今日、考えたこと

アクセスカウンタ

zoom RSS 『肥満と飢餓』メモ

<<   作成日時 : 2011/12/31 05:25   >>

面白い ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 0

ずっと前に
http://tu-ta.at.webry.info/201010/article_2.html
に紹介を書いた。

出版社(作品社)のサイトは以下
http://www.sakuhinsha.com/politics/22902.html
画像
そして、かなり前に読み終わっていたのだが、メモを書いていなかったので、ざっくりメモを書いておこうと思った。

そのきっかけは、今朝(もう数日前だが)、ふと思った以下のこと
===
肥満が問題とされる。確かにこの本に書かれているように世界フードビジネスによって作りだされた肥満もあり、それは問題なのだろうが、同時に医療業界を含む健康産業によって作り出されたスリムがいいという価値観もまたあるのではないか。
===
(メモが最後のほうに来て、著者がこの問題にもちゃんと答えを出しているのを再発見)


日本語序文のタイトルは
「なぜ世界で10億人が飢え、10億人が肥満に苦しむのか?」
というもの。

増え続ける飢餓人口、そして他方でやはり増える肥満。

この本の基本的な認識はこの序文にある。

「飢餓も、肥満も、健康的で栄養価の高い良質な食生活を送っていない結果であるという点で、共通の背景を持ち、・・・」

穀物の価格上昇の背景にある食肉消費の増加。簡単にいってしまえば、この構造を世界フードビジネスが作り出しているということだ。

上記の紹介文には
なぜ世界で、肥満と飢餓が、同時進行で拡大しているのか? それは、この両極端の原因は、ともに食料生産から消費をつなぐグローバル・フードシステムにあるからである。
とある。

でも肉は嫌いじゃないなぁ。

そして、いままで肉をあまり食っていなかった地域の人たちが肉を食いたくなる気持ちもわからないわけではない。ま、そこにつけこんで世界フードビジネスが利益をあげるためのグローバル・フードシステムが作られているのだろうが。

著者はこの日本語序文で以下のように書いている。
あなたが食肉を買えば、その時に支払ったお金が、人間の主食ではなく動物の飼料を生産した方が儲かるという価格シグナルを送ることになるのである。12p
そんな観点からベジタリアンになった韓国民主労総の活動家と会ったことがある。それはえらいと思うのだが、なかなかできない。

確かに「人間の主食ではなく動物の飼料を生産した方が儲かるという価格シグナルを送ることになる」のは一面の事実だろうが、そうではない草を食べる肉を選ぶという選択肢もあると思う。そのあたりのバランスをどう考えるか、という問題もあると思う。



しかし、日本語版序文の以下のくだりは重要だと思う。
悲劇的なのは、真に持続可能に飢餓を解決する方法が、すぐに手の届くところに存在しているのに、それをしようとしないことである。17p






==
世界で生じている"飢餓"と"肥満"は同一の問題から派生している現象である。飢餓を撲滅することは、じつは蔓延する糖尿病や心臓病を予防することにつながり、同時に、さまざまな環境と社会の問題を解決することにも寄与する。太りすぎの人々と食料不足の人々は、農地から食卓に食料を届けている"食糧供給産業(フードシステム)"を通じてつながっている。食料を販売している企業は、利潤追求という動機にもとづいて、私たちが何を食べるかを決定し、制約し、私たちの食に対する考え方に影響を与えている。マックナフィンからマックナゲットまでという狭い選択肢しかないファストフード店を見れば、私たちの食がどのような制約を受けているかは一目瞭然だ。しかし、ロナルド・マクドナルドの術中にはまらずとも、フードシステム全体に、不可視な制約が張りめぐらされている。20p
==

==
環境的に持続可能で、社会的に公正な食料の生産方法と食べ方を提示することで、私たちの今の食のあり方が変われば、飢餓はなくなり、食習慣が原因である病気もなくなるだろう。22p
===

そして、現代では肥満は金持ちの問題ではないという指摘がされる。さらに消費者が不健康な食べ物を半ば強制されるのと同様に農民もまた持続不可能な農業を半ば強制される現実がある、という。

