『居るのはつらいよ』というケアとセラピーの話(1)(ほんの紹介23回目)

たこの木通信2020年1月に掲載した原稿

『居るのはつらいよ』というケアとセラピーの話(1)

(ほんの紹介23回目)


 今回、とりあげるのは、居るのはつらいよケアとセラピーについての覚書。著者の東畑さんとは偶然、一度だけ某ワークショップで同じグループになったことがあって、この本のことを知ったのだった。話題の本でもある。

著者が「この本の体裁は物語とかエッセイに見えるかもしれないけど、僕はね、これをガクジュツ書のつもりで書いてます(p.268)という通りエンタテイメント性は十分。おもしろくてさくっと読める。そして、けっこう深い(ような気がするが落とし穴もあるかも)。

沖縄の精神科デイケアでの日々の話がとても面白いのだが、その部分は読んでもらうしかない。ここではこの本の主題であるケアとセラピーについて書く、こんな風に説明されている。

…じつは、セラピーって心理士の仕事全体からすると、それほど大きな部分ではない。いや、それどころか、かなり小さい。これはカウンセラーを目指す若い人が一番驚くところなのだけど、心理士の仕事の多くはセラピーではなく、ケアだ。

 ケア。それは日常とか生活に密着した援助のあり方だ。セラピーが非日常的な時空間をしつらえて、心の深層に取り組むものだとするならば、ケアは日常のなかでさまざまな困りごとに対処していく。深層を掘り下げるというよりは、表層を整えるといってもいいかもしれない。21p

セラピーのことはよく知らないのだけど、ここでのセラピーとはメンタルに関するセラピーのことだろう。ぼくはこの数年、OT,ST,PTといろんんたタイプのセラピストと出会って、それぞれの仕事の奥行きの広さを感じたりしているけど、そういうセラピストは想定されていない。そう、この本の話に戻る。こんな風にも書かれている。

 心の深い部分に触れることが、いつでも良きことだとは限らない。・・・何回かセラピーもどきをするなかで、ジュンコさんは・・・デイケアいられなくなった。49p

ジュンコさんが求めていたのは、セラピーなんかじゃなくて、ケアだった。心を掘り下げることではなく、心のまわりをしっかり固めて安定させて欲しかったのだ。50p

多くの場合ケアがしっかり行われていれば、セラピーはいらないことが多いとさえ思えてくる。

メンタルに課題がある人の就労支援の場面で考えてみた。まず、就労支援の場所が居場所となり、人と交わることができるようにすることが求められることが多いのだけど、それを実現するのも、セラピーよりもケアであることのほうが多いと思う。そして、一般就労に向かう準備をするのだが、これがセラピーかといわれると違うだろう。現状での就労では、人と交わることができるようになり、生活のリズムが安定して来れば、そこで就労へのチャレンジは可能になってくる。やはり、そこで必要なのはセラピーではなくケアだと思う。

似ていることを著者の東畑さんも以下のように書く。

 いろんな専門性を持ったスタッフがみんなで素人仕事をやるのだ。それはまるでセラピーとケアの水溶液のようだ。・・・

・・・心の深い部分介入できる専門家になりたいと思っていた。だけど、デイケアで働くと同時に外来でセラピーの仕事をするなかで、僕は「あえて」心の深い部分を扱わないセラピーをすることを 始めていた。精神病やパーソナリティー障害のような、 重篤なクライアントに対して、深いところを掘り下げるのではなく、日常を支えることに価値を感じるようになっていた。僕はケアの入り混じったセラピーをするようになっていたのだ。119p

そして、そのケアについて、こんな風にも書かれている。

だけど、僕らがデイケアウォッチングで観察してきたのは、 じつはそれ以前のことだったのではないか。つまり、個々人の「する/される」以前に、デイケアというコミュニティに必要性が生じて、それに対応するために自然とケアが生じていたのではないか。主体はコミュニティだったのではないか。221p

このあたりについて、もっとつっこんで書きたかったけど紙幅が尽きた。来月、続けられたら続けようと考えて(1)とつけてみたけど・・・。
~~掲載された原稿、ここまで~~

ちゃんと翌月に続いてる。https://tu-ta.at.webry.info/202004/article_5.html

このもとになった読書メモは https://tu-ta.at.webry.info/201905/article_4.html

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