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zoom RSS 『自然に学ぶ粋なテクノロジー』メモ(その4)

<<   作成日時 : 2011/05/05 04:50   >>

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その3
http://tu-ta.at.webry.info/201105/article_1.html
の続き

再び気になった部分の抜書き。
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今私たちの考えなければならないことは、いかに人間活動の肥大化を減速させ、そしてそれを縮小の方向に誘導できるかである。しかも心豊かに、生きることを楽しむという人間性が本来的にもっている価値を失わずにである。それは第二次産業革命以降決して疑わなかった…地下資源文明から、エネルギーや資源を可能な限り使わず、心豊かに暮らす太陽と自然の恵みを活かす生命文明創出のためのあたらしいレールを敷くことである。114p
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これは本当にその通りだと思う。

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今望まれている環境と経済のデ・カップリングは、一方的なものづくりの改革では達成されない。ものづくりそのものが、エネルギー資源を使わないあたらしい生活価値を提供することを前提とし、産業。テクノロジーがあたらしい生活価値を誘導できる精神性をもっていなくてはならない。120p
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メモその2でも触れたが、この「環境と経済のデ・カップリング」という表現が気になる。

その2では以下のように書いた。
====
しかし、たぶん、あまり小さくない齟齬も感じている。
それは石田さんの
「環境と経済のデカップリングを進める第三次産業革命」という表現に現れる思想だ。
ここでいうときの「経済」をどう解釈するか、という話にもなるのだが、持続可能な領域に環境を戻そうとすると、どうしても経済は縮小せざるをえないと思う。ぼくはそのカップリングは一定、不可避なのではないか、と直観している。石田さんの主張は基本的に経済は縮小しても豊かなライフスタイルがあるはずだと書いてあるように読めるにもかかわらず、ここでカップリングを維持しようとする。そこに、企業に長くいて研究者になった彼の、内部でのコンフリクト、あるいは受け入れられるための方便があるような気がする。
====

つまり、ぼくは持続可能な環境にすることで、経済は縮小・悪化してもいいんじゃないかと思うのだ。確かにそれなりの雇用は必要だろう。食べていかなくてはいけない。でも、食べていけさえすればいいのではないか。その程度まで経済は縮小すべきではないかとぼくは思う。そして、小さくなったパイを公平に分ける仕組みが必要だと思う。いままでの経済の縮小が必ず、最初に、一番弱い立場に置かれていた人たちを直撃したことを忘れるわけにはいかない。そうならない経済の縮小の方法が求められている。この本で著者はそういうありかたを求めているようにも読めるのだが、「環境と経済のデ・カップリング」という表現を使われてしまうと、違う技術での経済成長を求めているようにも読める。そのあたりは混乱させられる原因にもなるので、はっきりして欲しいと思う。


それから、この本で鋭いと感じたのは「生活の不可逆性」に関する記述だ。「生活の不可逆性」という価値観について、こんな風に書かれている。
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これは、一度得た快適性や利便性を容易に放棄できない人間だけが有する欲のかたちである。一度携帯電話をもつと、もっと便利な携帯電話が欲しくなる。一度車に乗るとより快適な車が欲しくなるのである。そしてその利便性を放棄しようとすれば心が痛み、悲しくなるのである。
 なにもこの生活価値の不可逆性を否定しているわけではない。…そうして文明・文化は発達してきたのである。
 しかし、こと物欲をあおる生活価値の不可逆性に関しては、地球環境問題を考えるうえで、大きな負の因子になっていることは事実である。「生活価値の不可逆性」が存在する以上、江戸時代が循環型社会に近かったからといって、江戸時代の生活に戻ることはできない。…。戻れないからこそ環境問題が起こることを私たちはしっかりと認識すべきである。122-124p
===

