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zoom RSS 『夕凪の街 桜の国』を見てきた

<<   作成日時 : 2007/08/19 05:34   >>

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『夕凪の街 桜の国』を見てきた。

素直にいい映画だと思う。例え、文部省特選でも、大嫌いな東京都知事が推奨していても、ナショナルなものへ回収される危険があっても、それでもいい映画だと思う。

けっこう泣いた。みんな泣いていた(ように見えた)。

被爆者の絵画が効果的に挿入されている。

この映画、パンフレットの制作ノート(佐々部清監督談)によると、「…こんなに素晴らしい本なのに、メジャーには地味で売りにくいと拒否されました。」とある。それに続けて監督は「だからこそ映画化を実現させて見返してやろうという気になるのです。そして、しっかりとお客さんの入る映画にするんだと心から思いました。これは日本人にしかつくれない映画です。小学生から外国の方まで、あらゆる人に観てほしいと願っています。(以下略)」という。

ぜひ日本以外の国に持っていって欲しいと思う。また、米国でこそ上映されるべきだと思う。ぜひ、製作者には外国で見せる努力をして欲しい。



そして映画館で売っていた原作の漫画も買って読んだ。
このマンガのことは「イメージ&ジェンダー研究会」の報告http://www.geocities.jp/imagegender/gaiyou.html#91-1
で(途中から少しだけ)聞いていたのだが、上記のサイトをいま読み返すまでほとんど忘れていた。ここではこのマンガについてこんな風に評価されていた。

「こうの史代から中沢啓治へ―記憶と政治の葬送に抗して―」というテーマの木村智哉さんの報告要旨には以下のように記載されている。

===
 手塚賞においては、その表現の「清新な表現」が、メディア芸術祭では「力強いメッセージ性」を持ちながら「押し付けがましく」ない「独特の表現方法」が評価された。また、漫画評論を手がける編集者の竹熊健太郎は、「怒りではなく、静かな悲しみが漂う」と本作を評している。ここで高く評価されているのは、原爆がもたらした悲劇を表現する時の「新しい」語り口である。それは「怒り」や「押し付けがましさ」を伴わず、むしろ「静か」で「清らか」なものである。
 米山リサは近著『広島 記憶のポリティクス』において、原爆投下を含む十五年戦争の記憶は、女性化されることによって「無罪、平和、被害性」に関連付けられたと述べる。ここに報告者は今、現代におけるもう一つの「記憶の女性化」を付け加えたい。「静か」で「清らか」で、そしてあくまで「私的な語り」としての原爆の記憶。それは公的空間、すなわち現代の政治状況を何ら揺るがすことの無い、影響力を殺がれた語りである。女性、わけても母性のイメージをもって、無垢な被害者としての自己像を獲得してきた戦後日本における一般的な「平和主義」の語りに対しては、その根本的な理解に疑義が呈され始めてから既に四半世紀以上が経っている。しかし今、明確な軍事化路線を進む政治改革と並行して、そうした「女性=平和=被害者」という、現在ではあまりにナイーヴに過ぎる語りさえもが私的空間へと押し込められているのである。
 こうの史代の意図が、被爆者の存在を、そして戦争における加害も含んだ「不幸」を知らせようとするところにあることは、彼女の種々のコメントを見れば明らかである。しかしながら彼女の作品はその意図とは異なる文脈によって称揚されているのである。
===

 ぼくは今回、初めて映画を見た後に原作本を読み終えて、木村さんが「彼女の作品はその意図とは異なる文脈によって称揚されている」という、その主旨は理解できるものの、やはりその異なる文脈を突破する力が作品にはあるのではないかと感じた。この映画を見たあとでの木村さんのコメントも聞いてみたいと思う。

 また、上記の文章で木村さんは「現代の政治状況を何ら揺るがすことの無い、影響力を殺がれた語り」というのだが、語り、あるいは作品が政治状況を動かすかどうかは、それを媒介する運動の存在(あるいは運動を可能にする社会状況)に関わっているのではないか。確かにこの映画は文部科学省特選で東京都知事推奨なのだが、それを可能にしているのが運動の無風状態だ、という風にも言えると思う。つまり原爆投下責任をめぐって米国との間で緊張した関係を形成できるくらいの社会状況・運動状況があれば、米国の言いなりになり、また独自の軍隊の合憲化を、そして戦争の実現可能性を追求して、しゃにむに憲法9条の改訂まで行おうとする現在の政府がこの映画を推奨することはできなくなるのではないかとも思われる。

 木村さんは確かに作品の意図と称揚される文脈の違いを語るのだが、この作品が現政府や東京都知事にまで称揚されている背景を考えることは確かに面白いかもしれない。そこから見えてくることはたくさんありそうだ。


 ともあれ、このような作品が喚起する想像力を受けとめることのできる、戦争に向かおうとする社会状況をひっくりかえしていくような運動の形成こそが問われていると思う。




また、原作本の帯にはこんな風に書いてある。
==
実にマンガ界この十年の
最大の収穫だと
思います。
これまで読んだ
多くの戦争体験
(マンガに限らず)で、
どうしても掴めず
悩んでいたものが
ようやく解きほぐせて
きた思いです。
その意味でこの作品は
多くの記録文学を
凌いでいます。
漫画史にまた一つ、
宝石が増えました。
こうの史代さん、
ありがとう。

みなもと太郎(漫画家)
==


 あと、ぼくが注目したのは原作本のこうの史代さんのあとがき

==
…。しかし、東京に暮らすうち、広島と長崎以外の人は原爆の惨禍について本当に知らないのだという事にも、だんだん気付いていました。わたしと違ってかれらは、知ろうとしないのではなく、知りたくてもその機会に恵まれないだけなのでした。だから、世界で唯一(数少ない、と直すべきですね「劣化ウラン弾」を含めて)の被爆国と言われて平和を享受する後ろめたさは、わたしが広島人として感じていた不自然さよりも、もっと強いのではないかと感じました。遠慮している場合ではない、原爆も戦争も経験しなくとも、それぞれの土地のそれぞれの時代の言葉で、平和について考え、伝えてゆかねばならない筈でした。まんがを描く手が、わたしにそれを教え、勇気を与えてくれました。
 (以下略)
==

 木村さんが原作者の意図と呼んだのは、この「あとがき」にある こうのさんの思いなのだろう。そして、ぼくがここをタイプしておこうと思ったのは、「数少ない、と直すべきですね「劣化ウラン弾」を含めて」という括弧書き。ここに過去の問題ではなく、現代の、さらに言えば米国の、そしてその劣化ウラン弾についても米国の主張そのままに無害だと主張する現行の日本政府の問題なのだという理解。
 
ともあれ、映画も原作本ももっともっと多くの人にみてもらいたいと感じた。



現実的な利害をからめて、書かせてもらうと、ここで感じてくれた人が「原爆の図・丸木美術館」にも足を運んでもらえたらうれしい。ここでも「生きとってくれて、ありがとう」といういのちへの想いを喚起させてくれる作品との出会いがあるはずだ。この映画で描かれている原爆を投下したものに対する深い怒りは「ピカは人が落とさにゃ、落ちてこん」という丸木スマの言葉とそのままつながる。






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