『自立生活 楽し!!』だよね。 (ほんの紹介40回目)

2021年6月のたこの木通信に掲載したもの

『自立生活 楽し!!』だよね。
(ほんの紹介40回目)

 今回、紹介するのは『自立生活楽し!!』(佐々木和子・廣川淳平編著 解放出版社2021年5月刊)。このタイトルの通り、ダウン症の佐々木元治さんが自立生活を始めて、楽しんでいる様子が母親と支援者の文章と介助ノート、そして介助者へのアンケートなどを通して浮かび上がる。133頁の薄いブックレット風の本。平易な文章でとてもわかりやすい。

 編著の2名は母親と支援者。母親は自分がなるべく前に出ないことを少し意識しながらも(?)、やっぱりひっぱっているのだなぁと思える。そこは微妙。ただ、知的障害のある子どもが一人暮らしを始めるためには親がひっぱる部分がないと難しいのも現実だろう。そして、何よりもこの本の魅力は本人がこの暮らしを楽しんでいることがとてもよくわかること。こんな本が待たれていたような気がする

 先日のたこの木の連続講座でも話をしてくれた渡邊琢さんが働いている京都のJCILが支援して実現した自立生活。編著者でJCILの廣川淳平さんも先日の講座に参加し、交流会でこの本が紹介されていた。

 元治さん本人が12歳の時、一人暮らしを始めたお姉さんの部屋を見たときに、母親が何気なく本人に聞いたという。

「一人暮らししたい?」と。そこで彼は予想外にも大きくうなずいた、と母親は書く。そういう見えやすいモデルがあることも大切なのだろう。しかし、そこから実現まで23年。

 夕方から夜の支援さえあれば、一人暮らしが可能だった元治さん。こんな感じの支援、あるいは毎日ではなくでも週に何回かの支援があれば十分一人暮らし出来るのに、それが提案されず、グループホームなどで暮らしている人が多いと感じている。

 元治さんが一人暮らしを楽しんでいる様子は、ぜひ、この本を読んでほしい。そこがいい所だが、以下は課題と感じたことについて書く。

 ここに掲載されている母親から介助者に向けて、二度にわたって実施した ざっくりした設問のアンケート。若い男性ヘルパーたちがこんな風な思いを抱えて、支援の現場に入っているのかといういくつかの気づきをもらった。たとえば、28歳のヘルパー中村亮太さんが「介護を仕事として思うこと」という設問にこんな風に答えている。

介助を続けていくために必要なことは、一人ひとりの介助者に余裕をもたせることだと思います。

余裕があればいろいろなことができます。介助者不足で働きすぎる、疲れていて余裕がなくなってくると、介助がつらくなっていきます。介助は大切な仕事なのだから、介助者の給与と待遇をアップして、介助者の人数を増やしていくことが必要だろうと思います。

 アンケートのこの設問に7名中、約半数の介助者が給与などの労働条件に触れて、額の少なさや不安定さについて書いている。編者の廣川さんは国から支給される介護報酬の低さにも言及する。どうすれば、介助者の労働条件が改善されるのか、これは大切なテーマとして考えられなければならない課題だろう。

 126頁あたりに記載されている、一人暮らしの選択に悩んだとき一人で悩まずにいろんな人に相談するというのは、重要な話だと思う。しかし、知的障害者の一人暮らしの相談に乗れるところは全国的にまだまだ少ない。知的障害者の一人暮らしについて相談できる窓口を充実させること、全国につながる場所ができることも、これからの重要な課題だと思う。

 気になった点をあえてあげれば、「何から始めればいいのか」に記載されている6つのステップ。ここでは最初に相談する場所として福祉事務所があげられているが、違うと思う。また、相談支援も選ばないとヤバいところは多い。まず問われているのは一人暮らしについて相談できる相手の確保。その可能性を広げていきたい。

==掲載原稿ここまで==

解放出版のサイトでの紹介は
https://www.kaihou-s.com/book/b582566.html
(以下の画像もそこから借りました)

自立生活楽し.jpg


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