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zoom RSS 「闘争の最小回路」読書メモ

<<   作成日時 : 2008/09/30 05:22   >>

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この本についてはいままで何回か言及してきたが、購入していなかったし、買った後もずるずると読まずにいた。で、いろいろ寄り道しながら、読んだこの本(読み飛ばした部分もあるが)、いろいろ面白いところはある。しかし、とりわけ興味深いっていうか、以前から考えていたことにフィットしたのは

==
彼らは「何人かの野蛮なインディアンに過ぎない」のか?
――ボリビアにおける「新たな社会運動」について――
==

という章。どうして早くここを読まなかったのか、悔やまれるくらいに僕の関心領域にフィットし、興奮した。

最初の「モラレス政権の誕生」という節で、この章の主題について、以下のように書く。
===
私がこの文章によって日本語環境に導入したいと考えていることは次のようなことだ。確かに、マスメディアが報じるように、キロガ(モラレスの対抗候補)あるいはPODEMOS(中道右派政党)がネオリベラル的グローバル化推進勢力を代表していることは疑いない。しかし、反対にモラレスあるいはMASは、この5年のあいだにボリビア各地で勢力的に展開されてきた「新たな社会運動」を必ずしも代表しているわけではなく、それどころかむしろ、この「新たな社会運動」とつねにコンフリクト状態におかれてきた。モラレスあるいはMASは、自分たちが「新たな社会運動」を十全に代表しているかのようなそぶりを見せているが、「新たな社会運動」のほうは、必ずしもモラレスやMASを自分たちの代表として認めているわけではない。
 より正確にいえば、「新たな社会運動」に携わっている人々の多くは、モラレスやMASだけに限らず、国民国家の枠組みにおけるどんな「代表」も求めておらず、それどころかむしろ、「政治的代表制」一般への絶対的不信任そのものを彼らのすべての闘争の出発点としているのであり、そもそも、まさにこの点にこそ、彼らの闘争の真の「新しさ」がある。
===
そして、これに続けて、この問題が中南米全体に広がりつつある「進歩派政府」、そして、そこと社会運動の関係とも連関すると主張する。この問題こそ、ずっと前から気になっていた問題で、かなり前のブログでも言及している。そして、廣瀬さんはこんな風に書く。
==
「進歩派政府」が社会運動を無視した形ではもはやどんな政策も実行し得ないという状況のなかで誕生してきたというのは本当だが、だからと言って、マス・メディアの報道に導かれるままに、そうした「進歩派政府」が運動を十全に代表していると考えたり、あるいは「進歩派政府」のディスクールと運動のプロセスを同一視したりすることは、運動のリアリティをとらえ損ねることに繋がるばかりか、それぞれの「進歩派政府」が、自分たちの「代表」としての正当性の確保のためにやっきになって試み続けている、社会運動の政治的代表制への「従属」あるいは「吸収」を手助けすることにしかならないからだ。
====

そう、このあたりの話が知りたかった話で、こんなことが書かれていたのなら、もっと早く読めばよかったと思う。

同時に廣瀬さんはそれぞれの「進歩派政府」の連携に触れた後、このようにも書く。
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ラテンアメリカのそれぞれの「進歩的政府」は、周辺諸政府との連携を強めつつ、USA政府のこれまでの事実上のユニラテラリズムに抗い得るような、各国の主権国家としての「自律性」の再確立を試みている。この意味で、ラテンアメリカにおける「進歩派政府」の相次ぐ誕生は、いわゆる「反グローバライゼーション」――あるいはさらに、これらの政府が、ラテンアメリカの地域統合を出発点として、新たなグローバル化を目指しているという意味で、いわゆる「オルタグローバライゼーション」――の流れのなかにあるものだと言って何ら間違いではない。
===
 このように書いて、その例としてルラのWSFへの参加やルモンド・ディプロマティック紙の創刊50周年記念集会へのモラレス大統領の参加などの例をあげる。これが書かれた時代制約があるだろうが、今ならチャベスのWSFへのかかわりや、コレアの不当な債務に関する取り組みなども挙げられるだろう。著者はこのように「進歩派政府」をラテンアメリカにおける社会運動と同様にネオリベラル的グローバル化への抵抗だと位置づけた上で、「それでもなお、両者の関係は、ひとつの同じ闘争における代表関係としてとらえ得るようなものではない」とする。そしてこれが、最初の「モラレス政権の誕生」という節の結語になっている。

