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zoom RSS 「自立を混乱させているのは誰か」メモ

<<   作成日時 : 2016/05/22 10:19   >>

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読後の第一印象としては、断定的なことを書いてる割には、ちょっとどうかなぁと思える記述が多い、という印象。

ただ、こんな感じでの概念の整理や制度の検討、とりわけ障害者権利条約の批判的検討はほかではあまりやられていないので、必要な文献だろうとも思う。

以下、生活書院のHP
http://www.seikatsushoin.com/bk/104%20shogaishanojiritsuto.html
から

愼 英弘【著】
自立を混乱させるのは誰か
障害者の「自立」と自立支援

「生き甲斐の自立」や「自立した日常生活」等々、意味も概念も曖昧なまま使われることも多い「自立」。さまざまな意味で使用されている「自立」の概念を整理し自立の構造を明らかにするとともに、自立支援とはどのような自立に対してどのような支援をすることなのかを探る。
 

【目次】

はしがき

第1章 障害者の自立とは何か
    第1節 「自立」はどのように使われてきたか
       (1)自立と自活
       (2)なぜ「自立」を強調するのか
    第2節 自立に対するさまざまな見解
       (1)「自立」のさまざまな使われ方
       (2)「自立」のいくつかの定義づけ
    第3節 社会的自立と自立生活
       (1)社会的自立
       (2)自立生活
    第4節 伝統的な自立概念と自己決定
       (1)目標とされる「自立」は?
       (2)伝統的な身辺自立
       (3)伝統的な経済的自立
       (4)いわゆる自己決定の自立
    第5節 自立支援とは
       (1)自立支援
       (2)自立と自己実現

第2章 自立の構造と自立支援
    第1節 問題の所在
       (1)自立という語の嚆矢
       (2)曖昧な用いられ方の自立
    第2節 自己決定と自立の種類とその支援
       (1)自己決定
       (2)身辺自立
       (3)経済的自立
       (4)職業的自立
       (5)職業経済自立
    第3節 生活スタイルとしての自立
       (1)自立生活
       (2)社会的自立
    第4節 自立の構造
       (1)自己決定と他の自立との関係
       (2)身辺自立と他の自立との関係
       (3)経済的自立と他の自立との関係
       (4)職業的自立と他の自立との関係
       (5)職業経済自立と他の自立との関係
       (6)自立生活と他の自立との関係
       (7)社会的自立と他の自立との関係

第3章 障害者権利条約と自立支援
    第1節 障害者権利条約の締結と条約の特徴
       (1)条約の締結状況と選択議定書の意義
       (2)障害の社会モデル
       (3)条約の構成
       (4)条約の特徴と意義等
    第2節 条約の一般的な規定
       (1)目的と定義
       (2)原則と義務
       (3)平等と非差別
       (4)アクセシビリティ
    第3節 個別の権利
       (1)自立生活
       (2)移動支援
       (3)教育
       (4)障害者の雇用
    第4節 条約実施上の義務
       (1)国内的監視体制
       (2)報告義務

第4章 自立支援体制の鳴動
    第1節 新たなる障害者福祉関係法制定への動きと後退
       (1)推進本部と推進会議の立ち上げ
       (2)改正案の上程と廃案
    第2節 障害者自立支援法改正案の内容
       (1)利用者負担の見直し
       (2)同行援護の創設
    第3節 視覚障害者福祉充実のためのサービス
       (1)改正案の実現
       (2)視覚障害者移動支援事業の問題点と課題
       (3)その他の改革
    第4節 「応益負担廃止」は障害者の一致した意見ではない

終章 「障害」の表記は漢字か仮名か
    第1節 「障害」の表記の変更を求める動き
    第2節 漢字が良いのか仮名が良いのか

あとがき



〜〜以下、付箋に沿ってメモ〜〜〜

まず、冒頭で自立が6つに整理される。
1、身辺自立
2、経済的自立
3、職業的自立
4、職業経済自立
5、自立生活
6、社会的自立


「これが最良と考えているわけではないが、この6つの自立が中心になっているだろう」とされる。18p

22ー23pでは生活保護法での自立は保護からの脱却、経済自立で明確だが、障害者政策のなかではそれが非常にあいまいに使われているという。意識したことはなかったが、指摘されてみると、確かにそういう面はあるかと思う。