その上で次のようなことが書かれている。

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企業にとって循環型社会の創出は不可避である。同時に、顧客にとっての生活価値の不可逆性も肯定しなければならない。循環型社会の創出と生活価値の不可逆性の両方を肯定することが、あたらしいものづくりや暮らしかたのかたちであり、それこそが今求められているのである。そのためには、循環型社会の創出と生活価値の不可逆性が二項対立の構造をつくってはならないのである。・・・。両方を肯定するためには、欲のかたちを、従来型の物欲から精神欲へ変換することが必要である。125p
===

「循環型社会の創出」と「生活価値の不可逆性」この両者の矛盾を明確に言葉にしてもらったことに感謝したい。「循環型社会の創出と生活価値の不可逆性の両方を肯定すること」の難しさ、ここがさまざまな問題解決を試みる上で大きなネックになっているのは間違いない。しかし、その解決の方法が「欲のかたちを、従来型の物欲から精神欲へ変換すること」といわれると、・・・。

この話と「メモ(その3)」で書いたマックス・ヴェーバーの話はまた、重なってくる。ぼくのヴェーバー理解はほとんど山之内靖さんによるのだが、彼の『マックス・ヴェーバー入門』の以下のくだりがこの問題と重なる部分だ。

===
 ヴェーバーによれば、市場メカニズムは、その存立が可能になるための条件として、内面的な――つまり、倫理的・道徳的な――動機づけが必要です。このようにヴェーバーの方法は、社会的行為の内面的動機づけに注目するものであり、そのために行為の理論と呼ばれています。また行為を動機づけている文化的意味への共感と理解を中心に組み立てられていることから、理解社会学と呼ばれることもあります。しかし、だからといって、ヴェーバーは外面的な客観法則を無視したわけではありません。むしろ問題の中心におかれていたのは、行為の内面的動機づけと外面的な客観法則との間の、複雑で時には逆説的でもある関連を解明すること、これでした。大塚久雄教授がヴェーバーの方法を「複眼的」と呼んだのは、そのためです。(『社会科学の方法』1966年)16p
====
 「人間の行為を直接的に支配するものは、利害関心(物質的ならびに観念的な)であって、理念ではない。しかし、「理念」によってつくりだされた「世界像」は、きわめてしばしば転轍機(ターンテーブルのルビ)として軌道を決定し、その軌道の上を利害のダイナミックスが人間の行為を推し進めてきたのである。」18p
===

「生活価値の不可逆性」というのは「利害のダイナミックスが人間の行為を推し進めてきた」ということとつながるだろう。そして、人はそのように動くのだと思う。
この読書メモその4の最初に引用した石田さんの文章にあるように「エネルギーや資源を可能な限り使わず、心豊かに暮らす太陽と自然の恵みを活かす生命文明創出のためのあたらしいレールを敷くこと」が求められている。

現在支配的なGDP成長を崇拝するような資本主義の理念がつくりだす「世界像」から、そうではない、いまのようではない「いのち」の価値を優先する「世界像」へ作り変える必要があるのだと思う。

それが循環型社会の実現を可能にする。

そういう流れの中で「生活価値の不可逆性」を考えるなら、「北」の社会は現在の利便性を少し手放す必要があるかもしれないと思うものの、人びとはなかなか、そのことに合意できないだろう。そして、世界中の人びとが公平に富を分かち合えると呼べる程度にまで、思い切って下げることはかなり難しいのではないかと考える。いくら理念が作り出す「世界像」があっても、そこまでは我慢できないというか、その急激な変化の提示は「世界像」の書き換えの妨げにさえなるかもしれない。

そうしないためにも、この本で提示されている『自然に学ぶ粋なテクノロジー』は重要なのではないかと思えてくる。


この本ではさっき、ぼくが違和感を表明した「物欲から精神欲へ」という話が、この後で展開されている。その話もまたヴェーバーの主張する世界像の問題、山之内さん流にいえば「世界像革命」の話にもつながってくるだろう。

また、長くなってしまったので、今回の読書メモもとりあえず、ここまで。

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