新型インフルエンザと多国籍企業の工業的畜産(再びたくさん追記)

日本にも新型インフルエンザの患者が発生したらしい。
どうも、騒ぎすぎなんじゃないかと思わないでもないが、報道されない別の面について。

知人で前新潟市議の中山さんのナカヤマヒトシ通信でもらった追加情報
===
「豚インフルエンザの元凶」
http://green.ap.teacup.com/nakayama/358.html
「豚インフルエンザ続報」
http://green.ap.teacup.com/nakayama/359.html
===
をattacフランスと農民連盟が出した声明のあとに付け足しておきます。

新型インフルエンザと多国籍企業の工業的畜産について、
attacフランスと農民連盟が出した声明を以下に転載する。
原文:http://www.france.attac.org/spip.php?article9914


最後に少しコメント


%%%%%%%


インフルエンザA型:農工業のインフルエンザ!
2009年5月6日
Attacフランス、農民連盟


問われる農工業モデル
インフルエンザA(H1N1)型という名称によって着手される取組みは、過熱する報道の中で、このウイルスの出現と拡大の真の原因を覆い隠すおそれがある。それにもかかわらず、しだいに多くのNGO、研究者、北米のジャーナリスト、そしてメキシコの住民の証言が、多国籍企業によって主導され、新自由主義的グローバリゼーションによってもたらされた農工業モデルを問題にしつつある。

ウイルスの正確な起源に関する確証はないが、ヒト型、鳥型、豚型の混合とされている。しかし、あらゆることから、ウイルスの伝播は農工業と深く結びついていると考えられる。何年も前から多くの科学者が、畜産の工業化や非常に集約的な畜産によってウイルスの伝播や再結合が助長されることを警告してきた[1]。

重大な手がかりとして、豚肉の生産・加工で世界最大規模の多国籍企業、スミスフィールド・フーズ社が挙げられている。同社はメキシコのラ・グロリアという町にグランハス・キャロルという子会社を持っている。数カ月前から、住民は呼吸器官の病気や変死が発生していることを訴えてきたが、これらはすぐに、この多国籍企業の凄まじい衛生状態(たとえば、屋外に放置された豚の腐った死骸)と関連づけられた[2]。まさにこの地で、国内初の豚インフルエンザの事例が確認されたのだった。メキシコ当局は明らかに問題をもみ消そうとした。それにもかかわらず、スミスフィールド・フーズ社はすでに、公衆衛生を危険にさらすその畜産慣行の犠牲者である住民によって告発されている。しかし、農産物加工に携わる他の多国籍企業の場合と同様に、当局の無能力や放任のおかげで、自由な投資の法則が幅を利かせることになったのである。

もうひとつの潜在的な発生地は、ノースカロライナ州で米国人研究者らによって特定される可能性がある。同州は、養豚業の集約化と工業化が国内で最も進んでいるからである[3]。また他の発生地が特定される可能性もある。重要なのは、少数の多国籍企業の畜産の過度な工業化が公衆衛生にもたらす大きな危険を注視することである。このような工業化は、非常に多くの研究者や機関の警告にもかかわらずおこなわれてきた。この40年間で、米国の1畜産農場あたりの豚の平均数は50頭から1,000頭に増加した。スミスフィールド・フーズ社の畜産では、巨大な飼育場にそれぞれ数万ないし数十万頭の豚が集約的に閉じ込められる。そこは糞便の池と化しており、汚染をもたらす大量の排泄物と、耐性を高める抗生物質にまみれているのだ。農民や家族による牧畜とはまったくかけ離れているのである。

根本的な原因:自由貿易と多国籍企業による独占支配
今回のインフルエンザが最初にメキシコと北米で特定されたことは、明らかに偶然ではない。1994年に米国、カナダ、メキシコの間で締結された NAFTA(北米自由貿易協定)によって自由貿易圏が創設され、特に予防原則を無視して自由市場が定着したのである。保護される可能性を失ったメキシコの農業は、超低価格の大量の農作物によって壊滅させられたのだ。米国の農産物加工の多国籍企業は、米国で課される規制を逃れるためにメキシコに大量に投資し、大挙して根を下ろすことができた。さらに、メキシコは1980年代以降、IMFと世界銀行の構造調整計画に従っていることも忘れてはならない。これらの計画は、とりわけ国内向けの食糧生産や家族農業を犠牲にして、農業を輸出志向にしむけるものである。その条件は、環境・社会・公衆衛生に関する規制のない、工業化され、汚染を引き起こすような農業へと向かう偏流をもたらすものであった。