以下、本文の章立て

1章
農村社会を破壊する暴力とその結果としてのスラムの巨大化

2章
移民の現状と貿易協定の関係から見えてくるもの。

3章
フードシステムが第二次大戦後、形成されていく経過

4章
このシステムの最大の勝利者、アグリビジネスについて精査

5章
そのアグリビジネスによる種子の支配

6章
その市場の力は(例えば)大豆にどのような影響を与えたか

7章
強力なアグリビジネスに成長したスーパーマーケット

8章
私たちの味覚はどのように形成されたか、そしてフードシステムかどのような制約を受けているから

最終章
このシステムを作り直すために



3章にあるトルーマンの1949年のポイント4演説について
 この演説は一般的に、今日「開発」と呼ばれる教義の憲章とされている。しかし、この「開発」はそれほど無邪気な概念ではなかった、ということはあまり指摘されていない。そのことを明らかにしているのは・・・4つめのポイント・・・
 我々は、世界貿易に対する障壁を減らし、貿易量を拡大するために、我々の計画を実行しなければならない。経済復興と平和は貿易の拡大にかかっている・・・。我々は、侵略の危機に対抗して自由を愛する国々の強化を図る。私は・・・平和と安全保障を維持するために、我々に協力する自由国家に対し、軍事的援助と軍備を提供していく。

 つまり、「開発」とは、国際貿易と軍事力、再配分の政策を相互に関連づけた政策理念の一部だったのである。そして再配分の中身とは、食料・・・
その食料援助とはマーシャルプランで欧州に援助していた食料が欧州の復興で不要になり欧州の農民から拒否されたため、米国の農産物の販売先が必要になり、その受け入れ先として、農民が拒否できない南側の国が選ばれたのだった。118p


===
実際、キューバで農業生態系を保全する農法を広めたのは、国家ではなく、この運動(カンペンシーノ・ア・カンペンシーノ 農民から農民へ)だった。この運動は特定の地域において、知識、土地、空間、記憶、および専門性の私的独占を認めないことを通じて、オルタナティブな農業システムのこれまでの経験と今後の可能性を提示しているのである。・・・知識は私有化ではなく公共化し、専門家に与えられる知識ではなく、仲間の間で共有される知識を重んじ、農地を作物に合わせるのではなく、農地環境に合った作物を栽培することを任じ、住民が事後に知らされる開発計画ではなく、住民の知識に基づく・・・202p
===

===
MSTの野営地は学校である。貧困と逆境のなか、MSTは意識的に政治教育のプロジェクトを開始した。このプロジェクトを通じて、市民的・社会的な取り組みを経験し、他の定住者や外部の市民、そして政府と共存していく術を身につけるのである。・・・この政治教育における自然と社会の統合こそが、MSTがエコロジカル運動である所以なのである。この運動は、参加者が自身について考え、民主的に議論し、自身の間違いについて責任を取るための場所創り出してきた。ここでは専門家が主導する開発プロジェクトは最も忌避される。・・・
 ・・・中国の文化大革命で行われた農村での再教育を彷彿させるが、これもまったく違う。MSTへの参加は完全に自発的であり、いつでも辞めることができる。・・・
 野営地と、獲得された定住地では、重要な社会的変化が生まれている。そのことを端的に伝える証言がある。

 私たちはここでも、性差別をすることが多い。まあ、それはここに来る前からのことなのですが、私は、女性の判断を決して信用しませんでした。いつも、女性より、私の方が物事が良くわかっているんだと思っていたのです。もちろん妻に対しても・・・。しかし、野営地では、女性にだびたび助けられました。彼女たちのおかげで失敗せずに来られました。彼女たちは強いんです!
 ・・・私は今でも性差別をまったくしなくなったわけではないと思いますが、以前とは違います。

ヨーロッパあるいは北米に住んでいる男性が、自発的にこのように発言したのを聞いたことがあるだろうか。・・・248-249p
====

274-280pにかけて、ウォルマートのひどいやりくちが紹介されている。これは西友でも同じやり方なのだろうか?