25ー26pでは楠敏雄さんの自立に関する説明を引用した上で、その「一生探し続けるテーマ」だという主張に合意する。

ただ、ここでの結語は「すべての障害者を対象とした「実現可能な自立」の定義は困難だ」というもの。

その前後でいくつかの自立の定義が紹介されるが、ぼくに興味深かったのが北野誠一さんの「地域での生活に必要なものとしての以下の二つの構成要素。
@地域で生きてゆくのに必要な自立生活技術の形成
A自立生活を支える地域のサポートシステム
37p

また、38pでは前出の楠敏雄さんによる、自立生活センターでの「ピアカン」や「自立生活プログラム」についての、それは有用だが、それらを重視するあまり当事者の人権や自己決定権の確立をいかにして達成するかという基本的な問題がないがしろにされてはならない、という指摘を紹介する。ぼくは知らないが、「ピアカン」や「自立生活プログラム」が生まれた背景にある「当事者の人権や自己決定権の確立」がないがしろにされているような自立生活センターの例があるということなのだろう。


英国のギャレス・ウィリアムによる自立生活運動への批判を著者は以下のように要約
@障害者の自立生活の確立のためには、障害者が自由市場のなかで消費者としてサービスをコントロールすることが必要であるとしている。
(どの観点からの批判か不明だが、資本主義批判の文脈か)

Aニーズに応じた公正な資源の分配を政府が実施しようとしてこなかったために、消費者の選択が分配の公正を保障するという個人主義的な消費者主権主義の考えが、自立生活などの運動の中心思想になっている。
(これは明確に資本主義批判かも)

B自立生活運動の主要な構成部分は、若くて「強い」人々であるが、実際の障害者の大きな構成部分は、高齢であり「強くない」人々であり自立生活センターの近くには住んでいない人々である。
 (確かに事実と強いてはそうだが、だからどうだと言いたいのか。お上がやっていればよいという批判なのか。それとも弱い人に自立生活センターを作れと言うのか)

C消費者の選択という考えは価値ある理念ではあるが、「小さな政府」を是とし、社会的・経済的に不利な立場にある人々を放置することに道を開きかねない理念である。
(この批判だけ見ると、あてがわれる公務員ヘルパーが正しい、という風にも読めるが、そういうことを言いたいわけではないだろう。パーソナルアシスタントの雇用にしたって、強いなんらかの力が必要なはず)


批判の対象にしているのは、米国型の、当初の八王子ヒューマンケアが始めた頃のモデルだと思われる。そういう意味で、これをいまの日本の自立生活センターに当てはめるのは無理があるだろう。そのあたりの話は「介助者たちはどう生きていくのか」http://tu-ta.at.webry.info/201604/article_7.html に詳しい。

第3章「障害者権利条約と自立支援」
この章がとてもおもしろかった。このように権利条約のことを(評価しつつも)批判した本を他で見たことがなかった。

第1節 障害者権利条約の締結と条約の批

(1)条約の締結状況と選択議定書の批准

最初に提起されているのが「選択議定書」の署名・批准問題。
ぼくもよく知らなかった、この「選択議定書」。前にどこかで読んだような気もするが。
選択議定書は、条約違反を個人や集団として国連に訴えることができることを定めたもの。
日本政府はいまだに署名も批准もしていない。
これを求める声は小さい。
その"意義”について認識していないからではないか。105p

また、この議定書を批准しでなければ個人の立場で国連に訴えても受け付けてもらえないとのこと。
著者は、日本国内における障害者に対する人権侵害や差別事象を救済する機関は「きわめて乏しい」ので、人権侵害や差別をなくすためには、この選択議定書の批准は欠かせない、と主張する。106p

ただ、ここでは運動側が制度が整わない段階での早期の批准を求めなかったことの意義にふれられていないが、ここはもっと強調されていいのではないかと思う。そのことの意義はけっこう大きいというのは「子どもの権利条約」などと比較すれば明らかなのではないか。

