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zoom RSS 「ポピュリズムとは何か」メモ

<<   作成日時 : 2017/06/07 04:37   >>

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「ポピュリズムとは何か」メモ
水島治郎 中公新書2016年12月

カバーの袖の部分に掲載されてる文章
イギリスのEU離脱、反イスラムなど排外主義の広がり、トランプ米大統領誕生…世界で猛威を振るうポピュリズム。「大衆迎合主義」とも訳され、民主主義の脅威と見られがちだ。だが、ラテンアメリカではエリート支配から人民を解放する原動力となり、ヨーロッパでは既成政党に改革を促す効果も指摘される。一方的に断罪すれば済むものではない。西欧から南北アメリカ、日本まで席巻する現状を分析し、その本質に迫る。


「ポピュリズムとは何か」ということを知らなかったことに気づかされた。というわけで、前提の基本知はない。

「ポピュリズム」を考えるだけでなく、現在の政治状況全般を考える上で、いろいろ使えるようにも思った。

日本では「維新の会」が典型。
「都民ファースト」もそれに近いかも。

これを読んで、ポピュリズムに「ピープル主義」という日本語を当てることが妥当だろうか、と考えた。
だとすると、「ピープルであること」というのを大切な原理とする、花崎と武藤が作ったピープルズ・プラン研究所はポピュリズム団体となるのかどうか、そのあたりもメモで考えたい。

また、この本ではポデモスやシリザへの言及がないだけでなく、イタリアの5つ星運動への言及もなかった。このあたりは少し残念。それらをポピュリズムととらえる人もいるのだから、言及してほしかった部分ではあるが、この著者の定義では位置付かなかったのだろうか?スコットランド人民党については少しだけ言及があったが。


「はじめに」で著者は本書の主題について、以下のように書く。
特に本書を通じて提起したいと考えているのは、ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないか、ということである。なぜなら、本書で示すように、現代デモクラシーを支える「リベラル」な価値、「デモクラシー」の原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果として、ポピュリズムを正当化することになるからである。

ま、簡単にいってしまえば、人々の多くが排外主義を求めたときに、それに従うのが民主主義か?というような話であり、あるいは、女性の平等な権利と表面的にはそれを与えないイスラムの戒律があり、後者の価値観の持ち込みを規制する、というような話だ。
この二者択一が迫られたときにどうすると、著者は問っているのだと思う。

しかし、本当にそうか?その問いは妥当なのか?

そんな立場から読書メモを書く。

ただ、その上で著者は、ポストデモクラシーの時代の、その「デモクラシーの逆説」の問題の解決の糸口を明らかにできれば幸いである、と書く。そんな立場の人だ。

そもそもポピュリズムとデモクラシーの関係は一筋縄ではない、という話が冒頭に書かれている。5p

その上でポピュリズムの二つの定義が示される。
一つ目の例が
中曽根、ベルルスコーニ、サルコジの政党や議会を迂回して、人々に直接訴える政治スタイルとされるが、この一つ目は最近の政治学では使われず、二つ目の「ピープル」(ここでは「人民」と使われているが)の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動をポピュリズムととらえるとする。6〜7p

この定義ならPP研もポピュリズム指向の団体と言えるかも。

ポピュリズムにおける「人民」(ピープル)
カノヴァンによるその構成要素3つ
1、普通の人々(ordinary people)
2、一体となった人民(United people)多元主義の対局
3、われわれ人民(同質性)
10-11p

ポピュリズムのデモクラシーへの寄与と脅威
その両面がある。政治から排除されていた人々を政治に呼び戻し、議論を活発にし、政治への関心を高め、経済や司法ではなく「政治」が物事を解決するという政治そのものの復権を促すというプラスがある。

他方で権力分立や、抑制と均衡というような立憲主義の原則を軽視する傾向があり弱者やマイノリティが無視されがち。また、敵味方をつくるのを好むため政治的な対立なのが急進化する危険がある。22-24p

現代欧州で伸張しているポピュリズムの特徴
1、マスメディアを駆使し、インターネットも有効に使い無党派層に呼びかける。
2、住民投票などの直接民主主義の活用
3、福祉排外主義
68ー70p

