依存症問題での社会モデルと医療モデル

ギャンブル依存症に関するセミナーに参加していて、依存症の回復のために、医療モデルではなく社会モデルが必要なのだという言説がでてきて驚く。こんな風にも使うというのを知らなかった。

医療モデル・社会モデルというのは障害学だけで提起されている言説だと思っていたからだ。その言説が障害学から派生したものなのか、それとも別に存在していたものなのかぼくは知らないが、こういう使われ方は可能なのだと感じた。

で、とりあえず、依存症 社会モデル 医療モデル という3つのキーワードでグーグル検索。


すると、以下のような本がでてきた。


書名
「依存症」の理解

著者
今道 裕之;滝口 直子【編著】

出版社 アカデミア出版会

内容の紹介もこのウェブサイトに掲載されている。残念なことに途中で切れているが、けっこう面白そうではある。
内容
 本書では、まず文化や社会の視点から、本人や家族がどのように、嗜癖の閉鎖回路(渦巻き)に呑み込まれているかを指摘し、そこからの解放を訴える。次に、アルコール、薬物、賭博の順に、疾患についての説明、本人の回復、そして家族の回復について述べている。さらに従来の依存症の治療研究では、ジェンダー(社会的な性差)の差異が十分考慮されているとは言いにくいため、アメリカと日本の例を通して、依存症を患う女性の特徴について述べた。最後に、身近の回復の場として医療機関以外の社会的支援の重要性に注目し、小規模な回復施設について、大阪DARCのスタッフおよび支援メンバーがその経験を語っている。そして、アメリカでの地域の回復の場について、社会モデル概念に基づく施設での治療と回復の実際、さらには病的賭博に対する支援について紹介する。依存症という社会の鏡―閉鎖回路からの開放へ;アルコール依存症;薬物依存症;病的賭博;依存症を患う女性たち;社会的な支援と地域での回復の場
この内容紹介はここで切れている。

 ともあれ、ぼくが参加したセミナーで言われていたのは、ここに書かれている「回復の場として医療機関以外の社会的支援の重要性」(それはアルコールではAAであり、ギャンブルで言えば、GA)という文脈であり、そのことを指して「医療モデルではなく、社会モデルで」というように使われていたとぼくは理解した。参加したセミナーによると、ギャンブル依存症の回復のプロセスで医療が果たせる役割はとても限定されているようだった。また、そのことを理解できている精神科医(臨床心理士も)がとても少ないということだった。

 ここに書かれている「社会モデル概念に基づく施設での治療と回復の実際」というのをよく考えてみると、けっこう微妙な問題も孕まれているようにも思えてくる。「施設での治療と回復の実際」というのは、それが社会モデル概念に基づいていても、どうしても個人モデルにそったものになるのではないか。

 ここまで書いて、待てよと思う。

 これもセミナーで知ったのだが、ギャンブル依存症に関してはワンデーポートという日本で唯一の回復のための施設がある。ここで行われていることは、ウェブサイトでは以下のように紹介されている。
入寮施設もあり、全国各地から利用者が集まっています。

 ワンデーポートでは、借金問題や仕事よりも、強迫的ギャンブルからの回復を優先するよう提案しています。

 強迫的ギャンブルはギャンブルという行為自体や借金が問題視されていますが、本質的な問題はギャンブルに依存しなければならない生き方や考え方にあります。1日3回のミーティング(グループセラピー)で、ギャンブルにとらわれたために歪んでしまっている価値観や人生を見つめ直し、ギャンブルを必要としない新しい生き方を学びます。
「社会モデル概念に基づく施設での治療と回復の実際」とは、おそらく、こういうことを指しているのだろう。そこには確かに精神病院などの医療機関での回復のプロセスとは異なるプロセスがあるようだ。医療モデルとは異なるモデルに基づいているという風には言えると思う。それを社会モデルと呼ぶことはありえる。ただ、このように呼んでしまうと、ぼくが今まで理解してきた「障害学における社会モデル」とは微妙なずれが生じるように思うわけだ。そのずれをいまは、うまく言説にできないのだけれども。