つぎに
==
ふたつの「自律性」
==
という節に入る。

この節は、ボリビアにおける「水戦争」から続く社会運動組織が集まり、モラレスとMASの選挙運動へ「吸収」を拒否し、自らの闘争の自律性を再確認し、近代国家の枠組みにおける政治的代表性のコンテクストに回収されえない、もうひとつの全国レベルの政治空間を開くための第一歩を踏み出したという話から始まる。
 それに続けて「水戦争」を紹介し、それはネオリベ的グローバリゼーションに抵抗する運動であると言える、とした上で、以下のように書く。
===
 しかしながら、ここで注意しなければならないのは、コチャバンバでの闘争や、その後のボリビア各地での「新たな社会運動」を、ネオリベ的グローバル化に対する抵抗運動というタームだけで規定してしまうと、政治的代表制における「進歩派」とこれらの運動とのあいだの距離が曖昧になってしまうという点である。
 もっと簡潔に言えば、「新たな社会運動」と「進歩派」とのあいだの隔たりは「自律性」というタームをめぐる両者の解釈の絶対的相違に存している。
===
 そして、その相違とは「進歩派」の「自律性」は近代的主権国家のそれであり、「新たな社会運動」の「自律性」は「すべての住民の顔が見えるような範囲での共同体ひとつひとつでのそれであり、そこで目指されているものは、ひとりひとりの住民がその政治経済プロセスに誰にも代表されることなく直接的に参加し得るような自律的な共同体の構築なのだ」と書かれている。

 そして、廣瀬さんはボリビアの社会運動と進歩派のコンフリクトが他のラテンアメリカ諸国のそれと比べて、特に複雑だという。なぜなら、モラレスが率いるMAS自体が「新たな社会運動」そのものから派生してきたからだ。MASを副大統領候補のアルバロ・ガルシア・リネラ(現在も副大統領なのかどうか、ぼくは知らない)による規定に従えば「選挙という領域のなかでアクションを拡大させてきた様々な社会運動のあいだのフレキシブルな連携」だという。

 ぼくは、ここまでで、十分興奮できるくらいに面白いのだが、ここから紹介されるガルシア・リネラの話がぼくをひきつけて話さない。彼のことが紹介したくて、ここまで長々と引用してきたと言っても過言ではない。

 廣瀬さんは彼をこんな風に紹介する。
===
90年代には「トゥパック・カタリ・ゲリラ軍」という先住民族解放のための武装集団に参加し、そのために5年ものあいだ仲間とともに服役した後に、プルデュー派の若い社会学者として、この文章の執筆に際しても参照することが避けられないような、文句なく素晴らしい幾つかの社会運動論を発表してきた人物である。ガルシア・リネラのように、一度は政治的代表制の外で新たな政治空間を構築することに真剣に思いをめぐらせてきたような人々が、なぜ、政治的代表性の枠のなかにその活動の場を移してしまったのか。
===

これに続けて、廣瀬さんは彼の変節を説明するのだが、かれがなぜそうなったのか、そうならざるを得なくなったのか、という問題に関しては廣瀬さんの説明を読むだけではなかなか納得できない。この彼の変節に関するもっと詳細な話が知りたい。そこに、とても重要なものが隠されているように感じる。

廣瀬さんがこの変節をどのように説明しているか、については、また続けて書こうと思う。




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「闘争の最小回路」、僕も読みたいです。廣瀬純のラテンアメリカに関する朝日新聞の記事も読みました。ボリビアはウカマウ集団もいるので、とても興味があります。今度よろしければ、気流舎あたりでお話しましょう。吉田
シモキタコモンズ
2008/10/01 02:21
ボリビア、すごく興味深いですよね。
ちなみにぼくはエボ(モラレス)と同じ歳です。
権力の座に着いたエボが新しい社会運動について、どう考えているのかも聞いてみたいところ。廣瀬さん、エボやガルシア・リネラに直接この本をぶつけてみたら、面白いと思うんだけどなぁ。

tu-ta
2008/10/01 21:31

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