この福祉排外主義とは福祉・社会保障の充実は支持しつつ、移民を福祉の濫用者として位置づけ、福祉の対象を自国民に限定。70p

また極右起源のポピュリズム政党も、デモクラシーを受容する方向に変更しつつある。71p

イスラムには自由がないとして、そのリベラルの立場を排除の論理に使うというポピュリズム政党の主張があり、「それが主流化しつつあるのではないか」と著者は書き、「西洋の「リベラル」は今、その内在的な困難を突きつけられているといえよう」というのが、第1章の結語である。128p
これを内在的な困難というべきなのかどうか。その排除もまた信教の自由を脅かし、居住の自由を制限する。自由を制限する宗教であっても、その信教の自由は保障するというのがリベラルの立場であり、イスラムには自由がないから排除するというロジックは破たんしており、そこに内在的な矛盾があるとは言えないのではないか。

排外主義的な憲法改悪案が国民投票に付され、それが通るというようなことが欧州では起きているらしい。156-158p
国民投票にはそんな危険があるのだが、それは直接民主主義のツールでもある、危険なツールといえるだろう。ヴェーバーがいうところの、価値観に関する転轍機が動く前に、国民投票を行うと、利害動機での投票行動を行う多数派は移民排除に向かう危険が大きいといえるかもしれない。国民投票を推進する人たちは、そのあたりのことをどう考えるのだろう?

順は前後するが、134pに4頭の羊が描かれたポスターがある。1頭の黒い羊が1頭の白い羊から蹴られ、排除される。他の2頭の白い羊はそれに無関心を装う。そして、排除は成立する。その無関心がカギを握っていると著者は主張する。158-159p
内心の表に出にくい差別的な感情が事前の予想を覆し、トランプを当選させ、ブリクジットを成立させたのではないかという主張は興味深かった。サイレントマジョリティはあの醜悪な答弁を繰り返す安倍首相を支持しているのだろうか?

米国では忘れられた人々が英国では置き去りにされた人々がそれを実現したのではないかという。183p196p
事前にはサイレントを貫いたサイレントマジョリティ。既存の政治は彼らが抱える不安に応えることができなかったのだと著者は書く。187p

これが先進国のポピュリズムだが、南米でにポピュリズムは違う顔を持つ、と書かれている。ラテンアメリカが持つ圧倒的な社会・経済的格差があり、ポピュリズムもその既存の政治を改革するために「分配」という左派的な志向を持たざるをえなかった、とのこと。215p 

そして、西欧などではポピュリズムの批判の対象になるのは「多文化主義の広がり」や「エリートによる寛容な価値観の優位」。エリートが移民の犯罪をタブーにしてきたという批判。そのタブーを破る英雄的な行為を行うポピュリスト政党という位置取り。(219p)
これだと、ポデモスやシリザは位置づかないわけだ。南欧は同じラテンとして、南米に近いということか?

最終章のまとめの部分で、西欧のポピュリズムのデモクラシーとの親和性について繰り返し指摘し、そうであれば、デモクラシーやリベラルはポピュリズム批判のツールとしてはふさわしくないのではないかという。222-223p

そう、ポピュリズムから民主主義を考えると見えてくるものがある。ポピュリストがリベラリズムの価値観をも使いながら、女性に差別的な内容を包含するイスラムを排除すべきと主張し、その政策を直接民主主義である国民投票で決定しようと呼びかけたとき、私たちはどのように応えるべきか。イスラムの排除は思想・信条・宗教選択の自由を奪うことになる。そして、イスラムの思想がそもそも女性蔑視ではないという説もあるし、そもそも、イスラムを信仰しない人々をイスラムが少数派である社会の中で、その価値観を強制されることはない。そんな議論を含む熟議が必要という主張は出来るはず。少数が多数になれるような。しかし、多くの人々を動かすのは利害による動機だとすれば、転轍機が動かない限り、多数派は形成できない。

230pではポピュリズムの既成政治に対する批判、不満としての有効性は、それが法治国家の枠に収まっている間はあるとした後で、こんな風に書いている。
〜〜〜
 現代のデモクラシーは、ポピュリズムを巧みに使いこなせるほど成熟しているといえるだろうか。慎重な見極めが必要だろう。
〜〜〜
そして、本当のことを言うパーティーので泥酔客のような珍客であるポピュリズムをデモクラシーはどう遇することができるのか、その真価が問われる、と書かれてこの本の本文は終わる。

まどろっこしい書き方がしてあるが、多数ではなかったが多くの人がトランプ大統領を選んだ現実がある。デモクラシーはそんなには成熟していない。転轍機が動くような価値軸の転換も量的には十分ではない。
そんな中で私たちにできることは何か、ということあ問われるのだろう。




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