社会モデルにおける象限図を考えてみる。

縦軸の上下にに(非医療的)社会モデルと医療モデルを置く。

横軸の左右に(非個人モデル的)社会モデルと個人モデルを置く。


こういう四つの象限を構想することが可能なのかどうか。もう少し考えてみたいと思う。


ともあれ、この本に書かれていることがどのようなことなのか、とても気になってくる。とりあえず借りて読んでみようかと思う。





あと、依存症 社会モデル 医療モデル という3つのキーワードでグーグル検索して、以下の報告がでてきた。


対人援助における主体は誰なのか?
    -「ありのまま」の当事者を主役とするあり方に、目から鱗-
 安田裕子(立命館大学文学研究科 博士後期課程)

立命館大学で2005年3月6日に行われた
~~
対人援助論 講演・シンポジウム第四期シリーズ①
いま、スローな援助を考える-「べてるの家」を招いて 
「参加と自立」による「非援助的な援助」のあり方を問う 
~~

これの感想とある。

この全文、グーグルでは
www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/kikaku_2004/beteruie/beterun.html
というアドレスが表示されたが、しかし、タイトルをクリックすると「削除された可能性があります」と出てくる。、グーグルのキャッシュで表示。

そこで社会モデルに関して書かれている部分を以下に引用。
社会とのズレは、逸脱やマイナス、あるいは罰とされてきた歴史があり、精神障害というだけで距離が置かれ、「障害ついて、いかにして地域社会に理解を求めるか」というところから出発せざるを得ないのが現状であるだろう。しかし、○→○という発想を基軸にして捉え直せば、そうした「障害=マイナス」とする前提そのものを転換することができるかもしれない。それは、より具体的には、リハビリ、回復、社会復帰など、上にのぼっていくことに焦点化しないあり方、すなわち、医療モデルでも社会モデルでもない、交換モデルや新たな環境設定であるという。私はここに大きな期待を寄せたい。
ここに書かれていることがよくわからない。医療モデルが「上にのぼっていくことに焦点化」するものだというのは、そうだと思う。しかし、社会モデルもそういうものなのかどうか、ぼくは疑問だ、というか、ぼくは社会モデルは「ありのままでOK」ということなのではないかと思ってきたので、この書き方に違和感が残ったわけだ。そして、思った。

 ここで理解されているような形での”社会モデル”が依存症回復のプロセスとしての”社会モデル”なのかもしれない。

 ぼくがいままで理解してきた社会モデルと違う形で社会モデルという言葉が使われているようにも思える。ぼくの理解のほうが足りなかったようにも思えてくる。


 以上、とりあえず、気になったことをメモ


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この記事へのコメント

ちょうちょ
2007年07月10日 08:02
やはりその社会モデルと障害学の社会モデルとは分けたほうがよいような気がします。私もよく分かっていませんが、やはり障害学では第一次的な目的は障害を持つ人の生存権、人権、尊厳で二次的に社会的な一人一人の人の精神的開放があります。本当は二次的な目的も一次的な目的と同格で大事と考えるのが本来の理想では確実にあるのですが、現実の動いている社会の中でそれを適用すると両立は難しい・・・。自分の立場を越えてみんなが精神的に解放されるのは目的ではあるけれども、現実の厳しい社会の中ではどうしても完全に立場は越えられない。障害を持っている人の尊厳を考えることが第一である以上、この社会で戦う上で、ありのままで自然体では無理なこともあるかもしれない。おのおのがとりあえず目の前にある課題に必死に立ち向かっている中では、立場は越えられない部分もどうしても出てくるときが出てくる。自分を守ることも必要だから。上でも下でも左でも右でもいいから、とりあえず歩かないとですね。厳しいけれども、それが生きるということなのでしょう。

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