また、このインフルエンザの拡大によって、防止システム、とりわけ世界保健機関(WHO)のシステム、および北米の公衆衛生システムがうまく機能しないことも明らかになった。これらのシステムは民営化され、財源が乏しく、適切に調整された迅速な対応が取れないのである。さらに、南の国々は、ロッシュ社のタミフルと同様に不可欠な抗ウイルス剤をジェネリック薬品として公然と生産しようとしたが、製薬業界は、この動きを阻止するためにあらゆる手を尽くした[4]。

鳥インフルエンザの場合と同様に、根本的な原因は自由貿易と多国籍企業による独占支配にある。緊急に、ウイルスの起源、特に北米における畜産の工業化と公衆衛生システムの破綻がもたらす影響について独自に評価をおこなう必要がある。これは容易なことではないだろう。鳥インフルエンザの場合と同様に、養豚業界は、あらゆる手段を使って調査を妨げる可能性が高いからである。より長期的には、農工業モデルおよびそれをもたらした自由貿易協定と市場の自由化を再び問題にしなければならない。世界貿易は、食糧主権そして各人が自らの農業を特に多国籍企業から守る権利において、連帯的かつ協調的なものとならなければならない[5]。さもなければ、公衆衛生に関わるさらに甚大な惨事を覚悟しなければならない。

Attacフランス
農民連盟

2009年5月6日

==以下、ナカヤマヒトシ通信でもらった追加情報から修正した注を転載==
原注:このサイトへの日本語テキスト版掲載にあたり、若干修整した。また、資料のURLを追加して整理した。(中山)
[1]
●NGO「Grain」のウェブサイト(http://www.grain.org/articles/?id=50)を参照。
●Bernice Wuethrich、「変異する豚インフルエンザの追跡」『サイエンス』誌 2003年第299巻3月号(http://www.wepapers.com/Papers/29697/Chasing_the_Fickle_Swine_Flu で参照可能)
●「専門家パネルは工業的畜産が公衆衛生に及ぼす深刻な脅威を強調」も参照。これは、2008年11月に議会においてなされた、集約的養豚がもたらす衛生上の大きな危険に関する専門家パネルの警鐘に言及している(http://www.pewtrusts.org/news_room_detail.aspx?id=37968)。

[2]特にメキシコの日刊紙『ラ・ホルナダ』による。この地域では鶏の集約的・工業的な畜産も多数おこなわれており、最近、鳥インフルエンザが猛威をふるった。ウイルスの再結合の発生源という可能性もある。

[3]「米国動物愛護協会」の公衆衛生・畜産局長Michael
Gregerの論文(http://sheepdrove.wordpress.com/2009/04/30/h1n1-flu-virus-link-to-usa-pig-industry/)。同様に、2004年の「フランス獣医学会会報」には次のように述べられている。
「2000年代初頭から、フランスにおける豚のインフルエンザは、第一に、豚の密度がもっとも高いブルターニュ地方の畜産と関係している。これは同地域の畜産に大きな経済的影響を与えている。このインフルエンザの活動は、鳥起源(A/H1N1)または遺伝子再集合体(A/H1N2)のA/H型ウイルスの仕業である。インフルエンザウイルスは不安定なため、疫学的監視を有効におこなうためには検出手段を定期的に調整する必要がある。」

[4]http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/apr/27/swine-flu-mexico-health

[5]このテーマに関して、Attacヨーロッパ/ビア・カンペシーナ・ヨーロッパ共編『食糧主権:欧州は何をしているか?』(Paris, Syllepse, 2009)が近刊予定である。

====
修正した注の前にある中山さんの文章から部分転載
====
PEWというアメリカの団体が作成した、工業的畜産が環境・健康や安全に与える影響を警告するレポート(英文)
http://www.ncifap.org/_images/PCIFAPFin.pdf

attacフランスとフランス農民連盟が共同で声明を発表 いくつか根拠資料も明示されており、重要な観点が提示されています。

他の資料を見ると、アメリカで販売されている抗生物質の実に70%が、人間ではなく畜産の牛・豚・鶏などに用いられていることもわかりました。

規制緩和や構造不況、リストラと拡大する豚インフルエンザが、同根の問題であることを認識する必要があるようです。

参考文献のURL表示等は修整しました(2009/5/12 by中山)。「農工業」とある部分も「工業的農業」のような言葉の方がより原文の意味に近いようです(上記PEWのレポートでも用いられている「工業的畜産」の方がよりよいと思うのですが、声明のフランス語の原文では単に「l'agro-industrie」としか書いていないようです)。さらに関連資料を調査中です。

====

「豚インフルエンザ続報」  
豚インフルエンザに関し、ATTACとフランス農民連盟が声明を発表したことを昨日掲載しました。その「註」から参考資料をあたってみました。

まず、2003年3月の「サイエンス」論文です。
http://www.wepapers.com/Papers/29697/Chasing_the_Fickle_Swine_Flu
この中で、2002年の調査で、畜産関係者の血清に一般人と比べて高率に豚インフルエンザの抗体が検出されたというアメリカCDCの論文が紹介されています。また、畜産業における近年の密集した飼育環境が遺伝子の変異やヒトへの感染・ヒト間の感染を引き起こす危険性を強く警告しています。

医学的にもすでに数年前からこうした危険性が、工業的畜産の実態と共に警告されていたのです。そしてその警告は現実のものとなったのです。

また、「日刊ベリタ」記事も参照下さい。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200905101047080

のちほどさらに追記します。

==ナカヤマヒトシ通信でもらった追加情報ここまで==



===転載ここまで===

tu-taコメント

そう、工業的な大規模畜産などのありかたが問題を引き起こしている。ただ、工業的な大規模畜産というのはもっと日本の近代工場のような清潔さを維持するものかと思っていたが、メキシコなどの子会社ではこんな状態なのか。(見てきたわけではないので、断言はできないが、こういうこともありえる話だと思う)

そして、どうも今回の新型インフルエンザは現状では、まだ毒性は低いようだ。これから転換することもあるそうだが。
とにかく、今回の新型インフルエンザと工業的農業の関係はもっと報道され、検証される必要がある。だいたい、鳥インフルエンザのときも、いつも問題になったのはゲージ飼いの養鶏場だった。

注[2]にも出ている「鶏の集約的・工業的な畜産」の話については、かなり前に菅野芳秀さんのブログで読んだことがる。以下にちょっとだけ転載。
===
 ドイツ全土から、2007年1月1日よりゲージ飼いのニワトリ達がすっかり消えた。全ては大地の上で飼育されている。ヨーロッパ全体では2012年から実施するという。
http://lavo.jp/kakinotane/lavo?p=log&lid=125750
===
このコメント欄には「オーストリア全土から、2009年1月1日よりゲージ飼いのニワトリ達がすっかり消えた。んですよ。ドイツから二年遅れてお隣オーストリアでも、…」
とのこと。

本当に、日本ではこういう話が報道されない。


そう、スーパーの普通の肉は抗生物質漬け。このインフルエンザにこういう問題もあったのかと・・・。


それから、フランス語はまったくわからないので、コメントしにくいのだが、原題は
La grippe A : la grippe de l'agro-industrie !
となっている。
英語のインフルからの想像だけど、「A型インフルエンザ:工業型農業のインフル(影響)!」
とかのタイトルでもいいかなぁと中身を読みながら思った。
(まったくの想像です。フランス語のわかる人は教えてください。でなきゃ笑って読み飛ばしてください。)

コメント欄にも書いたが、ここは間違っていたことが判明。
「A型インフルエンザ:工業型農業の流行病(はやりやまい)」っていうタイトルはどうかなぁと考えた。





追記
豚インフルエンザと呼ばれていたが、いつのまにか「豚」が消えた。大規模畜産産業からのプレッシャーもあったのかと思う。

追記その2
中山さんが紹介してくれてる
「PEWというアメリカの団体が作成した、工業的畜産が環境・健康や安全に与える影響を警告するレポート(英文)
http://www.ncifap.org/_images/PCIFAPFin.pdf 」
これ、誰か日本語にしてくれないかなぁ


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この記事へのコメント

tu-ta
2009年05月10日 06:43
フランス語の先生をしてる知り合いから
La grippe A : la grippe de l'agro-industrie !
「A型インフルエンザのAは、アグリ産業のA」てな感じです。 

とのこと。
なんでそうなるのかはわかりません。

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