(2)障害の社会モデル
ここでは、条約が障害の社会モデルを採用したことを高く評価しているものの、この本の特徴である一筋縄でいかないところの記述が以下。
(社会モデルを説明し)しかし、そのような捉え方をしたとしても、障害すなわち能力不全(能力低下)の状況を減少させることができるだけであって、決して障害(能力不全・能力低下)があるが故の不自由さをなくすことができるわけではない。107p
だから、「障害を社会モデルでとらえながら、障害(能力不全・能力低下)を少しでも減少させるためのさまざまな政策の樹立や取り組みが必要」だと提起される。それはその通りだと思うのだが、従来、この後者だけが強調され、社会の問題だということがほとんど認識されてこなかったという前提がもっと強調されるべきだろう。

そして、たとえば、精神病の症状をなんとかするとかいう理由で必要以上の投薬が行われている現状もあり、社会モデルよりも医学・個人モデルが大手を振っている現状がある。そんななかで、後者を強調することの危うさを感じないわけにはいかない。


(4)条約の特徴と意義等
ここで著者は障害者権利条約の特徴として、以下の4点をあげる。
@「障害」を社会モデルで捉えていること。
A合理的配慮の導入と、それを「差別」との関係で捉えていること。
B地域での生活と教育について、インクルージョンの概念が強調されていること。
C条約に"一般原則”を盛り込んでいること。


その条約の意義を解説する本はたくさんあるし、なかには不十分点を指摘するものもあるが、この本の特徴はその「問題点」(と著者が考えるところ)を指摘していることだ。これはぼくは他ではあまり見たことがなかった。以下のように書かれている。
 条約の問題点は、条約を批准した以降は障害者の権利保障の状況がある程度は進展するかも知れないが、現状を固定化する手段に使われかねない内容も含んでいるので、それを正当化するのにお墨付きを与えることに使われるおそれがある、というところにある。109p

そして、この問題点があるからこそ、差別からの解放運動を絶やすことができないという大きな課題が存在する、と指摘するのだが、多くの差別された人たちの解放運動というのは条約があろうとなかろうと予想できないほど長く続かなければ差別はなくなりはしないのではないか、と思う。
差別がなくなるかどうかは社会の価値観がどうなるかという問題であり、それが根底的に変わるためには、歴史的に長い時間が必要とされるはず。それが変わらない限り、差別は存在し続けるのだから、ここを課題と指摘するのには違和感が残った。

110pから条文をとりあげての解説に入っていく。
そこで、ぼくに目新しかったのが、インペアメントのなかに「感覚障害」も含むことを強調していることを評価し、日本の障害分類では身体障害に含まれる視覚や聴覚の障害を「肢体障害者」とは質が異なる障害を有する者として位置づけている。
という指摘。111p

確かに身体障害の中にそれらを位置づけるのは無理があるんじゃないかとは感じていたのだけれども、このように明確に言語化したことはなかった。

そして、著者はこの規定が日本の社会福祉政策に影響を与えることになるが、このことを認識しているかどうかによる、と書いている。確かにコミュニケーション問題に関する若干の改善は見られたようにも思うが、十分に認識されてはいないのではないか。

113pでは合理的配慮における「過重な負担」の解釈をめぐって、それが誰に対するものなのかが問題であり、企業や学校の側の過重な負担だとすると、多くのことが過剰な負担なのでできないとなってしまい、それは差別ではないということになるので、「害悪」以外の何者でもない。と主張する。

ここはどうかと思う。確かに解釈としては企業や学校が過重な負担を避けることができるという規定だろう。しかし、それが過重かどうかを認定するのは最終的には裁判所になるはずであり、そのためのガイドラインも策定されつつあり、害悪以外のなにものでもないは言い過ぎだろう。
問題は過重かどうかの判断基準であり、そこをどのように使えるものにしていくかという観点が必要だと思う。

114pには、ぼくも以前から気にしていた「合理的配慮」という訳語の問題
参照URL http://tu-ta.at.webry.info/201512/article_6.html
が書かれていて、英語でもこの訳はおかしいと指摘する。そして、フランス語からの訳として「道理にかなった修正」「分別のある改修」という訳語が紹介されている。

以下は第4条「一般義務」について

116pでは「ユニバーサルデザインにおける・・・・最小の費用」のことが書かれているのだが、ここは障害者が使うための改変が最小の費用ですむようにユニバーサルに作らなければいけないというのをユニバーサルデザイン自体を最小の費用でというように大きな勘違いをしているのではないか。いま、本体を参照せずに書いているので、ぼくの勘違いかも知れないが、文脈からは勘違いじゃないかと思えて仕方ない。