290pには《スーパーに並ぶ「有機食品」――「有機認証」は誰のためのものか》このタイトルを読んだだけで、だいたい想像できるが、詳しい説明がある。

それに続いて、スーパーでの買い物に対抗して紹介されるのがCSA(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャ)。オーストラリアのある事例では廃棄物が75%、大気汚染が63%、エネルギー消費が72%、水消費が48%減少したという。293p


アリスメンディとモンドラゴンの紹介の後、彼の協同組合についての考え方が紹介される。
「協同組合を創設することは、資本主義の正反対の組織をつくるとではない。資本主義にも良いところはある・・・。協同組合の考え方は資本主義を超えねばならず、そのためには資本主義の方法と活力を取り入れねばならない」
 この明察は、本書に登場する社会運動すべてに共有されている考え方である。彼らは、市場や革新、あるいは活力を排除したいのではなく、これらからの支配を脱し、これらを自らコントロールしたいと考えているだけなのである。294p
〜〜

〜〜〜
スーパーマーケットが支配する現代の世界になって、本能までが歪められたと考えるのは少々馬鹿げているとしても、ある特定の食べ方や選択の仕方だけが私たちの習性になってしまったことは事実だろう。この習性は、自然の選択や季節のリズムや人間の鼓動によってではなく、戦争や仕事の都合、建物の構造、テレビ、および食品会社によって創り出されたものであり、これらに私たちが順応した結果なのである。303p
建物の構造と特定の食べ方の関係はよくわからないが、ここに書かれているようなことはあるだろうと思う。

307-309pにはビッグマックのルーツの話や、コカコーラが第二次世界大戦期に米国人のコカコーラ好きを生み出した話が書かれている。輸送機がコークの空き瓶を回収するために着陸し、重すぎて離陸できなくてもコークの空き瓶は捨てられないというエピソードが紹介されている。本当かよ、と思ったけど。

また、310-311pに書かれている白いパンが生れる過程の話も興味深い。全粒粉のパンよりもその成分を取り除いて別に利用した後の白い粉のほうが製粉会社の利益になるからだという。英政府は全粒粉のパンだけを認めていた時期があるという。


また321-324pにかけて、子どもが不健康なジャンクフーズを選ぶようになる経過が記載されている。


こんな風にメモを書いてきて、『ダイエット――フードシステムに加わった新ビジネス』という節(332p〜)もあるのを再発見。最初に書いたメモが的外れだったことが明らかに。

ここではフードシステムが不健康な食の体系を自ら作りながら、また、その食べ物が引き起こす病気の改善策でもまた稼ぎ出していると指摘する。
だから、フードシステムが不健康をもたらしているにもかかわらず、誰もそれを非難せず、せっせと食品産業が提供するダイエット商品を買い求めるように誘導されたりするわけだ。でも、腹八分目が正しいとわかっていても、腹いっぱい食べるのはやっぱり快感だったりするなぁ。

そして、興味深いのはスローフード運動がイタリアの共産主義運動から生れたという指摘。「この運動が当初目指していたことの一つは、左派が生活の喜びを労働者の権利の徹底的な擁護と結びつけることは可能であり、必要であるという考え方を示すことだった」。そして、イタリア以外の国ではその歴史がいとも簡単に受け流されていると著者は指摘するのだが、日本では隠されてさえいるようにも感じる。さらにこの節で著者はスローフードが金持ちしか参加できない運動になりがちなことに警鐘を鳴らしている。342-344p

次の節「アンチ・マルブルッフ」344p〜ではジョゼ・ボヴェのマクドナルドに対する攻撃が紹介されている。その行動は反米ではなく、反ジャンク・フードだとジョゼ・ボヴェは明確に主張している。
さらに346pには家庭での調理時間の変化(劇的に減少している)のグラフが掲載されていて、それに対応する以下のボヴェのコメントも掲載されている。
===
 人々が家で食事することや、自分のために料理することを嫌がるようになると、家庭は崩壊し始める。このような日常の務めを果たさなくなった市民たちは、家庭が壊れていくのを見過ごし、子どもたちに明るい未来を用意することができない。このような人々は、世界全体を覆っている疎外という政策に加担しているのである。

