高次脳機能障害の当事者が支援者に教えるガイドブック(ほんの紹介33回目)

たこの木通信2020年11月号に掲載した本の紹介

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高次脳機能障害の当事者が支援者に教えるガイドブック
(ほんの紹介33回目)

 今回、紹介したいと思ったのは『「脳コワさん」支援ガイド』。今回のタイトルに書いたように高次脳機能障害の当事者である著者が支援者向けに書いたガイドブック。著者の鈴木大介さんは高次脳機能障害になる前からライターで『再貧困女子』などの著書があり、ぼくも以前から読んでいました。その彼が脳卒中で高次脳機能障害となり、この当事者の思いをもとにした支援者向けのガイドを書いたのです。ちなみにこの「脳コワさん」という表現自体に批判があり、著者がWEB上で【「脳コワさん」という言葉にお怒りの声をいただいて】 https://note.com/dyskens/n/n3f8a7b32368e という見解を表明しています。 

 ぼく自身は2012年に職場で高次脳の人を受け入れ、大田区で高次脳の家族会や支援者のネットワークと出会い、当事者会の立ち上げも目の前で見てきました。そして支援者のための講座もさまざま参加し、地域での支援者向け講座では主催者としてかかわりながら、それなりに勉強したつもりだったのです。しかし、この本を読んでいて随所で「わかってなかったなぁ」と感じました。例えば、「遂行障害」とか、「易疲労」とか、言葉の意味は知っていたし、何人もの当事者からその話を聞いていたにもかかわらず、です。そして、この本を読んで「言われてみたらあのときもそうだった」と感じることも多々ありました。逆に言えば、深くかかわった分だけ、そうか、あれはそういうことだったのか、と気がついたと言えるかもしれません。

 この本で「脳が壊れた」ときの症状の説明として多くの比喩が使われていて、それがまた秀逸です。いちばん.「ひえ~」っと思ったのが、【鼻の下に「洗い落とせないウンチ」】という比喩。過去に体験した苛立ちや怒りや哀しさというようなマイナスの感情をいつまでも引きずり、気分を切り替えるのがとても困難な人がいるのですが、それをそんな風に表現するのです。そうだとしたら、そのマイナスの感情がなくなることはないなぁとリアルに感じました。

 また、いままで、「障害受容」とかいう話はろくなもんじゃないと思っていたのですが、以下を受容と呼ぶのであれば、それはありかも、と思ったのです。

「当事者に対して『障害』ということばをあえて使う必要はまったくない。当事者にとって必要な受容は、障害者になったことではなく、自らのなかにどんな不自由や苦手なことができてしまったかを知ること」

ただ、これって従来リハビリ業界で使われていた「障害受容」とは違う概念案じゃないかとも思えます。ともかく、必要なのは病名や障害名の告知ではなく、「自分にとって何が不自由で何が苦手になっているのか」知ることだと書かれています。これはオープンダイアローグで診断名の話をしないということとも重なります。

また、作業療法室でこんなことをやって欲しかったという話も興味深かったです。

・料理が得意だった人には料理を

・書き物が仕事だった人には執筆を

・事務職だった人にはエクセルを

・営業だった人には資料作成とプレゼンを

 それらにトライして、自分が病気の前とどう変化しているかを知ることができるというのでした。そして、どうすれば前の自分に近づくことができるか、方法をいっしょに考えるのが作業療法の仕事なのでしょう。しかし、同時に書かれているのは、療法士がちゃんと病気の前の話を聞いて、本人がどれくらいできていたかを知ること。できなくなった自分に絶望しているのに、少しできていることを褒められたりすると、逆に傷つくというのです。また、感情の爆発はじつは「助けて」のサインというのもうなずける話でした。こんなガイドブック、もっと必要かも。

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すごく長い読書メモは
https://tu-ta.at.webry.info/202011/article_4.html


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この記事へのコメント

2021年04月14日 14:13
本のご紹介ありがとうございます。
『障害』という言葉について、私と同じようなお考えの鈴木さん。

tu-ta さんがおっしゃるように『必要な本』ですよね。
妻と離婚する以前から、高次脳機能障害の可能性を訴えていた私は、あの当時にこの本と出合いたかったです。
(妻が読んでも喜んだかも知れません。
 読めない漢字が多い妻ですが、送ってあげようかな)

灯台下暗し、ですねー
tu-ta さんが、こういう本をご存知だったとは。
tu-ta
2021年04月18日 00:00
実はぼく、昨年から大田区の高次脳機能障害支援者ネットの代表だったりするのです。ぼくでいいのか、とも思うのですが。