117pの「漸進的に達成する」という下りへの批判は、もう言いがかりかというような感じかと思ったが、国際人県規約でこの言葉を盾に訴えを退けられているという例を読んでそうかと思った。

しかし、118pの「一層貢献するものに影響を及ぼすものではない」という下りへの批判は、無理がありすぎると思う。これは、どう読んでも、条約より前進しているものはそれを妨げないという規定で、それが悪用される可能性は低いと思う。

124p〜の「負担可能な費用」への批判も、どうかと感じた。最低限必要な支援は無料であるべきというのが著者の主張だが、これ<もなかなか微妙な部分だと思う。

126p〜の教育の問題
権利条約で、分離教育が明確に否定されなかった大きな要因は、単にろうコミュニティがそれを必要としているということで、それ以外は基本、統合=インクルージョンでという風にぼくは権利条約を読んでいた。条約にある「一般教育から排除されないこと」という規定は、著者はそのことがあいまいだと非難し、さらにそれだけでなく、
「一般教育から排除しないこと」という規定は「「特別支援教育」も含めた教育制度から障害者を排除してはいけないことを意味している」
と書き、確かに文部科学省はそのような解釈をしているようなのだが、この条文をふつうに読むと、特別支援教育は例外であり、縮小しなければならないという規定にぼくには読めるので、このような解釈があり得ると書いてしまう問題があるのではないかと思う。そして、この部分の結語では「選択肢が必要」という、ありがちなことが書いてあるのだが、特別支援教育が減るどころか増えている現状で、地域の学校でインクルージョンを増やすことこそが必要だと明確に書いてほしかった。このロジックでは選択肢としての特別支援学校が増えている現状に対抗できないと思う。

128p〜は雇用のことが記載されている。
「職場介助者」という提起があり、この部分の結語では「労働行政の大きな変革」がうたわれている。そう、この部分を読んで、現状に規定されがちな思考をもっと自由になる必要があるのかも、と思ったが、どこからどう手を着けていけばいいのだろう。「どのように」ということの大切さを感じた。


137p〜は障害者自立支援法の改正案をめぐるやりとりも他で読んだことがなかったような内容が記載されており、興味深い。ここでは、国会情勢の関係で廃案になった最初の改正案について、ふれられており、障害当事者抜きで決められたそのプロセスを批判しつつも、その内容については、全く不十分なものではあるが、視覚障害者には緊急を要する内容も含まれていた。それは同行援護の新設(140p)、という話だ。それがどのように必要だったか、という話も143pで展開されている。

繰り返しになるが、著者の考えがまとまっているのが以下。このような形で表現される。
(権利条約の意義によって日本の障害者の状況が(いい方向に)大きく変わる可能性があるということを強調した上で)「しかし、さまざまな問題点があるが故に、障害者にとってばら色の保障する条約であるなどとの幻想を抱くべきではない。条約の解釈や運用次第では諸刃の剣になることを決して忘れてはならない」
だからこそ、問題点を解消する取り組みが必要なのだ、というわけだ。143p

条約が無力化されそうな状況は間違いなくある。それが「諸刃の剣」だからかどうかは別としても。ともあれ、取り組みを継続しなければ後退するというのはある意味、当たり前と言えば当たり前の話だ。


151pでは、視覚障害者のガイドヘルパーについて、「質の高いガイドヘルパーを確保するためには、国のきびしい基準の下で養成が行われる必要がある。と書かれている。これはある意味「ガイドヘルパーから始めよう」の対極かも知れない。

155p〜は 【「応益負担廃止」は障害者の一致した意見ではない】として、所得税が全額14万以上のものには高負担だという話が書かれている。14万というのは年収いくらだろう、と気になった。家族構成とか控除とかいろいろ複雑なんだが、年収500万くらいで、それくらいの金額になりそう(障害者の控除があると、少し違うか)。ともあれ、その収入で51時間ガイヘルを使うと、約5万の自己負担とのこと。確かに年収500万で月5万ならきついかもしれない。

〜〜付箋でのメモここまで〜〜

この本のタイトル、「自立を混乱させているのは誰か」なんだけど、この本の著者、障害者権利条約の解釈に新しい風を入れて、けっこうかき混ぜているかも。「条約の解釈を混乱させているのは誰か」なんちゃって(笑)








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