===
これだけ読むと、多くの人が「待てよ」と思うだろう。著者も当然、そのことを指摘する。「誰に、そんな時間とお金があるというのだ?」と。
そこで著者は農村と都市の貧困者同士を結ぶ運動を紹介する。

そして、この8章の最後では、ジャンク・フーズ(マルブッフ)を食べることを強制されるのではなく、より良く食べるための時間とお金を持つべきであるとし、それを実現するための政策は、個人の購買力に依拠したものではなく、社会全体を対象とするものである、と提起し、ヴィア・カンペンシーナの「食料主権」という考え方をとりあえず名前だけ紹介し、次の章につなげる。

363pにその食料主権の「煩雑かつ長文にわたる定義」の抜粋が記載されている。それをさらに抜粋して、以下に紹介。
〜〜〜
食料主権とは、食料のダンピングによる取引を拒否し、自らの農業・食料政策を決定する権利。農民と百姓が食料を生産する権利や消費者が何を消費し、誰がどのように生産した食べ物を消費するかを決定する権利が含まれる。農業生産と食べ物全般において主要な役割を果たしている女性の権利を認識することも含意されている。
〜〜〜〜

365-382pにかけて、『フードシステム変革のために必要な10の取り組み』が紹介されている。
1、私たちの味覚を変える
  もちろん、ここには書いていないことだけれど、例えば最近いわれている「まごわやさしい+玄米」などのおいしさに気づくというのも、そうかもしれないと思った。 http://ameblo.jp/naokichi1224/entry-11045778023.html など参照

2、地元の食材を旬に食べる

3、農業生態系を保全する食べ方を実践する
 産業化された有機ではなく、文字通りの有機。

4、地域の人々による事業を支援する
 スーパーでなく、CSA。地元の八百屋などで購入するのも事前の策として悪くないとぼくは思う、ここには書いてないけど。そして、生産者と知り合うことの大切さがここ(377p)では強調されている。

5、すべての労働者には、尊厳を持つ権利がある
 ここの説明はわかりやすく書いてあるのだけどフードシステム変革との連関はぼくにはわかりにくかった

6、抜本的かつ包括的な農村の変革
 そこに暮らしたいと思えるような農村を当事者の手で

7、すべての人に生活賃金を保証する
 現在では正しい食べ物はそれを買うことができる人の特権になっている、そうでないありかたのためには所得の再分配が必要

8、持続可能な食のあり方を支援
 
9、フードシステムから、ボトルネックを取り除く
 このタイトルはどうなのかなぁ、オルタナティブなフードシステムを作るためのボトルネックを取り除くってことなんだろうけど。で、ここで主張されているのは現在のフードシステムから恩恵を受けている企業への補助をなくすこととか、アグリビジネスに制限を加えること

10、過去にも現在にも存在する不正義の責任を自覚し、その償いをする
 

ちなみに、376-377pにはフェアトレード・ラベルや認証の批判が展開されている。



最後に佐久間さんの長い解説もある。



(2016年12月29日追記)
・作品社のURLを訂正
・松岡正剛さんの千冊千夜のこの本の解説が秀逸。こんな風に書く人だと認識していなかった。
http://1000ya.isis.ne.jp/1610.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
面白い
ナイス

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
むげんメモ for iPhone
販売価格:250円※価格は執筆時の価格になります。時期によって変動する可能性がありますので、ダウンロードの際はご確認をお願いいたします。ジャンル:仕事効率化プラットホーム:iPhone?サイズ:8.8MB?詳細無限に湧き出るアイデアを、広大なキャンバスに際限なく書き込 ...続きを見る
AppliMarket
2012/02/29 02:49

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

トップ頁の右上に広告が入るようになっちゃいました。それがいやな人はさらに追加してお金を払いなさいとのこと。というわけで、この広告クリックしないでください(なんて、けなげな抵抗)。==============ブログ内ウェブ検索

ブログ内 を検索
『肥満と飢餓』メモ 今日、考えたこと/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる