『ソーシャルワーカーは・・・すべての人間をかけがえのない存在として尊重する』…これを妨げる事例

2016年2月に書いたレポート  評価A

科目名
相談援助演習④
課題
ソーシャルワーカーの倫理綱領 価値と原則1(人間の尊厳)に『ソーシャルワーカーは・・・すべての人間をかけがえのない存在として尊重する』とあります。これを妨げる現実問題を一つとりあげてあなたの考えを論じなさい


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 大田区という地域で障害者の就労支援に関わっているが、ときどき聞く話として以下のような話がある。主要に介助をしていた家族が病気になったり亡くなったりして介助ができなくなった時に、障害があるとされる人たちは行き場を失い、いままで行ったこともなかったような地方の入所施設へ送られるという話だ。

 彼や彼女は重度訪問介護などの制度を利用したり、グループホームを選択したりすることで、必要な支援を受けながら、住み慣れた地域で暮らすことができるはずであるのに、そのような選択肢を選べない現状がある。

 さらに問題の根が深いと思えるのは、いろいろ探して、検討した結果、そのような選択肢がなかったということではなく、はじめからそういう人たちには入所施設しか住む場所がなく、大田区内の入所施設に空きがないので地方で探すという方向でソーシャルワーカーが家族と一緒になって動いているように見える場合があるからだ。  そうであるとしたら、それは『すべての人間をかけがえのない存在として尊重』していると言えないだろう。

 本人の意向が確認されることもなく、あるいは諦めざるをえない状況に追い込まれて、住み慣れた地域を去らなければならない痛みはどれほどのものだろう。本人の意思が尊重され、それを可能にする制度や環境を整える努力を怠らないことがソーシャルワーカーには求められている。それは確かに大変なことではある。しかし、『ソーシャルワーカーは・・・すべての人間をかけがえのない存在として尊重』しなければいけない存在であるならば、そこにチャレンジすることが求められるのだし、上記のような事態が放置されているとすれば、『すべての人間をかけがえのない存在として尊重』されていない事例として、明記しておきたい。

 もちろん、障害者施設や高齢者施設での虐待などというもっとわかりやすい事例をあげることはできるし、それが起きてしまう構造的な問題をレポートすることも可能だとは思うが、そのように誰の目から見ても尊厳が奪われているという事例より、あえて、通常は問題とされない(場合によってはグレー領域をされることもない)事例をあげた。

 上記のような例の場合、当事者の多くは意思をうまく表出できない。彼や彼女の尊厳を守るために、その意思をどう聞き取るかという訓練もソーシャルワーカーには必要になる。英国や南オーストラリアで行われているという「支援された意思決定」の仕組みも参考になるだろうし(*1)、同時に
【意志決定支援などという言葉が使われ始めていますが、そんなことできるだろうか? どのように意思を尊重し、しかしそれだけによらないものをどう作っていけるのだろう。たくさんの物事をその都度より分けて考えていくしかないのですが、「意志決定」の「支援」ができるかのような言葉を軽々しく使うことをためらうのです】(*2)
というような当事者への向き合い方も大切なのだと思う。

(*1) 日本弁護士連合会
第58回人権擁護大会シンポジウム
第2分科会基調報告書
「成年後見制度」から「意思決定支援制度」へ
~認知症や障害のある人の自己決定権の実現を目指して~
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/58th_keynote_report2_1.pdf
2016年2月10日収録

(*2)『ズレてる支援!』(寺本晃久他著2015年)の「まえがき」(11頁)から引用。



 

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