及ぼす要因として、「個人因子」のみならず「環境因子」が加わっている。
 
 そして、こうしたことを根拠にICFは「2つの対立するモデルの統合に基づいている」と自らを位置づけているのである。
 
 
4 障害の社会モデル

 これに対して、障害者権利条約*5 では、「障害」の社会モデルと言われるものが前文(e)に、また、これを踏まえた「障害者」の概念として第1条目的の後段に規定が置かれている。このうち、前文(e)の原文は「Recognizing that disability is an evolving concept and that disability results from the interaction between persons with impairments and attitudinal and environmental barriers that hinders their full and effective participation in society on an equal basis with others,」とされている。
 
 これに関する日本政府の公定訳は、「障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め」とされている。
 
 英語正文の日本語訳であるため、分かりにくい点もあるかと思われるが、英語正文を文節的に考えると、まず、障害は、「態度及び環境による障壁との間の相互作用によって生ずる」とされており、その上で、hindersがinteractionを修飾しているという前提で考えると、「相互作用」の内容として「これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げる」ものであることを指している。
 
 これが障害者権利条約の示す障害の社会モデル(条約モデル)と呼ばれているものである。もっとも、障害は「相互作用によって生じる」として障害の発生原因を示すに留まり、相互作用によって生じるもの、すなわち障害がなんであるのかについて明示するまでには至っていない。
 
 したがって、全体としてみると、障害の定義規定とまでは言えないものの、障害のとらえ方、特にその発生原因について社会的障壁に重きを置いて分析する視点ないしは考え方を示しているものと把握すべきである。
 
 ただ、人権保障の観点から、後記のように従来の医学モデルに対する反省を踏まえて規定されたものであることや第1条目的の後段に障害者の範囲が示している内容に鑑みると、障害者権利条約は障害について、機能障害を有する者が被る社会的不利を基本に置き、そのうえで、その社会的不利の発生原因に言及したものであると考える。
 
 
5 人権条約において規定されたことの意味

 障害者権利条約は、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有の促進、保護、確保等を目的とするものである(第1条)。こうした目的を持つ人権条約が求められたのは、形式上人権の享有主体とはされても、「障害」ゆえに事実上様々な人権を享有できない状態に置かれているといった現実が背景にあるからである。そうすると、人権の享有を阻害する「障害」が何であるのかを解明する必要に迫られることになるのである。
 
 しかしながら、従来の医学モデル的な「障害」の把握では、社会的不利の原因が機能障害や能力障害という個人因子に帰結されるがゆえに、障害問題は、そもそも人権問題として把握されなくなるのである。なぜならば、そもそも人権保障の問題は、国家や社会の個人に対する対応を問題にするものであって、その対応のありよう自体に焦点が向けられるものであるが、医学モデルに基づく障害観では、国家・社会の個人に対する対応における問題点は何も考慮されないばかりか、問題が個人の状態に帰責されるからである。このように、こうした障害観に基づいて、障害者の人権問題は非顕在化され、人権の享有をますます困難にしてきたという歴史的背景を前提として、あらためて人権確保といった観点から、「障害」をどのように捉えるのかという問題に一定の回答を出す必要に迫られることになったわけである。
 
 こうした背景をもとに国連総会は、2001年WHO総会で採択されたICFを考慮しつつも、それとは別個の考え方を織り込んだ障害者権利条約を2006年に採択したのである。
 
 以上を総括すれば、条約モデルは、人権確保の観点から「障害」を、人々の態度や環境といった社会的障壁との相互作用によって生じるものとして捉え、その相互作用によって生じる社会的不利を障害の概念の中核に置くことで、これまで人権という観点で問題とされてこなかった国家や社会の対応の負の側面である社会的障壁を明らかにし、これを除去することによって人権を確保しようとしたものであると言える。
 
 
6 ICFモデルと条約モデルの異同

 以上を踏まえて、両者の異同をいくつかの切り口から明らかにすることにする。
 
1)目的、領域
 ICFの目的として掲げられるのは、健康状況と健康関連状況を記述するための統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することにあるとされる。これに対して、条約モデルは、人権の分野においてその確保を目的とするものであり、人権享有が阻害されるといった社会的不利の原因を社会的障壁の存在に力点をおいて社会の有り様を分析する視点を提供するものであると言える。
 
2)分析の対象
 したがって、ICFは、障害者個人の分析に焦点を当てることになるが、条約モデルは社会の分析に力点が置かれることになる。社会そのものをいくら分析しても個人の状況を把握することが出来ないのと同様に、個人の状況をいくら分析しても社会の対応そのものを分析することは困難であって、両者が一方を兼ねることは困難といわざるを得ない。
 
3)構成要素
 ICFにおいては、4つの構成要素が掲げられている。すなわち、「生活機能と障害」として、@「心身機能と身体構造」、A「活動と参加」、「背景因子」として、B「環境因子」、C「個人因子」の4つである。そして、これらの構成要素は独立してはいるが、お互いに関連する(相互作用)要素として位置づけられている。
 他方、条約モデルにおいては、2つの構成要素が掲げられている。すなわち、@「機能障害を有する者」、A「態度や環境の障壁」の2つである。この関係については、ICF同様、相互に作用する関係として位置づけられている。この2つの要素は、ICFの4つの要素の中で重なり合う部分もあるが、力点の置きようは自ずと異なっている。
 
7 結論

 以上に照らせば、ICFと条約モデルは異なる目的の下に、異なる分野を対象として、さらに、その判断枠組みも大きく異なる手法が用いられていることが明瞭である。したがって、両者概念は、どちらがどちらを包摂するというような関係にはではなく、それぞれの分野で用いられる別個の概念、手法として位置づけるべきである。
 
*1 障害者福祉研究会『ICF国際生活機能分類  一国際障害分類改定版一』中央法規、2002
*2 前掲1,p18.
*3 前掲1,「ICF日本語版発行によせて」ほか
*4 厚生省大臣官房統計情報部編集『WHO国際障害分類試案〈仮訳〉』財団法人厚生統計協会、1985
*5 外務省「障害者の権利に関する条約 (略称:障害者権利条約)」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

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個人的感想
いままで平気で医学モデルを振りまいていた人たちがWHOの威信を借りて、何の反省もなくICFを使ってるのがいやだなぁと思っていて、ところで、ICFを障害の社会モデルの視点からどう見ることができるのだろうと、けっこう長いあいだ考えていたものの、それを文章化する能力はもちろんぼくにはなかった。
そこで、さっき思い立って、検索したら、ストライクど真ん中の東さんの文章がPDFででてきて、感激してテキスト化してHTMLのタグをつけた。

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