高次脳機能障害と脳性麻痺

不自由な脳―高次脳機能障害当事者に必要な支援 刊行記念トークイベント(金剛出版主催)に参加して、脳性麻痺と高次脳機能障害の連関について、講師の方に質問したところ、以下のような回答をもらいました。(ありがとうございました)

以前から脳性麻痺の人で高次脳機能障害の人と似た症状の人がいると感じており、少し検索したものの、なかなかフィットする回答がなく、もやもやしていたので、この機会に聞いてみようと思ったのでした。

とてもわかりやすい回答だったので、ブログに掲載して、みなさんに紹介したいと考え、出版社を通して許可をもらって転載します。

結論を書いてしまえば

「高次脳機能障害の諸症状と同様の症状が出現しうるが、行政的には高次脳機能障害と言わない」とのこと。

以下に全文を転載します。

***************

(山口加代子氏_ご回答)

日本の脳性麻痺の定義は厚生省脳性麻痺研究班(1967年)「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく永続的な、しかし変化しうる運動及び姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発現する。進行性疾患や一過性の運動障害、また将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞は除外する。」とされています。

しかし、欧米では「脳性麻痺とは、発達期の胎児または乳児の 脳に生じた非進行性の病変による運動と姿勢の発達の永続的で、活動を妨げるような障害の一群を指す。脳性麻痺の運動障害はしばしば感覚、知覚、認知、コミュニケーション、行動の障害、てんかん、二次的な筋・骨格の問題を伴う。」(2006年の脳性麻痺と発達医学のアメリカ アカデミー)とされており、ご質問にあるように、感覚、認知、コミュニケーション、行動障害についても記載されています。

特にヨーロッパ圏の脳性麻痺児に関する文献の【はじめに】には「通常、感覚、認知、言語障害、学習困難、行動上の問題が生じ、それに加え情緒の易変性、いらいらしやすいこと、注意障害、 衝動性の高さ、解決能力の低さ」という記載を多く目にします、

脳性麻痺の多くの原因は、低酸素性虚血性脳症(HIE)による脳室周囲白質軟化症(PVL)が多く、基底核・視床の委縮をしばしば伴うこともことも明らかになってきており、これらが広義の医学的定義である高次脳機能障害を引き起こすと考えられています。

知的障害の割合は、千葉リハビリテーションセンターの2007年のデータでは、知的障害がない方と重度精神遅滞の方がそれぞれ36%、軽度精神遅滞の方が18%、中度精神遅滞の方が10%となっています。

また、視覚障害は脳性麻痺の方の7割に見られ、視知覚障害もよく見られます。白質軟化症の部位によって生じる症状が異なることもわかってきており、

・前頭葉 :低緊張 意欲低下 眼球運動障害(持続的な追視が困難)

・頭頂葉: 視知覚障害(空間認知障害) 視覚・体性感覚による運動調節の障害

・後頭葉 :視覚障害

・皮質下白質: 認知障害、てんかん

というように、高次脳機能障害の出現メカニズムと同様です。

違いについてですが、高次脳機能障害の定義は二つあり、2004年に高次脳機能障害モデル事業で明らかにされた「行政的な定義」では「除外項目」がありその中に「先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者」と記載されていますので、脳性麻痺は行政的な定義に含まれません。つまり、脳性麻痺は行政的な高次脳機能障害の定義には含まれないということです。

しかし、従来からの医学的・学術的定義では上記のような除外項目がありませんので、学術的には高次脳機能障害と言ってもよいと思います。

上記のような整理をした上で、高次脳機能障害の諸症状と同様の症状が出現しうるが、行政的には高次脳機能障害と言わないとご理解されるとよいと思います。

更に付け加えてお伝えするならば、行政的に定義された高次脳機能障害は中途障害ですので、先天性の脳性麻痺の方とは異なる心理的急性期が生じます。乳幼児早期から支援者との接点を持ちうる脳性麻痺の方に比べ、中途障害である高次脳機能障害の方に対する支援は残念ながらまだ充実していません。脳性麻痺の方に対する認知・情動面に対する支援の充実とともに、高次脳機能障害の方に対する心理支援が今後の課題だと思います。

~~~

じょぶりんさんのコメントを読んで
~~~
コメントありがとうございます。
コメントを読んで気がつきました。
そんな背景はあるものの、そのように決めつけてしまう危険もあるかもしれません。
それが差別を生む可能性もあるので、要注意ですね。
ブログに書き足しておきます。
~~~

やはり、障害名や診断名で人を見るのではなく、
生のその人とかかわる中で出会い、感じ、そこから何を見るのかということが一番大切だと思うのです。
そこを見失って、診断名などにひっぱられて間違うことが多いと思うので、追記。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

じょぷりん
2021年04月13日 04:10
お疲れ様です。
とても学術的なお話ですね。
アキちゃんを思い出します。
彼女は、脳腫瘍手術による脳性麻痺です。
高次脳機能障害と表現するほうが適切だと感じています。
ブログ書いた
2021年04月13日 08:22
じょぶりんさん
コメントありがとうございます。

コメントを読んで気がつきました。

そんな背景はあるものの、そのように決めつけてしまう危険もあるかもしれません。
それが差別を生む可能性もあるので、要注意ですね。

ブログに書き足しておきます。
2021年04月13日 22:34
【脳腫瘍手術の後遺症で脳性麻痺】
って聞いた事なくて・・・・・
調べたり、高次脳機能障害の友人に直接尋ねました。

症例があるそうです。
【脳腫瘍手術の後遺症で高次脳機能障害】

また、彼女の母親が言うには、
【小脳がぺしゃんこ、と医師の説明】
いやいや、『小脳がぺしゃんこ』だったら死んでるって(笑